テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「……は?」
「俺。俺をりょうちゃんの新しい恋人にしてよ」
連絡先を探していたりょうちゃんは顔を上げ、後ろに立つ俺を目を丸くして見上げた。
「ちょっと、若井……何」
「ダメなの?俺も今恋人いなくて暇だし」
自分でもこんな大胆な戦法に出たのを心底驚いている。
涼しい言葉と態度と裏腹に、心臓はどくどくと脈打つ。
全然余裕なんかないのに余裕ぶった表情を繕い、笑ってみせた。
あくまでもこれは本気じゃない、お遊びの恋愛だと自分に言い聞かせる。
さぁ、次のセリフは……と考えていると、りょうちゃんはアハハ、と笑いだした。
「何言ってんの。冗談やめてよ」
「……マジだけど」
「……あっそ。じゃあ申し訳ないけど、僕年下は対象外なの。どの子もいい思い出ないから、もう勘弁」
フン、と鼻を鳴らして首を振る。
年下は対象じゃないとバッサリ切られてしまった。
しかし、ここで引いたらもうチャンスはない。
グッと堪えて余裕を保ち、りょうちゃんの耳元に顔を寄せて囁いた。
「ふーん、りょうちゃんって、年下に弱いの?振り回されるのが怖いんだ?」
耳元を擽るように笑ってみる。
すると、りょうちゃんはこちらをゆっくりと振り返った。
「……なに、言ってくれるじゃん」
唇が触れるんじゃないかという距離で、彼はそう呟いた。
少し低くなった声、じっと相手を見定めるかのような目。
無意識で醸し出される彼の色香にゾクッとする。
「なんか生意気。……一丁前に僕のこと、挑発してるの?」
「もし挑発してるって言ったら、乗ってくれる?」
耳元からパッと離れ、彼を見下ろす。
彼もそのまま僕に視線を移し、睨みつけるかのように見つめ続けた。
その強い視線に怯みそうになるが、俺はもう後戻りはできない。
絶対に最後まで演じきらなければならない。
じわりと冷や汗が首筋を流れ落ちるのを感じながら、負けじと見つめ返す。
睨み合いが続き、ああ、ダメかもしれないと弱気になった時、彼は目を伏せて笑った。
「……んふふ、面白いじゃん、いいよ、その挑発乗ってあげる。」
「えっ…」
さっきまでの緊張が嘘のように、彼は妖しげに微笑んでいた。
まさかの返答と彼の笑みに、一瞬身体が固まってしまう。
「そんなに遊ばれたいなら、お望み通り遊んであげるよ」
『遊び』と彼の口から言われ、胸がチクリと痛む。
が、この流れを止めてはいけない。
俺は繕い続けなければならない。
「……それ、こっちのセリフね」
繕った笑顔でフッと笑う。
りょうちゃんも俺の雰囲気に気を良くしたようで、目を見つめてくれた。
コメント
1件