山鹿雄大の自宅に着いて驚いた。とてつもなく広い敷地だったが、驚いたのはそんなことじゃない。門は固く閉じられていて、 家屋敷を取り囲む塀の高さは三メートル以上。まったく塀の中が見えない。しかも塀の上には有刺鉄線が。個人の家というよりまさに要塞だった。
「どうやって中に入るつもりですか?」
「どうやってって、呼び鈴鳴らして皆殺しに来ましたと言って素直に中に入れてくれるのか?」
「忍び込むということですね」
そんな会話をしていると、誰かが近づいてきた。極星会の構成員だろうかと身構えた。
「おまえたち、動くな!」
ドスの利いた声。でもどこかで聞き覚えが――
と思っていたら、向こうが余のことを覚えていた。
「誰かと思えば、君はいつか世羅に暴力を振るわれていたお嬢さん?」
「こんばんは」
「こんばんはって、この屋敷に誰が住んでるか知らないのか? ヤクザの元締めの自宅だ。一般人の来る場所じゃない。すぐに離れた方がいい」
彼はいつか余が世羅に復讐されているときに助けてくれた男。世羅に警部殿と呼ばれていたから警察官なのは知っているが、ここにいるということは彼は警察組織の中で暴力団担当なのだろう。
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