テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
汽車の中で揺られていた。
目の前が赤く染まりながら。
ガタンゴトン、ガタンゴトン。
汽車は止まることなく進み続ける。
まるで、私の人生のように、止まることなく突き進んでいく。
汽車の揺れが私の意識を遠のかせるその中で、ふと頭の中に流れてくる昨日までの記憶。
私とある奴に恋をした。そいつは一般人よりも背が高くて、大きくて、人一倍力が強くて、誰よりも女を大切にするやつで、どこか世話焼きなやつ。
それに、私と同じように「刺青」を背負う人。
でも、元々私は違う人に恋をしていた。
その人は真夏の空に浮かぶ太陽のように輝いて、鹿児島の海を思わせるような凛とした表情、それに焦げた褐色の肌色にとても早口な鹿児島弁が特徴的な人だった。
しかし、そんな太陽のような人に手が届くはずもなく、ずっと、ずっと、その人ばかりを求めて彷徨っていた。
しかし、そんな中。その恋をしたやつが私に手を差し伸べた。
私はずっとそいつを避けていた。仲間だったからというのもあるが、単に怖かったのだ。
昔のように裏切られてしまうのではないかと、失望されてしまうのではないかと、様々な心配が募り、余計に避けていた。
でも、そいつは私を見捨てずに、優しく私に寄り添いながら何度も手を差し伸べてきた。
そんな熱心なそいつに、私はついに心を開いた。
最初こそは怖かったが、後に、本当に信じられる恋人だと感じられるようになり、幸せだった。
時に体を重ね合うその時でさえも、そいつは私の心配ばかりをして思わず笑ってしまった。
でも、不思議と嫌な感じはしなかった。その人が私に触れるたびに体にじんわりと暖かさが広がっていく。
まるで、長年に積もった私の雪を溶かすように、ゆっくりと私を大きな手で、豆だらけの硬い手で愛でてくれた。
そんな幸せな時間もまるで桜のように散っていく。
咲いた瞬間こそとても美しいというのに、すぐに散っていってしまった。
散って落ちた花びらをいくら集めたとて、その時の美しさは永遠に帰っては来ない。
揺れる汽車の中で、私は一人、呼吸をする。
まだ、終わりたくないと。必死に。
ヒュー。ヒュー。
呼吸をするたびに苦しくなっていく。呼吸をするたびに目眩が、頭痛が、どこにもぶつけられない虚しさが私を襲う。
目を開ければ、見えるのは大好きなその人の顔。
最後まで逞しくて、かっこよくて、誰にでも自慢したくなるような、その人の顔。
大好きなその人の匂いに包まれながら、ゆっくりと汽車の揺れが私の眠気を誘う。開いている瞼がゆっくりと閉じていき、目の前がぼやけていく。
頬に何か温かいものが伝う。何かはわからない。でも…口の中がぎゅっとなって、ゆっくりしていた呼吸がかすかに乱れていく。
ガタンゴトン、ガタンゴトン。
汽車のは止まらず進んでいく。
ガタンゴトン、ガタンゴトン。
片手でその大好きな人の顔を寄せて、その瞳を見つめる。瞳は黒くて、一重で少し怖いけど、どこか男気を感じるような瞳。
もう、動かないその人を愛おしく見つめながら共に汽車に揺られる。
ガタンゴトン、ガタンゴトン。
次第に音が遠のいていく。
瞳を閉じてしまう前に、その人の顔を寄せて初めて自分からそっと口付けをした。
起きていたら、貴方はどんな反応をしていたんだろう。頬を染めていたのかな?それとも微笑んでくれたのかな?
そんなことを考えながらゆっくりと目を閉じた。
ついに音が途切れ、ふわりとその人と共に体が浮いた。体を冷たい闇が包み込み、落ちていく。
二人は永久に生きていく。たとえ、辛い地獄の果だとしても、寒い冬の谷底よりも暗い海の中でも。
二人の愛は永久に切れることなく、繋がれていく。
最初で最後の、二人の旅路。
コメント
1件
読んでくださりありがとうございます✨ 今回のこのお話は、金カムの2次創作のようなもので作らせてもらいました。 オリキャラの弓と金カムから牛山辰馬。 この二人の儚い最後の瞬間を書きたくって衝動書きをしてしまいました★