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しかし不思議だ…… 確かあの餌椀は一つきりだったと記憶しているが、今、レイブを庇うように並び立つホブゴブリン達の頭には、グフトマが割った物とそっくりな椀がお揃いで乗せられているのである。
増えたの? そんな私の素朴な疑問を吹き飛ばす声がレイブから発せられる。
「あー、太師匠ぉーっ! 鋼体術解かないとー! 解かなきゃ駄目ですよーっ! ダメダメェーっ!」
焦燥中の煽りとはげに恐ろしい物である、直後のグフトマの行動はその事を如実に顕していた。
「あ、え、お、そ、そうかっ!」
被るべき椀すらないのに鋼体術を解いてしまうグフトマ。
瞬間に自由を取り戻した鋭い牙を深く抉らせるゴブリン達。
痛みに顔を顰めながら鋼体術を再起動させて堪えるグフトマ。
慌てて目の前のホブゴブリン達から奪った椀を投げるレイブ。
力任せで砕けて転がるお椀。
鋼体術を解かせようと叫ばれるレイブのアドヴァイス。
痛みに喘ぐグフトマと勢いを取り戻すゴブリン。
投げ込まれる椀が割れる音とグフトマの悲鳴にゴブリンの唸り声。
グフトマの悲鳴とグフトマの悲鳴とグフトマの悲鳴。
いつしか全身のあちらこちらを出血で赤く染めたグフトマは遠目にも瀕死、死に瀕している事がはっきりと見て取れたのである。
時間にすればほんの僅かな間に阿鼻叫喚の修羅場と化したゴブリン居留地に、新たな声が響き渡ったのはその時であった。
『ンギャーァッ! ギャーッギャッー! グルルルルゥッ!』
「あっ! あれは太師匠にホの字の雌ゴブリン! 緑のヤツだ!」
言い方…… は兎も角、レイブの言葉の通り、昨日の餌やり中にグフトマにご執心な様子を見せていた雌ゴブリンが牙を剥いて威嚇をしながら他のゴブリンとグフトマの間に割り込んでいるではないか。
彼女の仲間だろうか? どちらかと言えば大柄でどこかボォっとした感じの鈍そうなゴブリン達数頭が、周囲を守るように並んで立ち、グフトマを護りながら腕に持った棍棒や足を振り回してもいる。
どうやらレイブ曰く緑のヤツと大柄の個体達はグフトマを助けようとしている様だ。
「あーやっぱり太師匠の気持ちに気付いてるんだな、緑のヤツはぁー! でも、他のデカイ奴等は何なんだろ? 緑のヤツの友達? 的な?」
「れ、レイブ殿! 取り敢えず外に出てください! 椀の無い者も出るんだっ、急げっ!」
あまりに意外な事の成り行きに、状況を呆けた顔で傍観していたホブゴブリンであったが、漸く正気を取り戻した感じで慌てた声を上げた。
そのままピョンピョン跳ねてグフトマと緑のヤツの様子を見たがっているレイブと、椀を無くした、いいや、椀をレイブに投げ捨てられてしまったホブゴブリンを押し出すようにして居留地の外へと向かわせたのである。
コメント
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ああっ、もうもうもう!めっちゃハラハラしました!グフトマさんがパニクって鋼体術解いちゃうとこ、焦りがビシバシ伝わってきてこっちまで「ダメェ!」って叫びたくなりましたよ(笑)そんな中、まさかの緑の雌ゴブリンがグフトマを庇いに入る展開!意外すぎて鳥肌立ちました…ゴブリン同士でも感情があるんだなって思うと、なんだか切なくもあって。レイブの「ホの字」発言もツボです。この混沌とした空気感、すごく好きです。