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※必読※
・煙草を吸っている💡と早くに目覚めてしまった🤝の話(短め)
・ご本人様とは全くの無関係です。
・不備・不明点などありましたらコメントまでお願いします。
以下伏字なし
ちゅんちゅんと小鳥が鳴いている。いつもより早く起きた、まだ肌寒い早朝。昨日一緒に寝たはずの人が隣にいなくて、徐にリビングの方へ足を進めた。こんな時間にいないなんて何をしているんだろうか。いつもならまだ眠っている時間。特に用事があるようなこと聞いていなかったし、早くに目が覚めてしまっただけだろうか。
リビングを見回しても彼は見つからなかった。ならば、とベランダの方に目を向けた。
居た。いつも俺が煙草を吸う時に使ってる擬似喫煙所。それ以外にほぼ使用用途はなかった。そんな場所になんの用だろうか。それは近づけは分かる。
______ライくんが煙草を吸っている。正直意外だった。彼は、配信で吸ったことがないと言っていなかっただろうか。今回が初挑戦という可能性もあるが、それにしては慣れすぎている。咳き込むとか、煙たがるとか、そういうのが一切なくて。吸っている姿は俺とほぼ変わらない。堪らず声をかければ、耳のいい彼はしっかりと音を拾ってくれて、こちらを振り向いた。
イッテツ
そう口が動くのが見えた。ベランダに行ってもいいかと聞けば、ゆったりと縦に首を振った。失礼しますと短い一言を添えつつガラス戸を開ければ、少し冷たい風が頬を撫でた。
「ライくん」
「なぁに?いってつ」
「煙草、吸ってたんだね。意外かも」
「あは、よく言われる」
「……」
「んふふ、イッテツ照れてんじゃん」
きれい。
放漫な笑顔でこちらを見る彼に、少しどきりと胸が揺れた。朝焼けで橙色のフィルターがかかったベランダでは俺も、彼も色は似たようなものだったのに。彼は目敏く俺の顔を指摘して笑い声をあげた。くふくふと控えめに笑う姿に、いつもの悪魔笑いをどこに置いてきたんだ思わないこともないが、配信者としてではなく恋人として接している今はツッコミよりも彼に対する愛しさで頭がいっぱいになっていた。
「イッテツ、かわいいね」
こちらに手を伸ばし、ゆったりとした動作でこちらの頭をくしゃくしゃと雑に撫でる。少し控えめな大きさだが、豆や傷跡が彼の努力を伝えてくる手、俺はこれが好きだった。
「ライ君も、きれいだよ」
呼吸と同じテンションで出た言葉に、俺もライ君もびっくりしていた。もともと大きい目をさらに大きく開いてまんまるな瞳孔がこちらを捉えている。しばらくすると表情は微笑みへと変わり、再び名前を呼ばれた。
直後、煙草を口に含んだかと思えばこちらに向かって一息吹いてきた。空気の読めない風に攫われて、一瞬でなくなってしまった確かな合図。あまり鋭い方じゃなくても、理解出来てしまうほどに直接的な行動。俺がもっと馬鹿だったら分からなかったかもしれないけれど、少なくとも煙草を嗜む人間であって、彼と恋人という縁を結んでいる人間である故に、偶然か気づいてしまった仄かなサイン。今が朝であることが悔やまれる。
「ライ君。それはそういうことであってる?」
「……内緒って言ったら?」
「ん〜、じゃあ今日の夜聞こうかな」
「イッテツのえっち」
ちょうど吸いきったのか、短くなった煙草を灰皿に押し付けてこちらに近寄ってくる。唇同士のキスをしてからもう一言。
「でも、今すぐ聞いたらいいのに。だってほら、今日も明日もおやすみだよ?」
急なキスで固まった俺を突きながらそう言葉を放った。嗚呼、本当に彼にはいつも困らせられてばっかりだ。スマートに決めようとしても、それを超えた返事をしてくる。返事の代わりに頭を撫で、彼の手を引くようにして部屋の中へ戻った。