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俺は兄ちゃんが好きだ。
家族としてじゃなくて恋愛的な意味で。
でも、兄ちゃんはほかに好きな奴がいて、きっと向こうも兄ちゃんのことが好き。
………見てれば分かる。
胸が痛い。苦しい。
この張り裂けそうな胸の痛みはどうすればいいんだろうって、ずっと考えてた。
兄ちゃんの幸せの為に、諦めようと思う。
でも、それでも走り出したこの気持ちは止められなかった。
だから最後に悪あがきしようと思って。
生きるか死ぬかの状況なら、兄ちゃんは俺を選んでくれるはず。
でも、もし俺が死んだらきっと兄ちゃんの好きな奴が兄ちゃんを引き止めて………って、
そしたら俺、本当に独りになるな。
これは、俺の最後の賭け。だからさ、
「お前が、止めんなよ……!」
「止めてなんかない。待ってって言っただけ。」
「待ったって俺の気持ちは変わんない…….」
幼馴染の百合は、いつも俺のことを気にかけてくれてた。良き理解者だった。なのに……!
「よし、準備出来た。」
「……………..何の準備、?」
あぁ、百合のこの表情。この世の全てを見透かしたような目。少々強気な赤リップの唇はゆっくりと弧を描いた。
「悪あがきするんでしょ?私も付き合う。」
「…………心中、になっちゃうね」
「うん。蘭の間抜け面を拝むの、楽しみだわ。」
百合は俺の手を取り、無邪気に笑った。そして俺たちは屋上から飛び降りた。
愛する人の焦った声を背に受けながら。
𝙴𝙽𝙳
補足】
竜胆は大きな勘違いをしていました。
百合を良き理解者だと思っていたのは竜胆だけではない。蘭も同じだったんです。
蘭も「血の繋がった弟が好きだなんて、」と百合に相談を持ちかけていました。
泣き出した蘭を抱き締めて慰める百合。そしてそれを見てしまった竜胆。
百合はそれに気付いていました。「独占欲が強い竜胆ならきっと、蘭に気持ちを伝えるはず」そう考えた百合は甘かった。
最後に聞こえた声はもちろん蘭の声。
百合が赤リップをを付けるのは、簡単には泣かない強い女で居たいから。この先ずっと、反社会的勢力という弱肉強食の世界で不器用な幼馴染の理解者でいるために。
ちなみに百合は彼氏持ちです。(え)