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──気づくと、森の中にいた。
夕方の光が木々の間からこぼれて、
落ち葉が静かに揺れている。
(また、この夢か……)
純はゆっくり息を吐いた。
夢だと分かっているのに、
足元の感触や風の温度が妙にリアルだった。
そして、いつものように、
自分が“きのこ”の姿になっていることに気づく。
(なんで、きのこなんだろう……)
苦笑しながら歩き出す。
そのとき──
後ろから、誰かの足音がした。
振り返ると、
そこに立っていたのは、
“女の子”だった。
顔はぼやけている。
でも──
(……森野さんに、似てる)
純は思わず眉を動かした。
現実で森野姫子を見るときと同じ癖。
女の子は何も言わず、
ただ純を見つめていた。
純は喉が少しだけ詰まるのを感じた。
「……こっちだよ」
名前は呼ばない。
呼べない。
夢の中でも、距離がある。
でも、
“連れていかなきゃいけない”
そんな感覚だけが胸にあった。
歩きながら、
純はふと目を上に向けた。
考えるときの癖。
(なんで……森野さんなんだろう)
夢の中なのに、
胸が少しだけ痛くなる。
女の子は静かに純の後ろをついてくる。
その距離感が、現実と同じで、
純は胸の奥がざわついた。
「……ここまで来たら、大丈夫だから」
そう言って振り返ったとき、
女の子の輪郭が一瞬だけはっきりした。
(……森野さん……?)
名前を呼びそうになった。
でも、声にはならなかった。
風が吹いて、
森が揺れた。
次の瞬間──
夢はふっと途切れた。
純は目を覚まし、
天井を見つめながら小さく息を吐いた。
(……なんなんだよ、この夢)
でも胸の奥に残った感覚だけは、
どうしても消えなかった。
(あの子に……森野さんに、似てた)