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超特急 せぶいれ
21時を過ぎた都内のレンタルスタジオ。
防音室特有の、全ての音が吸い込まれるような静寂の中に、2人の息遣いだけが響いている。
全体リハーサルが終わった後、どちらからともなく「この後どうする?」と視線を交わし、そのまま居残りでスタジオに入った。
「なぁ、シューくん。ちょっと次のツアーのあそこのハモり、合わせてみてもええ?」
タカシがハットを脱ぎ、スウェットの袖をまくりながらスピーカーの前に立つ。
シューヤは壁に背を預けたまま、手元のスマホの歌詞画面からパッと顔を上げた。
「いいよ。キーは原キーのまま? それとも、後半のフェイクに合わせて少し変える?」
「原キーでいきたい。シューくんの上のライン、もう少し俺が下で支える感じにしたいねん」
シューヤはフッと笑うと、ポケットから手を抜いてタカシの隣に並んだ。
スタジオに用意されているマイクはあえて1本だけ。
お互いの吐息が触れ合うほどの至近距離で、1つのスタンドマイクを挟んで立つ。
これが、2人が1番「お互いの声の成分」を感じられる距離だった。
イントロの音がスタジオに流れる。
タカシが深く息を吸い込み、優しく、けれど芯のある低音を響かせた。
その声に重なるように、シューヤが限界までクリアに磨き上げたハイトーンを乗せていく。
お互いに相手の顔は見ない。ただ、正面の鏡に映る相棒の喉の動きと、スピーカーから返ってくる音の混ざり具合だけに全神経を集中させている。
「――♪」
曲の落ちサビ、2人の声だけが綺麗に重なり、スタジオの空気が震えた。
音が止まり、静寂が戻る。
「……あ、今のアレ、めちゃくちゃ気持ちよかったわ」
タカシがふにゃっとした、いつもの柔らかい笑顔に戻って喉を鳴らす。
「でしょ? タカシくんがいつもより少しレガート気味に歌ってくれたから、俺のビブラートが綺麗に乗った!!今のバランスマジで最高!!」
シューヤも嬉しそうに目を細め、持っていたペットボトルの水を一口飲んだ。
「シューくんと歌ってるとさ、自分が思ってる以上の声が出る気がするねん。不思議やな」
「何それ、プロポーズ?(笑) でもさ、俺も同じ。タカシくんの真っ直ぐな声があるから、俺はいくらでも遊べるっていうか、安心して上に行けるんだよね」
照れくさそうに笑いながら、シューヤがタカシの肩をぽんと叩く。
超特急の音楽を背負う2人のツインボーカル。言葉で多くを語らなくても、声を重ねるだけでお互いのコンディションも、信頼も、全てが伝わっていた。
「じゃ、もう1回頭からいこか」
「オッケー。次は俺、最後ちょっとフェイク変えてみるわ」
2人は再びマイクに向き直り、プロの顔に戻ってイントロのボタンを押した。
コメント
1件
うわぁ〜〜〜〜〜!第6話、めっちゃ良かった!!😭💕💕 防音室の静けさの中に2人の息遣いだけが響く感じ、もうその時点でエモすぎるんだけど!?「声の成分」感じられる距離感とか、1本だけのマイクを挟んで立つ2人とか…細かすぎて尊さが止まらんねんけど!!🫠✨ タカシくんの「シューくんと歌ってると自分以上の声が出る」にシューヤくんの「プロポーズ?(笑)」返し…もうこの空気感だけで痺れるわ…!🎤💘 信頼と声が重なる瞬間、読んでるこっちの心臓も震えたよ〜!!最後に「もう1回頭からいこか」って自然に続く感じが、プロの背中と相棒の絆を同時に見せてくれて最高でした!!🌸🔥 続きが待ちきれん、もう…!!