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#婚約破棄
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――とは言ったものの。私は翌日、エリザベスに言われた言葉を、一人思い返していた。
『……私には、まだ少し恋愛は早いんじゃないかなって』
そう思っている彼女に、「恋愛しようよ!」と言わなければならないとしても、今すぐそう言って上手くいく想像が、まったくできない。
でも時間、そんなにないんだよなぁ……。マズい。どうしよう。早く何かしらの解決策を思い付かないと……。
そんなふうに考えながら、一人食堂に向かっていると(エリザベスとは午前の授業が別だった)、廊下の奥、人混みの中にクラウス殿下を見つけた。
昼食の時間で、廊下は生徒でごった返している。それにここは、ゲームの世界。いわゆるモブもみんな顔立ちや背格好など、整った生徒達ばかりだ。
それなのに、私はその大勢の中に、クラウス殿下を見つけられていた。私の目はどんな状況でも、推しを見つけて、追いかけてしまうようだ。
(うーん……すごい。攻略キャラじゃないのに、ものすごい存在感……)
どこかへ行こうとする彼を眺めていると、ふっと顔がこちらへ向いて、すっと私のほうを見た。すぐに柔らかく微笑んで、緩く手を振るクラウス様。……えっ、これってもしかしなくても、私に手を振ってる?
少し周囲を確認するけど、殿下のことを見ている人は、他にはいない。自意識過剰、ということではないみたい。
少し安心してから手を振り返すと、クラウス様はこっちへ方向転換した。少しして、彼が目の前までやってくる。
「こんにちは。ソフィアも、今からお昼かい?」
「はい、二限も授業だったので」
クラウス様はご自分の前髪に触れて、少し目にかかっていた髪をどかす。たったそれだけの動作なのに、優雅で気品があって、その美しさに目を奪われてしまう。彼が推しであるということを差し引いても、そう感じると思う。
「そっか。もし良かったら、お昼、一緒にどうかな?」
「いいんですか? 誰かと約束してたりは……」
「大丈夫。今日は一人だから。もし時間があるなら、南の食堂に行ってもいいかな? 多分今から行けば、こっちよりは空いてると思うんだ」
この先にある食堂はもうエリーと何度か行っていて、私も色々と慣れているけれど、彼の言う南の食堂には、まだ行ったことがない(今の私になる前に、ソフィアが行ったことがあるかは分からない)。
道を覚えるという意味でも、彼の提案はありがたい。
「ありがとうございますっ! ぜひ、そちらへ行ってみたいです」
「うん。じゃあ、行こうか。こっちだよ」
先を行き、エスコートしてくれる彼にときめいてしまいながら、私は廊下を進んだ。