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私は、平凡な家庭に産まれた。
私には、 妹が居る。
妹はとても優秀で、友達も沢山いる。
「…私とは大違いだ。」
姉の私は、勉強は下から数えた方が早いくらい出来ないし、運動も苦手。得意な事なんてない。
そんな私は、いつも親から暴力を受けていた。
私が悪いんだ。だから、親の事は嫌っていない。
何でも優秀な妹が居るんだから、それは比べたくなるだろう。
でも、やっぱり辛い。
こんな事ならいっそ
「この世から消えて無くなればいいのに。」
ある日、部活から帰ってきた私は、とても疲れていた。ご飯も食べず、お風呂も入らず、着替えてそのまま寝てしまった。
気が付くと、さっきまで部屋だったはずの空間が、真っ白な、何も無い空間へと変わっていた。
音も、物も、終わりもない。
とにかく、歩いてみる事にした。
前へ、前へ、前へ、前へ…。
いつの間にか目の前に、大きな扉があった。
「こんな何も無い空間に、一つだけ、扉…?
どこかに繋がってたりするのかな。」
誰も居ない。分かっているのに、声を発した。
「ね、ねぇ…この扉、どこに繋がってるの…?」
「…だろうね。何も返ってくるはずが_」
カツン…キュポッ…サラサラサラサラ…キュッ
目の前の扉に看板が吊るされ、誰も触れていないペンが独りでに動き出し、文字を書く。
“推しと話せる世界”
「…ホントに…?ま、まさか、ね…。」
と言いつつ気になったので、入ってみる事にした。
『…あ!やっと帰ってきた!○○さん!』
「…え…?え、と…✕✕、さん…?」
話している相手は、推しだ。声からして間違いは無いだろう。しかも、今日はメンバー勢揃いだ。
『あ!やっと帰ってきた!』
『んじゃ、始めますか〜』
どうやら、そこそこ有名なYoutuberになった世界線のようだ。
たくさん話して、たくさん笑って、たくさん遊んで…。こんな幸せいっぱいな生活、初めてだ。
再び気が付くと、またあの空間に戻ってきていた。扉は、2つに増えていた。
前に行った扉には鍵が掛かっていた。
もう二度と入れないことに気付く。…残念だ。
「次の扉は、どこに繋がっているの?」
カタッ…キュポッ…サラサラサラ…キュッ
“プロゲーマーになれる世界”
「え…1回なってみたかったんだよね。」
今度は躊躇うことなく入った。
“早く見たい!まだー?”
”再開しないの?”
“早く再開して欲しー!”
目の前にはゲーミングPC、机の上にはそのゲーミングPC関係の物、椅子はゲーミングチェア。 耳にはヘッドホンを付け、画面にはゲームの待機画面が映っていた。
「…みんなお待たせ。今から再開するね。」
“お!やった!” “待ってました!”
「んじゃ、今回はこの武器でも使おっかな〜。」
なんて、使えるわけないのに。言葉に惑わされてるだけなのに。
そう、思っていたのに。
「1キル…2キル…ワイプアウト…。マジか…。」
”流石○○!” “いや強すぎw”
”もはやチート疑われるレベルww”
「普段とは全く違う…当たりすぎる…。」
とても楽しい。適当にチャージして、適当に敵を見つけてそこに撃って、当たって、当たって…。
また気が付くと、今度は扉が4つに増えていた。
…1つづつ増えていくわけではないのか。
「それぞれどこに繋がっているの?」
カタッ…キュポッ…サラサラサラ…キュッ
カタッ…キュポッ…サラサラサラ…キュッ
“全てが上手くいく世界”
“全てがダメな世界”
「は?全てがダメな世界?行くわけないじゃん。
もちろん、全てが上手くいく世界に行くよ。」
ガチャッ…パタン
「ん…あれ、寝室…?戻ってきちゃったの…?」
コンコンコン
「○○ー?起きてるのー?遅刻するわよー!」
「え…?は、はーい。」
「あら、おはよ。朝ご飯出来てるから食べちゃいなさいよ〜。」
「あ、うん…ありがとう…。」
「○○おはよー!」
「おはよ。」
「今日めっちゃ暑いよねー!死んじゃうw」
「…そうだね。凄く暑い。」
「今日は、先日行ったテストを返すぞー。
まずは…○○。」
「は、はい…。」
正直自信がなかった。受け取りたくなかった。
「…よく頑張ったな。スッ」
「ペラッ…え…?嘘…。92点…?」
「凄!やっぱ○○頭いいんじゃーん!」
「あ、あはは…ありがとね。」
まさか…夢かと一瞬思ったくらいだ。
頬をつねった。普通に痛い。これは現実なんだ。
テストを見せた。たくさん褒められた。
夜ご飯が豪華になった。このまま、この世界が続けばいいのに。
ピリリリリッ…ピリリリリッ…ピリリ_カチッ
「…あ、もうこんな時間か。起きよう。」
「…お母さん、おはよう。」
「あ”?何私にタメ口使ってんだ?
てめぇはまず床を掃除しろよ。あと敬語、な? 」
「え…?は、はい…。」
おかしい。何かがおかしい。
昨日とは全く別人のような言い草。顔つき。
これは…自分が見ている夢なのかもしれない。
テスト返却をされた。
「○○、良く頑張ったな。」
88点。まぁまぁだ。いや、良い方なのではないかと個人的には思う。他もあまり高い様子はない。
「ただいま帰りました。」
「あの…テストが返されたので見てください。」
「…バッ…ペラッ…ペラッ…」
親に見せた。無言でテストと睨めっこしてた。
テストを机に置いた瞬間、頬に激痛が走った。
「イ”ッ…」
「こんな点数で、まさか満足してないよな?
お前は私の子供なんだ。もっと取れて当たり前なんだよ。理解してんのか?」
「ッ…は、はい…すみませんでした…。」
「罰として、ここで5時間勉強しろ。
途中で休憩とかいう楽はさせないからな。」
「ッ…はい…。」
何、この苦痛な世界…。まるで現実みたいで…。
どれだけ部屋を歩き回っても、真っ白な空間には辿り着かない。
どれだけ眠って、夢を見ても、真っ白な空間には辿り着かない。
どれだけ家の扉を開けても、真っ白な空間には辿り着かない。
何をしても、何を試しても、いつまで経っても、あの空間には辿り着くことが出来ない。
「何で…?どう、して…?
神様まで見放したってわけ…?」
家を飛び出した。色んなところへ行った。
走った。知ってるところから知らないところまで
どこへでも行った。
あの空間へ辿り着くことはなかった。
日が暮れた。仕方なく家へ帰った。
親に叱られた。また暴力を振られた。
暴力はエスカレートした。体の痣が増えた。
自分の中の何かが、切れる音がした。
その日、親を殺した。
何もかもを捨てて、ただ感情に任せて。
もう一度、あの真ッ白な空間に帰りタい。
なのに、戻レナい。なんで、ナの…?
モういッカイ、アのせカイ二もドリタいだケなの二…どウシて…?
…アのセカい…?何ダッけ、ソレ…。
そウイエば…
“私”ッテ、ダレダッケ…?