朝。カーテンの隙間から差し込むやわらかな光が、部屋を静かに照らしていた。
コーヒーの香りとともに、台所からは小さな音が響いてくる。
「……起きたか」
エプロンをつけたロシアが振り返り、淡々とした声で言った。
「……あんた、もう起きてたのか、というかなんでまだ居るんだ」
寝癖を直しながら中国はリビングに顔を出す。まだ少し眠そうな目をしているが、その表情は昨日よりずっと穏やかだ。
「別に部屋隣だし良いだろ?……パン焼いただけだ。……腹減ってるだろ」
「……ああ。ありがとう」
小さなテーブルに二人で並んで座る。
ただそれだけなのに、不思議と心が安らぐ。
「なあ、中国」
「ん?」
「昨日のこと……お前、まだ怖ぇか?」
問いかけに、中国は少しだけ俯き、そして小さく首を振った。
「……まだ、完全じゃない。でも……昨日よりはずっと、楽だ」
「そうか」
ロシアの返事は短い。けれど、その声の低さと落ち着きが、中国の胸をゆっくりと撫でていった。
ふと、外から子どもの笑い声が聞こえる。
窓を開ければ、冬の冷たい空気の中で、近所の子どもたちが走り回っている姿が見えた。
「……いいな」
中国がつぶやく。
「何が?」
「無邪気に笑えるのって。……俺も、そんなふうにできたらよかった」
その言葉に、ロシアは一瞬黙った。 けれどすぐにカップを置き、静かに告げる。
「中国。お前が笑うのを、俺はちゃんと見たい」
中国は驚いたように目を瞬かせる。
その視線を受け止めながら、ロシアは淡く笑った。
「だから……ゆっくりでいい。壊れねぇように、俺がそばにいる」
中国は言葉を失い、それでも――目元に小さな笑みが浮かんだ。
朝の光が二人を包み込み、昨日の不安は薄れていく。
まだ未来は見えない。けれど、隣にいる温もりだけは確かにあった。
窓から射し込む陽光はやわらかく、二人の静かな朝食を包んでいた。
ロシアは無骨な手つきでカップを置き、中国は湯気の立つスープを口に運ぶ。
ほんの数日前の重たい沈黙はもうなく、言葉の少なさが心地よい余白になっていた。
「……なぁ、中国」
「ん?」
「お前、笑ってるほうがいい」
唐突な一言に、中国は眉をひそめる。
「……何だよ、急に」
「思っただけだ」
ロシアは照れ隠しのようにパンをちぎり、口に放り込む。
ふ、と中国の口元がゆるむ。
小さな笑み。それを見てロシアも黙ってうなずいた。
――その時だった。
「Yo〜!開いてるか〜?」
ドンドン、と玄関を叩く大きな声。
中国がぎょっと振り返る。
「……アメカス……!」
仕方なくロシアが立ち上がり、ドアを開けると、そこには相変わらず大きな声のアメリカと、少し気まずそうに頭を下げる日本の姿があった。
「ロシア!China!突然で悪いな。近くまで来たから寄ったんだ!」
「アメリカさん、もう少し控えめに……」
「いーじゃん、どうせ暇だろ?」
中国はため息をつき、腕を組む。
「勝手に来やがって……」
「おっ、ちゃんと生きてんじゃねーか。よかったよかった」
アメリカはにやりと笑い、勝手に靴を脱いで上がり込む。
「……まったく」
中国は呆れつつも、その顔はどこか安堵していた。
日本は静かに台所を見渡し、にこりと微笑む。
「いい香りですね。朝食の途中でしたか? 私たちも少しご一緒しても?」
「……ああ、構わんぞ」
ロシアは淡々と答え、席を増やす。
テーブルに四人が揃うと、最初はぎこちなさが漂った。
けれどアメリカが空気にパンを頬張り、日本が穏やかに場を取り持ち、中国が皮肉を飛ばし、ロシアが黙って見守る――
そのうち、笑い声が自然に混じっていった。
「おいChina、ちゃんと飯食ってるか?」
「……余計なお世話だ」
「でも顔色、前よりいいですよ」
日本の言葉に、中国は少し頬を赤らめてうつむく。
窓の外では冬の陽射しが白く輝き、子どもたちの笑い声が遠くから聞こえていた。
食後、コーヒーの香りがまた部屋を満たす。
中国はカップを両手で包み、ふと隣に視線をやった。
ロシアは黙ってそこにいて、目が合うとわずかに笑った。
「……ロシア」
「ん」
「ありがとうな」
その声は、ほんの小さな音だった。
けれどロシアには十分すぎるほど届いていた。
「俺はもう、大丈夫だ」
中国がそう言った時、アメリカが茶化すように笑い、日本が優しくうなずいた。
温かな気配の中で、孤独は遠ざかっていく。
隣にいることの確かさだけが、胸に残っていた。
――冬の日曜、静かな午後。
四人の笑い声は、柔らかな光とともに部屋を満たしていた。冬の日曜
☕ THE END
コメント
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ふぁぁぁぁあ!泣 かんっっっどう!!!😭 好きすぎます!!!😭 あと見るの遅れてすみません!!!
やばいやばいこんな神作なのに通知気づいてないのまじで😭 その語彙力ちょっと分けてくれません(((ハピエン最高だね!!もうこれはハート連打不可避!!!🫶🫶
ちょっともう最高すぎてッッ1話から読み返したよッッ😭 もう感動の涙と尊さからのニヤケが来て顔面ぐっちゃぐちゃだよッッ((