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「金髪の方が美澄。黒髪の方が小竹だ」

「初めまして、美澄 とらです!」

「初めまして、小竹 侑士ゆうしです」

二人は久しぶりのキャバクラにテンションが上がってはいるものの、警護対象となる詩歌ときちんと姿勢を正し、名を名乗った。

「美澄、小竹。この子は詩歌ちゃん。店では『白雪』って名乗ってるから、くれぐれも間違えないようにね。まあ、よろしく頼むよ」

「初めまして、美澄さん、小竹さん。花房 詩歌です。よろしくお願いします」

いつも通りきちっと姿勢を正してお辞儀をする彼女の姿に見惚れる二人。

今日は周りの目を気にせず話がしたいという郁斗の申し出もありVIPルームでの接客という事で、詩歌はいくらか気が楽そうだった。

「それじゃあ早速本題に入るよ。ここに来るまでに詩歌ちゃんの境遇を多少話したとは思うけど、彼女は今、半グレ集団【苑流えんりゅう】に行方を捜索されてる」

「苑流?」

「苑流は近頃【黛組まゆずみぐみ】とつるんでるグループだよ」

「黛組って、関西連合【多々良会たたらかい】の傘下組織の中でも際どい事して多々良会ですら手を焼いてるっていうあの黛組ですか?」

「そう。正直、非常に厄介な連中だ」

「マジっすか? かなりやべー案件じゃねぇっすか……」

「それは分かってる。だから俺は信頼出来るお前ら二人に詩歌ちゃんの警護を頼みたいんだよ」

郁斗の話を聞いて美澄と小竹ですら険しい表情を浮かべているのを目の当たりにした詩歌は、自分を捜している組織がとんでもない相手なのだと再認識して思わず身震いした。

そんな彼女に気付いた郁斗たちは、

「やってくれるよね、美澄、小竹」

「も、勿論っすよ。郁斗さんに期待されてるって分かればやるしかないし! な? 小竹」

「ああ、勿論。任せてください、郁斗さん」

少しでも詩歌を安心させようと明るく振る舞い話を進めていく。

「詩歌ちゃん、二人ともやってくれるって。これでひとまず心配いらないよ」

「……すみません、ご迷惑をおかけして。美澄さん、小竹さん、これからよろしくお願いします」

「いやいや、当然ですから!」

「そうですよ、俺ら相手にそんなに畏まらなくて大丈夫です」

「そうだ! とりあえず、俺、何か飲みたいっす! 詩歌さん、お願いできますか?」

「あ、はい! 勿論です。何になさいますか?」

女慣れしていない二人は詩歌の反応に戸惑いながらも、これから関わり合いになるので少しでも距離を縮めていこうと歩み寄る。

「詩歌ちゃん、お酒作るの俺も手伝うよ」

「いえ、ここでは郁斗さんもお客様ですから……」

「いいって。今日は客として来てるってよりも、話がメインだからね。気にしないで」

「……それじゃあ、お願いします」

こうして、話し合いに支障の無い程度にお酒を飲みつつ今後の段取りを相談し合った美澄と小竹は時折詩歌の接客を受けつつ、久しぶりの酒の席を楽しんだ。

そして早速明日から交互に詩歌の護衛に就く事が決まり、この日は解散となった。

郁斗はお酒を飲まなかったので彼の運転で帰る事になり、詩歌が着替えを終えて事務所へ向かうと、樹奈が郁斗に言い寄っている現場に遭遇した。

「ねぇ郁斗さん、いつ樹奈を指名してくれるの? 樹奈、待ちくたびれちゃったよぉ」

「んー? そうだねぇ、今度……かな?」

「もう、そう言って全然声掛けてくれないじゃん。明日は?」

「……仕事終わってからになるから一時間くらいになっちゃうけど、それでもいいならいいよ」

「アフターもいい?」

「約束だからね」

「やったぁ~♡ それじゃあ、明日ね! 待ってるから! ドタキャンしちゃ嫌だよ?」

「ああ、分かってるよ」

約束を取り付けた樹奈は満足したようで、意気揚々と事務所を出て行った。

そんな彼女に気付かれないよう身を隠していた詩歌は遠慮がちに中へ入る。

「詩歌ちゃん。ん? どうかした? 何か元気が無いけど……もしかして体調悪いとか?」

「い、いえ。何でもないです。すみません、お待たせして」

「いいって。それじゃ、帰ろうか」

「はい」

郁斗は明日、樹奈に会う為に『PURE PLACE』へやって来る。その事が何だか凄く嫌で、複雑な気持ちになった詩歌はモヤモヤを抱えたまま帰路に着いた。

優しい彼の裏の顔は、、、。【完】

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