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昼休み。教室の窓際で、木葉はイヤホンを片耳だけに挿し、外を見ていた。
「木葉ー!サボってないで、こっち来なよ!」
うるさい、と返すよりも先に、夢主がずかずかとやって来て、勝手に隣の席に座る。ニコニコと無邪気な笑顔。そういうのが嫌いではない自分に、木葉はうっすら気づいていた。
「昼くらい静かに過ごせよ。毎日毎日、体力どっから湧いてんの」
「んー?天性?」
「はあ……馬鹿か」
「失礼な!木葉だって、たまには笑えばいいのに。最近ずっとムスッとしてるじゃん」
そう言って夢主は、木葉の顔をのぞき込む。近い。そんなに顔を近づけられると、さすがに落ち着かない。
「別に、ムスッとしてねぇよ。お前が近すぎるだけだろ」
「……お、ちょっと赤くなってる?」
「赤くねぇよ。うるせぇな」
けれど、確かに木葉の耳は少しだけ赤かった。夢主はそれを見逃さず、勝ち誇ったようににやっと笑う。
「ま、そういうとこも木葉の良いところだけどね」
「あ?」
「んーん、なんでもない!」
夢主はそのまま、木葉の机に肘をつきながら、おしゃべりを再開する。どうでもいい話。授業のこと、次の体育のこと、帰りに寄るコンビニのこと。
いつもの、くだらない会話。
けれど木葉は、その喋り声を「うるさいな」と思いながら、
なんとなく――明日もまた聞きたいと思った。