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翌日、僕はスーパーで油揚げを買って稲荷に持っていった。


神主とかはいないので、誰かにことわる必要はない。僕は社の階段にお供えして、パンパンと柏手を打った。


これからどうすればいいんだろう?


普段お供えなどしたことがないので、勝手がよくわからなかった。このまま放っておくと動物が、それこそ猫などが油揚げを持っていってしまいそうな気がする。


一応心の中でお礼も言ったしな、と思いながらしばらく待っていたが反応は特になかった。


「何をにゃさっておいでで?」


いつのまにかハルが足元に来ていた。物珍しそうに僕を見上げている。


「ああ、いやあのね……」


僕が人目を気にしながら手短に経緯を説明すると、ハルは〝ほほう〟と唸り一気に賽銭箱の上に飛び乗った。


「願解き……それは確かにやっておくと良いかもしれませんにゃ。効果はいかほどですか?」

「うーーーん。っていうか、今ハルと話せてる時点で効力ないよね」


僕が応じるとニャッハハハ、とハルは目を細くして笑った。


「いやはや。これは一本取られましたにゃ」


こっちは笑い事ではない。


「しかし、にゃかにゃか興味深い。その古本屋の店主、各務とかいう者の申す事、一考の余地ありと思いみゃす」


「え、えーっと、どの部分?」


「夏雄どのが何かご神勅《しんちょく》を仰せつかっている、という部分ですにゃ」


稲荷は僕に何かをさせたいのでは? というところらしい。


「何か心当たりがあるの?」

「無きにしも非ずと申しますかにゃあ……」


猫なのに、何だか思わせぶりな態度である。


「場所を移しみゃせんか?」


気を使ってくれているらしい。〝猫なのに〟とか思って悪かったな、と心の中で謝った。


ハルは〝神供《じんく》の油揚げは帰りに持って行ったほうがようございみゃしょう〟と、注意し、小走りで僕を導いた。


「ええー、さて」


陣池稲荷の境内は意外に広い。ご神域と呼ばれている森の真ん中に小道が通っていて、そこを抜けると集会所の建物がある。


なんでこんな難しいところにあるのははよくわからないが、昔は〝講〟という何か秘密の集まりがあって、ここでやっていたらしい。


僕とハルは集会所の裏の、さらに人目につかない場所に移動した。


ハルは口を開きながらも周囲への警戒を怠らない。なかなかの用心深さだった。


「少し言いにくいのですが……お父上のことはご存じですかにゃ?」

「え? なんて?」


いきなり話が飛んだ気がする。


「やはりご存じありみゃせんでしたか……」


ハルは、はぁっとため息をついた。ように見える。

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