いるまはぼんやりした頭で瞬きを繰り返した。視界いっぱいにあるひまなつの顔――近すぎる距離に思わず息が詰まる。
「……っ!」
驚いて身を引こうとするが、腕の中でがっちり抱き込まれているため、逃げ場はない。日中の出来事が一気に蘇り、頬から耳まで熱が広がった。
「そ、そういえば……一緒に寝たんだったな……」
自分に言い聞かせるように呟くと、ひまなつがうっすら目を開き、眠たげに微笑む。
「ん……おきた? おはよ……」
その声は、夢の中にいるように甘くて柔らかい。
ひまなつはそのままいるまの唇に軽く口付けた。不意打ちのはずなのに、いるまは拒むこともできず、むしろ自然と目を閉じて受け入れていた。
唇が触れ合った瞬間、胸の奥にじわりと温かいものが広がっていく。ひまなつの吐息が頬にかかり、耳の赤みはさらに強まった。
「……なんだよ、……」
照れ隠しにそう言ってみても、声はかすれ、ひまなつに抱き寄せられたままでは説得力もない。
ひまなつは目を細め、頬に指を滑らせながら「かわいいな」と小さく呟いた。
再度ひまなつの唇がそっと触れた後、いるまはほんのわずかに口を開けた。
それはまるで――続きを欲しがっているかのような無意識の仕草。
ひまなつはその意図を見逃さず、目を細めて微笑んだ。
「……察して待ってんの、反則だろ」
囁きながら、ひまなつはゆっくりと唇を重ね直す。
「ん……っ」
柔らかい圧がかかり、すぐにその隙間へと舌を滑り込ませた。
温かい舌が触れ合った瞬間、いるまの肩が小さく跳ね、 抑えきれない声が漏れる。
ひまなつの舌が優しく撫で、絡め取るように動く。
いるまは目を閉じ、ぎこちなくも舌を返して絡めた。
唾液が混ざり合い、唇の端からかすかに甘い糸を引く。
ひまなつは息継ぎの合間に、耳元で小さく囁いた。
「ん……ほんと、かわいいやつ」
いるまは返事をする余裕もなく、ただ熱に浮かされたように唇を求め続けていた。
ひまなつはいるまの顎を軽く支え、深く口づけを落とした。
舌と舌が絡み合い、唾液がとろりと混ざり合う。
「ん……っ、んむ……っ」
いるまの喉から押し殺した声がもれ、胸が小刻みに上下する。
ひまなつはその震えすら愛おしげに受け止め、さらに舌を奥まで差し込み、絡める動きを強めていった。
熱がこもり、酸素が奪われていく。
息をすることすら忘れ、ただ相手の温もりと甘さだけを求める。
口内は互いの熱と唾液で満ち、どちらのものか分からないほど濃密に溶け合っていた。
「……っ、んぅ……ふ……っ」
いるまの目尻にはうっすら涙がにじみ、頬は火照って紅潮している。
酸素が薄れて苦しいはずなのに、離れたいと思えない。
ひまなつの舌が離れるたび、名残惜しそうに自らも追いかけて舌を絡ませる。
やがて限界近くまで息が乱れ、唇の端から艶やかな雫が零れ落ちた。
それでもひまなつは離さず、ぎりぎりまで唇を重ね続け――
そしてようやく唇を離した瞬間、いるまは「っはぁ……はぁ……っ」と甘い吐息を漏らし、肩で荒く呼吸を整えた。
ひまなつはそんないるまの濡れた唇を親指で拭い、蕩けきった表情を見つめながら微笑むのだった。
「……はぁ、っ……」
荒く息を繰り返すいるまの唇は赤く腫れ、潤んで艶めいていた。
熱で潤んだ瞳を細め、ひまなつは囁く。
「……かわいすぎ」
耳元に落ちた低い声が、いるまの背筋をぞくりとさせる。
次の瞬間、再び唇を深く塞がれた。
「っ……んむ……っ……!」
いるまの胸が大きく跳ねる。
まだ整いきらない呼吸を乱されながらも、逃げるという選択肢はなかった。
むしろ、ひまなつの唇をもっと感じたいと、無意識に自分からも首を傾けて舌を絡めにいってしまう。
「ん……ふ……っ……」
唇を食まれ、舌を強引に絡め取られるたび、身体の芯が熱を帯びていく。
ひまなつは片腕でしっかりといるまの腰を抱き寄せ、逃がさないように押し付ける。
長い口づけの合間にわずかな隙間から空気を吸うたび、互いの吐息が混ざり合い、さらに深い熱を求めてしまう。
「……っ、な……なつ……っ」
いるまは酸素を求める声より、甘えるような声を優先して吐き出し、瞳を潤ませながら舌を絡め続けた。
「……ん、ぁ……っ……」
息が苦しくなるまで深く舌を絡められ、いるまは肩を震わせる。だがその荒い呼吸すらひまなつに飲み込まれてしまい、酸素が尽きる寸前まで離してもらえない。
ようやく唇が離れた時、いるまは大きく息を吸い込んだ。
「……はぁっ……、っ……何、してやが……」
言葉を吐き切る前に、ひまなつは薄く笑って囁いた。
「……ねぇ、もう少し……先に進んでいい?」
いるまは酸素を取り込むように必死に呼吸を整えながら、潤んだ瞳で睨みつける。
「……好きにしろよ」
観念したような低い声。だがその指先はシャツを握り締め、動揺を隠せてはいなかった。
ひまなつはすぐに行動に移す。手を伸ばし、潤滑剤を取る。その冷たい感触が指先に伝わる。いるまの服の裾へと潜り込み、硬く張り詰めた熱を軽く撫でてから、後ろへと滑らせた。
「っ……!」
触れられた瞬間、いるまの身体が大きく跳ねる。腰に力が入っているのがわかり、ひまなつは低く囁いた。
「力抜け……」
「……無理だろ、こんなの……」
強がりの声も、ひまなつには甘えにしか聞こえなかった。彼は優しく口付けを重ね、また舌を絡める。深く、濃く、何度も。
そのたびにいるまの呼吸は乱れ、強張っていた身体が少しずつ緩んでいく。
そして――その瞬間を逃さず、ひまなつは指を潤滑剤ごとゆっくりと中に滑り込ませた。
「っ……!!」
急激に走った異質な快感に、いるまは背を反らしてびくりと震える。それでも舌を絡めることだけは止められず、必死にひまなつの口に応える。
ひまなつは舌を絡めたまま、挿し込んだ指を奥へ進めるように押し広げていった――。
ひまなつの指がゆっくりと奥に沈み込んでいく。ぬるりと広がる感覚に、いるまの体がびくびくと細かく震えた。
「っ……ん、ぐ……っ……!」
唇を噛み締めようとするが、ひまなつが舌を絡めてくるせいで声が漏れてしまう。
喉の奥から上がる息遣いは熱を帯び、互いの口内で混ざり合った。
ひまなつはその反応に満足げに目を細め、指を軽く動かす。
くちゅ、くちゅ、と濡れた音が狭い空間に響き、いるまの腰が跳ねる。
「……ん、ぁ……っ、や、ぁ……」
押し殺そうとする声とは裏腹に、いるまの爪先はシーツを掴んで丸め込んでいた。
「力抜けって、言っただろ……?」
ひまなつは優しい声音で囁きながら、唇をそっと離し、いるまの耳に熱を吹きかけた。
「んっ……、無理……っだ、から……っ」
言葉を乱すたびに、奥をなぞる指先に全身を反応させてしまう。
ひまなつは、まだ硬く閉ざされたままの入口を解すように、ゆっくり指を引き抜き、再び押し入れる。
「ひいっ……!」
その度に短い声が漏れ、いるまは必死にシーツを握りしめて堪えていた。
ひまなつはそっと視線を落とし、赤らんだいるまの顔を見つめる。
「……もっと慣れさせてやる」
そう言うと、再び唇を重ね、舌を絡めながら二本目の指を添えていった――。
ひまなつはゆっくりと二本目の指を、奥の壁を確かめるように挿入した。
「んっ……ひぁっ……!」
二本目が入った瞬間、いるまの体がびくっと震え、腰が跳ねる。狭い空間に広がる圧迫感に、息が詰まりそうになりながらも声を漏らしてしまう。
「大丈夫……ゆっくり、力抜いて……」
ひまなつは耳元で優しく囁きながら、指を互いに擦り合わせ、柔らかく奥まで動かす。ぬるり、くちゅ、と湿った音が響くたび、いるまの肩は細かく震え、手でシーツを握る力が強くなる。
「ひぃっ……あっ……や、やば……っ」
声を上げるたびに体が反応し、熱が腰から伝わる。ひまなつはその反応を楽しむように、ゆっくり指を動かし、時折唇を重ね、離しては耳や頬に口付けをする。
いるまは息を荒くし、全身を預けるしかない状態になった。
「ん……っ、や……っ、んんっ……!」
押し殺そうとする声とは裏腹に、腰が反射的にひまなつの指に押し付けられ、体全体が蕩けていく。
ひまなつは指を優しく動かしつつ、唇で頬や額に口付けを重ね、いるまの意識を徐々に自分に集中させる。
「大丈夫……優しくすっから……」
その言葉と指の感覚に、いるまは少しずつ力を抜き、震える体をひまなつに預けるようにして、甘く喘ぎ続けた。
ひまなつの指がゆっくりと動き、奥で前立腺をかすめるたび、いるまの体が小さく震える。
「んっ……んっ……!」
思わず声が漏れそうになり、必死に口を押さえる手に力が入る。頬は熱く、額にはじっとりと汗が滲んでいた。
ひまなつはそれを見逃さず、ささやくように耳元で囁く。
「いいよ……俺の肩、噛んで…痛いくらいに…我慢しなくていい」
言葉に従い、いるまはひまなつの肩に軽く噛みつき、甘い香りが快感と入り混じる。
指の動きと唇、そして息遣いが一体となり、いるまの体は緩やかに震え続ける。
「んっ……あっ……だめ……やら……っ」
小さく漏れる声を抑えきれず、肩に歯を立てながらも、ひまなつの手と唇の感覚に全身を預ける。ひまなつはその反応を楽しむように、指の動きを少しずつ深く、そしてリズミカルに変えていく。
奥で前立腺を掠めるたび、いるまの体はビクンと跳ね、腰の動きも自然に反応する。汗に濡れた体をひまなつに預け、声と快感の波に身を任せるいるまだった。
「んっ…んっ…」
いるまは肩に噛みついたまま、小さく声を漏らし続ける。
口で抑えきれず、かすかに声が震え、体がひまなつの指の動きに合わせて反応する。抵抗するどころか、逆に体全体を預けるようにして、ひまなつの指を受け入れ続けた。
ひまなつは少し肩の痛みに顔をしかめるも、表情は真剣そのもの。いるまの奥で震える反応を確かめながら、指を前立腺に沿わせ、絶妙な角度で何度も刺激を与える。
「……いいね、いるま……感じてる……」
指の動きと体の温もり、耳元の囁きが同時に重なり、いるまの呼吸は荒くなり、体の震えは止まらない。肩にかかる痛みと快感が混ざり合い、全身に熱が走る。
ひまなつはそこからさらに少しずつリズムを変え、速さを調整しながら、いるまの快感を逃さず責め続ける。
いるまはもう言葉を発する余裕もなく、ひまなつの手と唇に身を委ねるばかりだった。
いるまの呼吸は荒く、全身が震えている。
「だめ、出る、いくからだめ…」
涙目で必死に訴えるが奥で熱が渦巻き、逃げ場のない快感に耐え切れなくなり、思わず「んぁっ!…あぁっ…!」と小さくも強い喘ぎ声が漏れそうになる。
ひまなつはその様子を見逃さず、いるまの唇に再びゆっくりと重ねる。舌を絡めながら唇を塞ぎ、声が出ないようにいるまを優しく支える。指は奥で絶妙に刺激を与え続け、いるまの体は小さくビクつきながら緩むことができない状態に追い込まれていく。
口の中で漏れるかすかな声に、ひまなつは指と唇の両方で応える。
いるまは奥で指を締め付け、体をくねらせながら絶頂の波に飲まれていく。
「んんーーっっ!!」
全身から声を漏らし、涙と熱に混じり、全身が一瞬で痙攣するように震え、体中の力が抜けていった。
ひまなつは指と唇の感触を緩めず、余韻を抱えたままいるまをそっと支え続ける。絶頂を迎えたいるまは、深く息をつき、まだ顔を上げられないままひまなつの胸に顔を埋めた。
ひまなつは、いるまが絶頂した後も緩やかに指を動かし続けていた。濡れた中を擦れる度に、いるまの身体は小さく痙攣し、もう耐える力もなく蕩けきった表情を浮かべる。必死に顔をひまなつの胸へ埋め、見られまいとしているが、漏れ出す甘い声は抑えきれなかった。
「……んっ、ぁ…っ…なつ…も、ゃぁ……っ」
熱に震える吐息が胸元にかかり、ひまなつはその声に胸を締め付けられるような愛しさを覚える。
その時――
コンコン、と唐突に響いたドアのノック音。
「……っ!」
二人の身体が同時にビクリと跳ねた。
すぐにらんの声が扉越しに届く。
「おーい、起きてるか?晩飯できたんだけど、どうする?」
一気に現実へ引き戻され、ひまなつは焦りを隠すようにいるまの体を抱き寄せ、必死に呼吸を整える。
「……あとで行くから、置いといて」
努めて平静を装いながら声を返す。
しかし間髪入れず、らんの問いかけが続いた。
「いるまは?」
その瞬間、中でひまなつの指をきゅうっと締め付ける感覚が走る。いるまが反射的に震えながら小さな声を絞り出した。
「……っ、お、俺も……あとで……いく……」
声は甘さを含んでかすれ、どうにも平常心とは思えない響きだったが、らんは気にした様子もなく、軽い調子で「おっけー」と言い残し、足音を遠ざけていった。
ひまなつといるまはしばらくの間、張り詰めた空気の中で動けずにいた。指はまだ中にあり、いるまの身体は余韻で震えながらも、その存在を拒めずにきゅうきゅうと締め付け続けていた。
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