テラーノベル
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70
実際にいるライバー様のお名前を貸りていますが、その方々とはこの世の全てと関係がございません。ご本人様の目に触れるような行為はやめてください。
この先伏字がありません。
地雷だと思った方は閲覧を控えることをおすすめします。
登場人物
◾︎kgmnt
◾︎kgm病み気味
◾︎ktm死ネタ
【ずっと】
頭が痛い。気持ち悪い。
そんな最悪な気分で目が覚めた。ベッドの上、天井に見覚えがなくて意識が一気に浮上する。私は何をしていた?
確か、仕事帰りにタクシーが捕まらず、歩いて帰っていた。そうしたら後ろから誰かに刺されて意識が……
となると身代金目的の誘拐だろうか。確かにここが誘拐犯の部屋なら納得がいく。
そう考えていると扉が開いて、1人の男が出てきた。
「あ、しゃちょ起きた?」
思わず固まる。
なぜ、彼の声が聞こえる?彼の姿が見える?少なくともこんな場所にはいないはずだ。どうして彼が…
「不破、さん?」
「……体調は大丈夫そうやね。いきなり刺してまってごめんなぁ。」
慈しむように、髪を撫でて優しい声音で謝った。
刺して、と言ったか?もしかして、ここに連れてきたのって…。
「不破さん、が、連れてきたんですか。」
「ん?あぁ、そうやよ。」
自分の傍を離れながら、あっけらかんとそう言い放った。
収まったはずの痛みが再び襲う。頭痛が酷い。何のために、なぜ彼が、どうして自分を。
言いたいことが山ほどあって、上手く声にならない。
「ど、うして?」
「どうして、かぁ…ムズいなー…あ。
社長、いっぱい友達おるやろ?遊んだり話したりする友達があんたにはおる。」
「とも、だち。」
「そう、友達。 俺あんたの1番がいーの。
綺麗で、強くて、勇敢で、頼れる、加賀美インダストリアル代表取締役の1番。」
なぜだか、無性に恐ろしくなった。
「社長は俺の1番になってくれへんやろ?
なら他の奴らを見れんようにするしかないやん、やで、ここに連れてきた。」
カチャカチャと金属音が聞こえる。
こちらに背を向けている彼の方を見ると、いくつかのバットの上に、何かの器具が置かれていた。
あれで何かするつもりなのか。
呼吸が浅くなる。なにかされるかもしれない、という不安感でいっぱいになってしまう。
ひゅ、とおかしな呼吸音を鳴らしていると、不破がこちらを振り返った。
「え、社長どうしたん!? もしかして見えてまった?あの注射器とか…。
大丈夫、あれ案外痛いとかないらしいで!」
「それ、で、何…する気…、?」
これでぇ?と注射器を片手にこちらに近づいてくる。ただひたすらに怖くて、後ろに下がろうとするが上手く力が入らない。
「そうやなぁ、社長が俺のことしか分からんくさせる…とか?
だってどうせ逃げようとするやん、社長。
俺のこと捨てるんやろ、後ろから刺して、こんなとこに置いとるで。」
顔を背けてそう話しているが、加賀美は察していた。
完全に正気を失っている。
何か、話そうとした。
しかし声にならず代わりに涙が零れる。
「ぁ、ひ…」
「泣かないでよぉ、俺が泣かせたみたいじゃん!」
嗚咽を漏らすに歩み寄り、しゃがんで頬を撫でる。その表情は恍惚としていて、瞳はどんより濁っていた。
「ねぇ社長、もう戻れないね。もう取り返しつかないね。」
加賀美は何か言葉を発した。しかし誰の耳にも聞こえない程の小さく、掠れた声だったので、言葉を発したらしかった、の方が正しい表現といえる。
「でも大丈夫、俺が社長を守ったるよ。
俺がちょっと言っただけで泣いてまう弱い子やもんな、弱い子は俺が絶対捨てたりせぇへん。
安心して社長、大丈夫。 」
「ふ、ぁさ」
気味悪いくらいの笑顔を貼り付けて、大丈夫と囁く。
「一緒に地獄に堕ちようか!」
加賀美に、救いはこなかった。
【できない】
「はよざいまーす…。」
「あ、ふわっち。おはよ。」
「アニキまた二日酔い…?」
「寝不足。」
「あぁ…。」
よく見ると目の下に隈ができている不破湊もやって来た。残るはあと1人。
「…社長遅くね?」
「えですよね?いつもなら一番に着いてるのに…。」
「タクシーとかで捕まってるんじゃない?交通量多いしここ。 」
「それはそう。」
なんて会話をしていた時だ。
突然スタジオの方から音が聞こえてきた。何かが落ちたような、倒れたような音。
「…えっ、怖。」
「誰かいる!?」
「収録まで数時間あるしないでしょ。まぁ完全にないとは言えないけど。」
「見に行こー!」
「え゛っアニキ!?!?!?」
ルンルンで不破が控え室から飛び出し、スタジオへ向かう。その後を甲斐田と剣持が追うと、はよ来いなどと乱雑な口調で罵倒される。
「お化けとかやったらおもろいな。」
「やめてくださいよマジで。」
「朝だしないない。」
「じゃあ開けるでー!」
甲斐田の制止も虚しくドアは開いてしまった。
そこに居たのは加賀美ハヤトだった。
収録までまだ時間があるというのになぜこんな所に…言いたいことはあったが飲み込んで、彼に駆け寄ろうとする。
「社長、どうしたの?そんなとこに座っとったら風邪ひくよ。控え室戻ろ、暖かいから」
「…き、い…」
不破の言葉が届いていないのか、未だ座ったままだ。そしてか細い声で何かを呟く。
「もう、できない…」
「え、」
「しゃ、ちょ?出来ないって、何を…?」
甲斐田が尋ねる。
「もう、無理です。何もできない。疲れた。辞めてしまいたいんです、こんな事。」
「辞めるってROF-MAOを?どうしたの社長、疲れてるの?」
「疲れとるんなら休んだ方が…」
「そういう事じゃないんだよ!!!!」
加賀美の金切り声が木霊し、全員が竦む。
普段滅多に声を荒らげることもない。
普段弱い姿を見せることもない。
そんな加賀美が今こうして弱っていて、3人も事態の収集がついていないのだ。
加賀美は髪の毛をぎゅっと掴んでうずくまり、消えそうな声で呟いた。
「ろふまおも、社長も、加賀美ハヤトも、
できない…。」
死にたい。
彼の本音らしかった。
【おかえり】
「ただいまー。」
玄関に自身の声が木霊する。
幾度待っても返事が聞こえず首を傾げるが、少し考えてハッとした。
「…はは、何しとるんやろ。」
同じ家に住んで、同じ食卓を囲っていた1人。一番先に帰ってきて、おかえりと笑顔で言ってくれた1人。
もういないと、いつまで経っても受け入れられない。
あいつは任務で死んだ。そう聞いたやろ。
心の中でそう唱える。
いくら経っても脳がそれを理解することはなく、玄関で力なくしゃがみ込んだ。
「実感湧かんて、…遊征…。」
弱々しいその声は、もうその彼に届かない。
しかし一人、三人目の同居人だけは、玄関の外で静かに、嗚咽を聞いていた。
コメント
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りりさん、第7話読み終わりました…。もう、胸がぎゅっとなるお話でしたね。特に、不破さんの「一緒に地獄に堕ちよう」という言葉が、愛ゆえの狂気としてあまりにも生々しくて、背筋が凍りました。それと、最後の「おかえり」のシーンで、戻らない日常を待つ切なさが一気に押し寄せてきて、涙が出そうになりました。どの世界線も、それぞれの“救いのなさ”が切実に伝わってきて、本当に心に残るお話です。