息抜きの反転中太
メイドパロ
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「…お願い…します」
よく晴れた午後の日、其奴はやってきた。
何処か気だるげにそう言って、数秒後に時差で頭をぺこりと下げる。
そのお辞儀もまた、やる気のなさが現れて、何故ここにいるのかと疑問になってしまう。
「では中也様、今日からこの子が護衛につきます。」
反対に、そう愛想良く言った女は長年勤めている料理長だ。小さい頃から料理を振る舞ってもらったりしているだけあって、この人がいるときは素が出せて楽だ。
「…却下。」
「中也様、この前の護衛は辞めてしまいましたよね。」
少し圧をかけた声でそう嗜められ、仕方なく 呼んでいた本を閉じて、ちらりと目線だけをその侍女にむける。
あたりを詮索するかのようにじぃっと部屋中を見ている、そんな気もするが無愛想な雰囲気のせいか、よそ見をしているだけのようにも思えた。
「ンじゃせめて男にしろよ。」
護衛といえば男。それこそ体格が良く筋肉が豊富なサングラスの。それがイメージだ。なのに目の前にいる、護衛と呼ばれた人物はひょろりと細く、長く伸びた後ろ髪が時々風に煽られて、茶髪がふわりと舞う。あんなに細い手首じゃ、小動物だって殺せやしないだろう。
「しかしこの方はきちんと募集要項にあっておられますよ。」
「ハッ、此奴がか?」
自分のことを話しているのに相変わらずよそ見をしている。マイペースなようにも見えてイラッとした。ジッと睨むと、ゆっくりと視線があった。
「あ~…大丈夫ですよ、ぼ…私こう見えて強いのです…?」
「ンだよ最後の疑問符…」
自分で強いと言っておいて首をちょこんと傾げる。なにがしたいのだか。
「嗚呼、そろそろ私は料理の支度がありますので、あとはよろしくお願いします。」
そう言って料理長が綺麗なお辞儀を向けた。おう、と俺が返事をする間も、彼奴は虚空をじっと見つめているだけだった。
「…あの、」
「別になンもしなくていいから。どうせ外になンて出れねェし。護衛もいらねェよ。」
「名前、名乗らなくてもいいのですか。」
先ほどは重たげだった瞼がきちんと開いて、しっかりと此方を見つめている。打って変わった雰囲気に少し惑わされた。
「…じゃあ名乗れよ」
はやく出ていってほしい。ゆっくり本が読みたい。そう思いながらも名乗るよう促す。
「太宰です」
返ってきたのはこれだけ。先ほどよりも呆気に取られた。
「…それだけか?」
「はい」
手前が名乗ったのは苗字だが?
そんなツッコミを心の中でかます。
「なんでも好きに呼んでください」
太宰は目を細めてそう言った。近くで見てみれば、相当綺麗な顔立ちだ。
「ンじゃ太宰で」
女性だからもっと敬意をつけたいが、此奴はあくまで護衛。別段丁寧に接する必要もない。それに、どうせ自分が傷つけてしまうのかもしれないのだから。
「手前も何が好きでこンな仕事引き受けンだかな。」
ベッドに腰掛け直して、先ほど閉じた詩集を開き直す。
どうせ返答はないだろうと独り言で言ったつもりだったが、本当に来ないとは。
「あンな…手前愛想とかねェのかよ?」
流石に初対面の人にそんなことを言う気はハナからなかったが、どうにも気になる。
「…いるなら、やります」
太宰は小さく、何処か嫌そうにそう言って、ニコリと微笑んだ。
そして元気そうに声を弾ませて問う。
「これでいいです?」
「別に求めてるわけじゃねェんだわ。」
手前のスマイルなんていらねェし、と付け加えるも少し可愛いと思ってしまった。
そうですか、と声のトーンを落として(正確には戻して)口角がスッと元に戻る。
これが通常なのだと知ってはいたが、悲しませてしまったようで居心地が悪い。
「…何故、前の護衛の人はいなくなったのですか」
謝罪を口にしようとした時、太宰が遮るかのようにそう言った。
少し、固まった。
「…中也様?」
名前を呼ばれて顔を覗き込まれ、ハッと我に返る。1番嫌な質問だと思ったが、答えておくべきだろう。そう判断した。
「…死んだんだよ」
「死んだ、」
太宰は、俺が言った言葉をそのまま繰り返す。
「警告しとくが、手前、この仕事辞めた方がいいぜ」
「…死ぬからですか?」
「…まァ、そう、だな。」
俺の護衛は二年ごとに毎回変わる。そう言った交代制な訳ではなくて、二年の間に、必ず護衛が死ぬのだ。死なずとも、精神が壊れる。使い物にならなくなったらクビにして、新しいのを雇う。
俺の両親はお前が生きててよかった、と言うけれどそんなことは思っていない。俺に興味すらもないのだ。そして、放任主義だと言うのはどうでもいい。
ただ、死んだ護衛たちは全員、室内で死んでいた。
誰も入れない屋敷の中で、外傷はなく、骨や臓器だけがぐしゃぐしゃに潰されていた。
「私は辞めませんよ」
「…死ぬのにか?」
「それより大事なものがありますので」
「…金?」
キッパリと言う姿がかっこいいと思った。そしてその言葉でなんとなくわかった。俺が、妙に太宰が気になるわけ。
「違いますよ」
「…はぁ?」
此奴はどこか、俺と似ているのだ。
「…内緒です」
頬を緩めて微かに太宰が笑った。数時間前は表情筋を一歳動かなさなかった此奴にも、こんな顔ができるのかと少し驚いた。
「失礼なこと考えました?」
「全然。」
太宰(18)
幹部になるために、仕方なく女装して中原家に潜入。ウイッグ、カラコンで容姿を変えているのは個人情報がバレないように、とのこと。どちらかといえば隠しているかのようにも見える。
中也(17)
捏造で一個下。良いとこのお坊ちゃんで、両親は放任主義。家にはほとんどいない。心配、とのことでつけられた護衛だが、中也は監視だとしか思っていない。しかしいつからか、護衛の人たちが不自然な死を遂げるようになる。少なくとも心当たりはあるようだ。
オチ全然考えてないよ。
1000♡言ったら今日中に二話目出します(行かなかったら次の日とかに出すので指をお疲れSummerしなくていいですよん)
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