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・本人様関係ありません
・アンチやめてください
・BLです(lr愛されです)
・口調注意⚠️
・ギャングの名前が思いつかなくてリコリスの名前借りてますが、MAD town関係ないです。もし気分が害された方がいたらお教え願います🙇♂️
〜設定などは1話をご参照ください〜
lr( )
kn『』
ru[]
ru視点
——あ、決まった。
その一言で分かった。
叶さんの中で、もう結論は出ている。
車内は静かだった。
エンジン音だけがやけに大きく聞こえる。
警察署の前。
ガラス越しに見えるローレンさんは、仲間に囲まれて笑っていた。
あんな顔、俺たちの前では見せない。
胸の奥が、少しだけざわつく。
(……やっぱ、警察の人間なんだよな)
『ねぇ、こや』
叶さんの声は、驚くほど穏やかだった。
だからこそ、背中が冷える。
『ローレンさぁ』
フロントガラス越しに、指先でなぞるように視線を送る。
『戻る場所があるって思い出しちゃったんだよね』
[……ですね]
『じゃあさ』
叶さんは、少しだけ首を傾けて笑った。
『また、分からせてあげないと』
——ああ、そう来るか。
[正面からやります?]
『ううん』
即答だった。
『それはつまんないでしょ』
叶さんはハンドルに指を置いたまま、淡々と言う。
『ローレンはね』
『正義が折れる瞬間が一番綺麗なんだよ』
……ほんと、怖い人だ。
[じゃあ、どうやって?]
『警察の中から壊す』
その一言で、全て理解した。
『また疑わせて』
『また孤立させて』
『また、「俺がいなきゃダメ」って状況を作る』
ローレンさんは、強い。
でも——強いからこそ、全部を背負ってしまう。
『優しくしなくていいよね?』
さっきよりも、少しだけ低い声。
[……良いと思いますよ]
俺は、乾いた笑いをこぼした。
[だって、優しくしたら]
[また戻ってきちゃうでしょうから]
叶さんは、満足そうに目を細めた。
『そうそう』
『今回はさ——』
『ちゃんと選ばせよう』
警察か。
俺たちか。
その選択が、
どれだけ残酷か分かっていながら。
俺は、何も止めなかった。
——ロレさん。
ごめんなさい。
でも、
壊れるあなたを見るのが
少しだけ楽しみだと思ってしまったんです。
lr視点
叶さんと小柳のもとを抜け出して、数日が経った。
街は、驚くほど静かだった。
以前は一日に二、三件は当たり前のように起きていた大型犯罪。
それが今では、小さな窃盗やトラブルが一件あるかどうか。
無線も静かで、署内に漂っていたあの張り詰めた空気も薄れている。
警察としては、これ以上ないほど喜ばしい状況だ。
市民も落ち着きを取り戻し、夜の街を歩く人の姿も増えていた。
——それなのに。
(……おかしい)
ローレンの胸に、拭えない違和感が残っていた。
平和すぎる。
まるで、誰かが意図的に「犯罪を止めている」かのような静けさ。
ギャングたちは消えたわけじゃない。
逃げた? 諦めた?
——いや、そんな連中じゃない。
(嵐の前、だな……)
無線機を手に取り、ノイズ混じりの音を聞きながらローレンは目を細めた。
赤い車。
優しい声。
あの、歪んだ笑顔。
頭の片隅に、叶の声が蘇る。
『ローレンは僕を殺せない。』
静かな街の中で、ローレンだけが気づいていた。
これは平和じゃない。
何かが始まる前の、沈黙だ。
(ロレさん!!
しわ、よってますよ?)
ふいにそう言われて、ローレンは眉間に手をやった。
「……無意識だった」
こいつは俺の後輩だ。
一見、のんびりしていて何も考えていなさそうに見える。
けれど、視線はいつも周囲をよく見ていて、空気の変化にも人の嘘にもやけに敏感だ。
――そして何より。
俺の汚職疑惑を、最後まで否定し続けてくれたやつでもある。
(はぁ〜……
やっぱロレさんがいると安心するなぁ)
そう言って、後輩は遠慮なくローレンの肩に頭を乗せ、目を閉じた。
警察署の騒がしさの中で、そこだけ時間が緩んだような感覚。
「……一応、ここ職場な?」
(えへへ、知ってますよ〜)
そのまま動く気配もない。
ローレンは小さく息を吐き、何も言わずに天井を見上げた。
ガタッ。
椅子を引く音を立てて立ち上がると、後輩が驚いたように目を開ける。
(うわぁ、急になんですか?)
「署長に呼ばれた」
(……え)
一瞬だけ、後輩の表情が曇ったのをローレンは見逃さなかった。
「すぐ戻る。
それまで、ここで大人しくしてろ」
(はいはい。
……無理しないでくださいね、ロレさん)
その声は、冗談めいていながら妙に真剣だった。
ローレンは背中越しに、軽く手を振る。
「大丈夫だよ」
――本当にそう言い切れたかどうかは、自分でも分からなかった。
署長室へ続く廊下は、やけに長く感じる。
静まり返った足音の中で、胸の奥に小さな違和感が渦を巻いていた。
(……何が起きてる)
ローレンは、その答えを知らないまま、重たい扉の前に立った。
コン、コン、コン。
【入れ】
「失礼します。
……お呼びでしたでしょうか?」
署長室に足を踏み入れると、そこには新しい署長の姿があった。
かつて“長期休暇”と称して姿を消していた前任者とは違う。
この街に、本気で向き合おうとしている人間の目をしていた。
【ローレン・イロアス】
【今の状況を、どう見ている?】
室内に張り詰めた空気。
試されている、そう直感した。
ローレンは一度だけ息を整え、嘘も飾りもなく口を開く。
「……静かすぎます」
「犯罪が減ったこと自体は喜ばしい。
ですが、この静けさは不自然です」
一瞬、間を置いて。
「嵐の前の、静けさみたいで……
正直、嫌な予感がします」
【……ふ、そうか】
署長は目を細め、静かに微笑んだ。
それは上司としてではなく、どこか父親のような、柔らかい表情だった。
【リコリスに潜入している署員から報告が入っている】
【近いうちに、かなり大きな犯罪を起こす計画を立てているらしい】
ローレンは、息を呑む。
――やっぱり、そうだ。
胸の奥に沈んでいた違和感が、確信へと変わる。
【……そしてな】
署長は、少しだけ声を落とした。
【逃げろ、ローレン】
「……え?」
思考が一瞬、止まった。
逃げろ――そんな言葉が、署長の口から出るとは思っていなかった。
【あいつらの目的は、お前だ】
【それは、署員全員が理解している】
机に置かれた手が、きゅっと握られる。
【今まで、お前は何度もこの街を救ってきた】
【多くの署員を、市民を、守ってきた】
【だからこそ、ここで逃げたとしても――誰もお前を責めない】
部屋は静まり返っていた。
だが、ローレンの目にはもう迷いはなかった。
その目を見て、署長は小さく息を吐き、苦笑した。
【……やれやれ】
【やはり、そういう目をすると思っていた】
立ち上がり、ゆっくりとローレンの前に立つ。
【無理はするな】
【私たちは、お前を“道具”だとは思っていない】
【大切な仲間だ】
その言葉が、胸に染み込んだ。
気づけば、心の奥がじんわりと温かくなっていた。
ローレンは、背筋を伸ばし、はっきりと言う。
「これは……俺の正義です」
「逃げません。
最後まで、向き合います」
署長は何も言わず、ただ静かに頷いた。
ローレンは一礼し、署長室を後にする。
扉が閉まる音が、やけに重く響いた。
終わりです!おつかれ様でした!
結構長くなっちゃいました🙏
次が最終話です!