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⚠︎年齢指定作品です。未成年の方は読まないでください⚠︎
前回に引き続きシャン🌩️×与太🤝です。
いつにも増して手癖全開なので少し読みづらいかもしれません。 15000字ありますのでお時間あるときにどうぞ。
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いつの間にやら雨はすっかりやんでいて、じっとりとした冷たい空気が肌の上を滑っていく。それでもなお薄れぬ腹の内の熱に息を漏らし、噺家はついに根を上げた。
「──は、ふぅ……ッ゛♡♡、……も、休ませてよぉ……♡」
「ああ……悪い、疲れちまったか。でも、もう少しで……」
「そ、じゃなくて──あ゛ッ、や♡ それっ♡、むりぃ゛……っ♡♡」
抗議の言葉すら遮られた噺家は後孔に埋まった三本の指を開いてばらばらに動かされ、歯を食いしばって感じ入る。ぐぷ、と品のない音が自身の下半身から聞こえてきて、それに耳を塞ごうにも手足はとうに言うことを聞かなくなっていた。
あれから、淡いものも含めるともう三回は絶頂させられている。飴屋はその度噺家が落ち着くまで律儀に待ち、痙攣が収まった頃にまた筋肉を拡げる作業に戻る。それは機械的なようにも思えるが、手つきはどこまでも繊細で丁寧で、噺家の苦痛を少しでも取り除きたいというのが伝わってきてしまうのが辛かった。
薄い布団の上でくったりと伸びていた噺家を片手で抱き起こし、飴屋はようやく濡れそぼったそこから指を引き抜く。さすが持ちの良いお高いジェルはこの長丁場でも熱を冷ますことなく、真っ赤に腫れた縁の周りをてらてらと淫猥に彩っていた。
「はーっ、はーっ……♡ ……っね、ほんとに……こっちの体力、もたないんだけど……っ♡」
「うん、でも付き合ってもらうな?」
「横暴だぁ……」
情けなく眉根を寄せて泣き言をいう噺家に、飴屋は顎を撫でながら「よく頑張ったなあ」なんてまるで子供をあやすみたいに励ましてやる。子供扱い、なんて呼ぶのも憚られる。これはもはや野良猫相手へのそれに近しい。
飴屋の方もいよいよ準備を始めるらしく、毛布のように大きな羽織りと首飾りを乱雑に放り投げる。そうして薄着になるとより一層鍛え上げられた肉体が浮き彫りになり、行燈の柔らかな光を浴びていてなおくっきりと影を落としていた。
「身体冷やしてねえか? 寒かったら上着貸すぜ」
「何なのその優しさ……大丈夫だよ、ここ一応僕んちだし、寒かったら羽織るものくらいあるから」
飴屋は本当に心底心配した様子で、噺家の細い肩を分厚い手で包み込む。それがあんまり熱く汗ばんでいるものだから、噺家はどうしてこの男はこの気候で汗なんかかけるんだと不思議に思った。
次いで飴屋は噺家の腹の上を手のひらでひたりと覆い、冷えていないかを確認する。──それは別に構わないのだが、今の今までねちゃねちゃ弄られていた内臓を薄い皮膚で隔っただけの上に乗せられれば、妙な気分にさせられてしまうのは自然の摂理だ。
「……なんか、腹ん中ひくひくしてんだけど」
「ねぇ、もう、いちいち言わなくていいから……」
「けっこう感じやすいんだな、お前。……じゃあ、そろそろ挿れてい?」
腹に手を乗せたままゆっくりとそれを下降していき、やがて恥骨のあたりでぴたりと止める。
腰の裏からうなじにかけて、ぞわ、と甘い痺れが走った。
「い、いきなり? もう挿れんの……?」
「もっと解した方が良けりゃそうするけど?」
「あっごめんなさいやっぱりいいです」
「そんな怖がんなって……お前が本気で嫌がったり痛がったりしたら止めるから。……ほら、力抜け」
せっかくあれだけ時間をかけて拡張したのだから、こんなところで萎縮されてしまっては困る。飴屋は噺家の後孔の縁をつうっと指の背でなぞり、くすぐるようにして緊張を解いてやる。先の感覚がまだ残っているらしく、それだけで噺家は喘鳴にも似た声を漏らした。
再び呼び起こした快楽が薄れてしまわぬうちに、と飴屋は自身のそれにスキンを被せ、噺家に使ったのと同じジェルを上から雑に塗りたくる。自分を相手にしているときの愛着も慈悲もへったくれもない、まるで自慰行為でもするような事務的な動作に噺家は言いようのない高揚を覚えた。
そうこうしているうちに飴屋の剛直は物欲しげにひくつく孔を捉え、ぴとりと先端が当てがわれる。
「ん、ッぁ゛……はい、ってくる……っ♡ はァっ゛、あ、ぁ゛……っ♡♡ 〜〜〜ッおく、きたぁっ……♡♡♡」
「ッは、キツ……大丈夫か? 痛くねえ……?」
「──っあ♡? ……ぅ、ん……♡♡」
よほど気を張っているのだろう、こちらの様子を伺いながら額に汗を浮かべる飴屋に、噺家は生返事で答えることしかできない。
きつい入り口を超え、弱点であるしこりを容赦なく押し潰し、最奥までみっちり埋まるほど馬鹿みたいな質量を詰め込まれ──噺家の頭の中はもはや、快楽と多幸感でいっぱいになっていた。実際痛みが全く無いわけではないが、幸せホルモンやら何やらがどばどば分泌された頭では、許容量を超えた内臓が悲鳴を上げる感覚すらも快感として拾ってしまう。
天井をぼうっと見上げたまま軽い絶頂を繰り返す噺家が心配になった飴屋は、一度そのままの体勢で慣らしてやることにした。
「……なあ、ほんとに大丈夫? なんかすげえうねってんだけど……」
「ら゛ぃ、じょうぶ……っ♡ っい゛、イってるだけ、だから……♡♡」
噺家は早々に気を遣ったらしく、首から上だけを仰け反らせて蕩けた声を上げた。そして、それを覗き込んだ飴屋はさっと血相を変える。
「──えッ、お前なんで泣いてんの……!?」
「あ……?♡ ……あぁ、俺、イくと涙とまんなくなる体質で……」
「……いやまあ、そういう奴もいたにはいたけどさ。俺はどうしたらいい? もうちょいこのままにしとくか?」
「、ん……じゃあ、……抱きしめさせてよ。ほら、その方が……落ち着く、から」
甘えるように差し出された腕の中に、飴屋は一瞬の逡巡の後に入り込む。本当にこんなのでいいのかと思わなくもないが、本人がやれと言うのだから仕方ない。
余韻が抜けきらないのか、未だ震えの残る細腕は飴屋の巨躯を嬉しそうに迎えて抱き込んだ。隙間風に晒されていた素肌はひんやりと冷たく、それを温めようとさすってやれば「あっ♡」だの「ん……♡」だのと耳に毒な甘ったるい嬌声が上がる。
今まで誰からも受け入れられなかった自身のものを気に入ってくれたのなら結構だが、中途半端に焦らされている飴屋としてはまるで『待て』をされた犬のような気分だった。
「っなあ……これ、いつまでやんの?」
「ん、ぁ──ごめん、ね……?♡ ……つぎは、きみが好きに動いていいからさ……」
噺家ははっと我に返って腕をほどき、手の甲で雑に涙を拭った。……なんというか、演技されていたときは気付かなかったが、上品な顔立ちのわりに仕草がどこかがさつというか、男っぽいというか。
長い睫毛の隙間に残った涙を拭いてやり、飴屋はそのまま噺家の顔の近くへと手をついた。煎餅布団の偏った綿の感触が、手のひらから前腕へと伝わっていく。
「──だから、お前が気持ちよくねーと嫌なんだって」
「だって、こうなったらもう何されても気持ちいいし……? おんなじだよ、優しくされてもひどくされても一緒」
「……それ、誰にでも言ってるんじゃねえだろうな」
「さてね。でも、事実だよ」
飴屋は妖艶に微笑む噺家の頬を撫で、そのぶどう色の瞳を覗き込む。そうしてじっと見つめ合ったところで、お互いの本心が伝わるだなんて思っちゃいないが。
「ん……じゃあ、慣れるまでゆっくり動くな。痛かったら言えよ」
「ふふ、はぁい」
「あと悦かったときも言え」
「……はいはい」
手は噺家の横についたまま、飴屋はぐっと腰に力を入れた。きついにはきついが、さすが多くの男を受け入れているだけあって噺家のなかはふわふわに柔らかく、また快感を拾うたびに奥へ奥へと誘うように器用に収縮する。試しにほんの少し腰を引いてみただけで、特に締め付けの強い入り口が「離れないで♡」と言わんばかりに吸い付いてきた。
この甘美を知っているのが自分だけでないのは気に食わないが、それも今は飲み込んでおこう、と飴屋は思った。目の前に極上の膳を並べ立てられておいて、余所見をしながら食うだなんて男が廃る。
「ん、っう゛……♡ ぁ゛♡、おなか、めく、れちゃ……っ♡」
「んね。与太郎んなか、すげー綺麗な色してる。……良い鮮度だな」
「ッ、ひと抱いてるってときに、んな物騒なこと言うんじゃないよ……生きてんだから当たり前だろ」
「はは、冗談だっつの。……でも与太郎は特別だぜ。お前が死んだって、他の奴には血の一滴たりとも渡す気ねえから。安心しろよ、な?」
「……それはそれで、問題なんだけど……ッあ、まって、まって……っ゛♡」
噺家のほとんど悲鳴のような制止に、飴屋は渋々腰を止める。
「そこ、で止めないで……っ♡♡ 気持ちいいとこ、だから……♡」
「強くしてくれって?」
「あっ!?♡ ね、ほんとにだめ♡、だめなんだって──あ゛、や゛め♡、ごりごりすんな……っ゛!♡♡ あ゛ァぁ、むり、むり゛っ……♡♡」
分厚い亀頭がちょうどぴったり埋まるそこを執拗に捏ねてやれば、放り出された脚がびくん、と大袈裟に跳ね上がった。どうやら絶頂がもうすぐ目の前まで迫ってきているらしく、それを耐えようと噺家は顔を真っ赤にして唇を噛みしめる。
いつ見てもおどけたような態度を崩さない噺家が余裕をなくして悶える姿に、飴屋は自分でも異常だと感じるほどに興奮してしまっていた。薄く赤の滲んだ唇に吸い寄せられ、吐息のかかる距離まで身を屈める。
「んな噛んだら痛いだろ? 俺、お前の血は見たくねえからさ……」
「や、っめ……ぁ、だめ♡ くち、は──、」
「なに、キスしちゃだめなの?」
「……きみの、ことは……特別だから、だめ……っ♡」
子供が駄々をこねるようにかぶりを振る様子は、口先だけの言い訳をしているようには思えなかった。
きっと、接吻は心に決めた相手とだけ、なんてわがままが言えるような立場ではなかったのだろう。だからこそ、本当に特別な相手にだけはあえて唇を許さないことにしていたり──なんて都合のいい方に考えてしまうのは、惚れた欲目というやつだろうか。
こんなところで無理強いをして怖がらせても嫌なので、飴屋はそれ以上後追いしないことにした。代わりに噺家の口元に手を持っていき、わずかに開いた隙間へと親指をねじ込んだ。
「ふぇ……? ……ぁに、これ」
「唇噛むの、キスでやめさせらんないならこうするしかなくない? ……はは、こんなとんがった歯で噛んだら血くらい出るわ」
「え、ひょっと……んぅ゛っ!?♡」
抗議しようと出かかった言葉は、飴屋が再び『弱点』に先端を突き入れたことによって霧散した。飴屋は噺家の細い顎を折ってしまわぬよう細心の注意を払いながら、されど振り解くこともできないような力加減で固定する。
「うわ、こりっこりじゃん……分かりやすいねえ、お前の弱いとこ。こんなのも分かんねえ奴いんだ?」
「んッ、ひ……っ♡ っそぇ゛、はぁ♡ きみの、大きさがおかひ、だけで……!♡」
「ふーん? じゃあ『アニサン』って奴らはみんな粗末なモン持ってんだな」
「っそりゃ、きみに比べたら……っあ゛!?♡、まっひぇ゛っ♡♡ ぁ゛♡、お゛♡♡ やら゛♡ らぇ゛……ッ♡♡」
充血しきってぱんぱんに膨らんだ前立腺を力強くすりおろされて、噺家はいっぺんに余裕がなくなった。まだ強い快感に慣れていない身体がビリビリと痺れ、頭が追いつかないうちに意味を成さない母音だけが口から延々と吐き出される。
噺家はこのとき初めて、あの愛撫とも呼べないような半端な刺激によって感度を格段に上げられていたことに気付いた。そういうことかと合点がいった瞬間、突如弾けた絶頂によって飴屋の指を思い切り噛み締めてしまう。
「っひゅッ……!?♡♡ ぁ゛、う゛ゥぅ〜〜……ッ゛っ♡♡♡」
「はははっ、痛え痛え! お前でも俺の骨くらい折れんじゃね?」
「ッぁ♡、……っご、ごめ──んンぅ゛……っ!?♡♡」
歯に食い込んだ骨が悲鳴を上げ、咄嗟に謝罪が出かけた矢先にまたしても散らばされてしまった。
顎を固定されている今では仰け反ったり身を丸めたりすることもできず、全身を激しく痙攣させながら涎を垂れ流しにして、ぞっとするような質量の快感を余すところなく享受することしかできない。
「うはは、口のまわりべちょべちょじゃねーか。かぁわい……」
「ッぁ♡ ら゛って、そぇ゛♡、はぁ……っ♡♡」
「……唇噛むの、やめるってんなら取ってやるけど?」
「やぇ゛るっ♡ くち、かまにゃ゛、からぁ゛……っ♡♡ ッは、ぁ、あ゛……っ♡♡♡」
ただでさえ呼吸も浅くなるような快楽を与えられている最中に、溢れる唾液を飲み込むこともできず息も絶え絶えな噺家は必死で首を振る。普段は恐るべき正確さで言葉を編み上げる噺家の舌は、今や幼児のそれと等しいほどに動きが鈍ってしまっていた。
「いいこ」と遊ぶような声色とともにふやけた指が引き抜かれ、その拍子に粘度の低い唾液がとろりとこぼれる。
「んじゃ、声我慢するなよ」
「っでも、壁……」
「いいじゃねえか。聞かせとけよ、お前が本当に気持ちいいときどんな声で啼くのか……へったくそな『アニサン』どもにさ」
飴屋は愉悦にまみれた声で笑い、濡れたままの親指を噺家の首筋へと滑らせた。
「ッひ……ぁ、また……っ♡」
「んは、もうこれが気持ちいいの知っちまったもんな? ほら……首と、鎖骨と……」
ひんやりと湿って、ざらついた感触が粟立った肌の上を伝う。そのわずかな刺激は下腹部の震えと共鳴するように広がっていき、ぞわりと背筋が震えるのすら気持ちよくて仕方ない。
そうして鳥肌を浮かべる噺家に喉を鳴らした飴屋は、慎ましやかに存在を主張するふたつの突起に気がついた。
「……そういや、与太郎はここ、悦くねえの?」
「、なに……胸? ……触ってみたら分かるでしょ」
「あ、いいの? じゃあ……」
飴屋は一秒ほど考えると、噺家の洗濯板のような胸に手のひらを這わせ、そのまま胸全体をゆっくりと撫で上げた。
余韻の抜けきらない身体にぞわ、と言いようのない感覚が這い上がってきたところで、より硬く芯を持った先端を指先でそっとなぞられる。潰されたわけでも引っ掻かれたわけでもないというのに、たったそれだけで噺家の喉からはひどく甘い声が絞り出された。
「んっ、ぁ……♡」
「……すげー敏感じゃん」
「ぁー……ふふ、バレちゃったなぁ……?♡」
行燈の灯りに瞳を潤ませながらにやりと笑う噺家は、いっそ泣かせてしまいたくなるほど煽情的に見えた。なるほど、これが二つ目の『弱点』か。
自らの内に点ってしまった嗜虐心のまま、飴屋は再び先端の尖りに指の腹を当てる。
「っあ、ぁ……んっ♡、……は、それ、好き……♡♡」
「これ……先っぽすりすりするやつ? ……こっちは?」
「ふ、ァ゛……っ♡ それ……くりくり、されんのも、好き♡ んは、きもちぃ……♡♡」
「ほー……与太郎お前、ここ弄られんの好きなんだ? さっきと反応全然違え」
「んっ♡、ぅん……本番がどんだけ下手でも、ここは……っふ♡ 適当にでも、触ってれば……それなりに、できるもんだからさ……はぁ、っ♡」
「きみは特別上手いけどね」と気遣いなんだかよく分からないことを付け加えて、噺家はふるりと背をしならせた。
どうやら胸の刺激だけで軽く絶頂したらしい。もうずっと頭をもたげたままの噺家のものから、淡く白濁した先走りがとぷりと吐き出される。
──本番が、どれだけ下手でも。飴屋としてはやはりどうしてもそのひと言が引っかかってしまう。まぶたを閉じてうっとりと感じ入る噺家は、どこかその刺激に慣れているようにも思えた。
噺家がいつも『兄さん』方を相手するとき、質の悪い潤滑剤と解しの足りない前戯で雑に扱われ、痛みと虚しさを紛らわすため見出した快が『これ』なのだとしたら。飴屋はそれを咎められも、揶揄いもできまい。
飴屋は向こう側に連なった壁の方をひと睨みして、すぐに噺家へと視線を戻す。もし今もこの壁の向こうにそいつらがいて、本当にこの声が聞こえているのなら──教えてやるべきだろう。この男が本来とばりの内で聞かせてくれる声が、どんなに愛らしいものなのかを。
先ほどとは打って変わってとろりと恍惚を浮かべている噺家の目尻に唇を落としたあと、もっと触ってくれと言わんばかりに震えるそこからは少しずれた位置に指を置いた。
「、? ……なに? 焦らしてんの……?」
「んーん、甘やかしてんの」
「どういう……、っふぁ♡ あ、……?♡」
噺家が不思議そうに視線を下ろした途端、ぷっくり膨らんだ乳輪の周りを指の先でくるりと囲われる。乾ききっていない唾液がそこに薄くまぶされて、窓も開いていない部屋の空気を過敏に感じ取ってしまう。
「……こういう触り方、されたことねえ?」
「ない、よ……兄さん方はそういうスキルとか無いんだって。……何回も言わせないで、虚しくなるだろ」
「んふ、じゃあハマっちまうかもな……?」
言葉尻に笑みを含ませる飴屋に、噺家はますます疑問符を浮かべた。たった今濡らされたそこは冷えた空気が横切る毎に硬度を増し、またそのわずかな風さえ感じ取れるほど敏感になっていた。
──確かに感度は上がったが、勿体ぶったわりには微妙な違いだ。これくらいならさっさと触ってもらえた方がいい。
噺家がそんなふうに考えていることなど露知らぬ飴屋は、そうして限界まで張り詰めた先端を下からくに、とかるく倒れるくらいの強さで触れ、そのまま指を横へと引いた。
かくん、と噺家の身体から力が抜ける。
「ッあ゛……♡♡ は……?、ま、まって♡ なんで──ぁ、あっ♡、あ゛……っ♡♡?」
「お、やっぱ与太郎も『下』が弱いか。なんでか分かんねえけどさ、この辺は上より下っかわのほうが神経が集中してるらしいんだよ。だから……ほら、」
「ひぁ、ぁ゛♡、あ゛〜〜っ……♡♡♡」
下半身のそれともまた違う甘く柔らかな快感に、噺家はすっかり酔いしれてしまった。平素でさえ何をされても快感を拾ってしまう場所なのに、まさかこんな可能性を秘めていただなんて知らなかった。
よほどお気に召したのだろう。じぃんと染み込むような絶頂をしながら、噺家は口角すらゆるく上げている。それを満足そうに眺めつつ飴屋は指を動かし続けた。
「っは♡ や、っば……♡♡ ここで、こんなに感じたことない、のに……はぁっ♡♡」
「、な。いつもより気持ちいいだろ……?」
「っうん♡、きもち……──ぃ゛っ♡♡!?、ぁ、だめ♡ 今、うごいちゃ……っ!♡♡」
胸に気を取られて油断しきっていた下のぬかるみを、飴屋は突然貫くようにして腰を突き出した。多幸感でいっぱいになっていた脳内にきつい電流が走り、噺家はぴんと脚を張って絶頂した。
「は、ッ……痙攣やべえね、」
「〜〜〜ッむり♡♡♡ き、もち゛……♡♡、……ぁ、だめ♡、今イってる、から……ッまって♡♡」
「無茶言うなよ……さっきから腹んなかきゅんきゅん締め付けて、ぐちゃぐちゃでどろっどろのかわい〜顔と声見せつけられてさあ……我慢できるわけないだろ」
「っ、が、まん……?♡ きみ、我慢してたの……?」
「当たり前だろ。こんなんでもドーテーだぜ、俺」
そう軽く言って退ける飴屋は確かに余裕のない様子で、額に汗を浮かべながら今すぐにでも腰を振りたくってしまいたいのを必死で堪えているようだった。彼の発言から察するにこんなにも凄まじい凶器を持っていても、女を本気で啼かせるくらいのテクニックがあっても、今まで肝心の受け入れてくれる相手がいなかったのだ。
──そうか、じゃあ、こいつの始めての相手は僕なのか。噺家は力の入らない四肢の代わりに下を思い切り締め上げて、「ぐぅッ……♡」と低く唸る飴屋を嬉しそうに見下ろした。
「……はは、は♡、こんな色男、の……はじめて、もらっちゃったんだ……?♡ ……いいよ、我慢しなくて。好きなだけ、僕のなかで気持ちよくなっちゃえよ……♡」
「う……急に経験豊富ぶるなよ、俺にめちゃくちゃイかされてるくせに」
「いいから……ほら♡」
「うぉ……っ!? ちょ、待てって……!」
飴屋の制止など聞く耳も持たず、噺家は腰を上向きにしてぐいぐい押し付ける。痙攣の収まりきっていないそこはぐねぐねと別の生き物のようにうねって、飴屋の手で苛まれることを望んでいるとさえ思わせた。
きっと、それに従ってしまえば天国もかくやという気分を味わうことができるのだろう。
だが、それでは意味がない。飴屋は歯を食いしばって衝動に耐えつつ、手負いの獣じみた荒い息を吐き出した。
「なあ。あんま、煽んないでくんね……? ……じゃねえと、手加減できなくなんだけど」
「は、手加減なんて今更──んぁ゛っ♡、だから……っ、同時はだめ、だって……♡」
飴屋の指の下で存在を主張し続けていた乳首をぐりっ♡ と押しつぶされ、今度は噺家の声に余裕がなくなる。「この野郎」と飴屋を睨む噺家だが、飴屋は飴屋で下半身を持っていかれそうなのを堪えるので必死だった。
要は両者ともに余裕などなく、一見不毛な主導権の握り合いだが、本人たちはいたって真剣だ。
「ん〜? おかしいなあ、好きに動けって言ったの誰だっけ?」
「僕、だけどぉ……♡ ……ち、違うじゃん、きみが、気持ちよくなるように動いたらって話じゃん……!」
「でも俺、最初っからずっとお前が気持ちいいかどうかが優先って言ってんじゃん?」
「嫌がることはしないって言っただろ!」
「嫌がってるように見えねえもん」
飴屋が揶揄うように胸の飾りをきゅっとつまんでやれば、噺家は抵抗する間もなく「あっ♡」と甘ったるい声を上げた。飴屋はそれで口角を釣り上げ、噺家は眉間に皺を寄せる。
「な、ほんとに嫌なの? 教えてくれよ与太郎。気持ちいいの嫌? イくの嫌い?」
「だ、からさぁ……っ、……僕ばっかり気持ちよくなってちゃ、意味ないだろ」
「あるよ? 意味。俺今日、本気でお前を堕としに来てんだもん」
「堕とし……って、だったら一層、きみも気持ちよくなってくれなきゃ嫌だ」
「……なんで?」
「そりゃ、きみ──……当たり前だろ、フェアじゃないからだよ」
噺家は一瞬間を置いて、はぐらかすようにそっぽを向いた。釈然としないが、このままでは心を許してはくれなさそうなので仕方なく噺家の言うことを聞いてやることにする。
斜め上を見て余計なことを考えていそうな噺家の顎を掬って集中させ、しょうがねえな、と体勢を整え直した飴屋は、そこではたりと気付いてしまった。
「……あのさ、与太郎」
「っもう、今度はなに……?」
「俺も気持ちよくなんねえとだめってことはさ──これ、全部挿れていいの?」
「……は?」
ぽかんと硬直する噺家に、飴屋は「見てろ」と視線を下へ誘導した。
触れるだけで折れてしまいそうな腰に手を添えて、再度ゆっくりと腰を沈めていく。一度受け入れてしまえば先ほどのような強烈な抵抗感はなく、じわじわと緩やかな快感が背筋をさかのぼってくる。
そして最奥の壁に当たり、飴屋はぴたりと腰を止めた。頭をもたげて覗いて見れば、なるほど、飴屋のものはまだ根本まで埋まってはいなかった。
──いや、なるほどじゃないが。
「は……いや、むりでしょ。だってここ、行き止まり、で……」
「でもさ、内臓なんだからもっと奥には行けるよな? ……ここ、入ると痛いの?」
「いや……痛い、っていうか……♡」
噺家は結合部に釘付けになったまま、確かに自分の鼓動が早まっていくのを感じた。熱を帯びてじくじくと炙るような些細な振動のせいで、飴屋の形をより鮮明に感じ取ってしまってつらい。
噺家の身体は知ってしまっている。この行き止まりに見せかけた壁をひらいて更に進んだその奥は、先端でなぞられるだけで悶えるほど気持ちがいいことを。結腸と直腸を隔てる手前のきついひだでさえとんでもなく敏感なのに、こんなおぞましい凶器で、もっと奥へと挿入されてしまったら。
恐怖によって吐いたはずのあえかな悲鳴は口から出るまでの間に、快楽への期待が滲みきった甘ったるい吐息に変わってしまっていた。
「……へえ。ここ、そんなにイイんだ?」
「え、ぁ……ちが、そんなんじゃ、」
「はは。いや、無理があるだろ。今すげえとろっとろの顔してるよ、お前。……ほら、なんか先っぽ吸い付いて来てるし。はやくはやく♡ って急かすみたいにさ」
「っあ、ぅ゛……ッ♡♡」
飴屋が噺家の腹をするりと撫で上げれば、先ほど触られたときとは比べものにならないほど全身が反応してしまった。自分でも分かる。堪え性のない噺家の身体は貪欲に『それ』を求めており、はしたなく媚びて催促してしまっていることも。
口の端から垂れた涎を拭き取り、噺家は観念したように脱力した。
「──あー……くそ、しくじったなぁ……いいよ、認めるよ。死ぬほど気持ちいいんだよ、そこ。……ていうかさ、こんなとこ急所なんだから大抵クソ痛いかクソ気持ちいいかのどっちかじゃない?」
「色気のねえ言い方だなあ」
「うるさいな、演技するなって言ったのきみだろ。……だからさ、悔しいけど、加減してくんない……? そこだけはほんとに、久しぶりだから……」
「……久しぶりってことは、他にも挿入った奴がいんだな、やっぱり」
「ねぇもういいじゃん、そこは。実質きみひとりみたいなもんだから」
「どういうことだよ」と聞き返そうにも、噺家がこちらを見上げる縋るような目を見れば何も言えなくなってしまった。
「……集中する。向き合うから、ちゃんと、きみに……だから、きみも余計なこと考えないで」
「……分かった」
改めてこんなふうに真面目に言われてしまえば、飴屋とて溜飲を下げざるを得ない。それに、噺家の目を見ればそれが本気かどうかなんて言及するのも不粋だと思った。
「動くぞ」と飴屋が宣言してから、先ほどとは打って変わってふたりとも何も喋らずに、ただじっと見つめあったまま肌をぴったり重ね合い、結合部の泡が潰れる小さな音だけが鼓膜を揺らしていた。
「ん、っは……♡、……いい、ゆっくりするの、好き……♡」
「……やっぱお前、けっこう甘えたがり?」
「そう、かなぁ……っん♡、……自分では、あんま……考えたことない、けど」
「ふうん? じゃあ……俺にだけ、って思ってもいい?」
「……うん、いいよ」
噺家はそう答えて控えめに頷き、そっと頭を横に倒した。枕の上に散らばる髪から、ふわりと汗の香りが立つ。
それをまともに食らった飴屋は、自分の中で獰猛な欲が燃え広がるろうとするのをどうにか必死で抑え込んだ。
「っとに、さあ……刺激つえーわ……」
「……? ……もっと早く動いていいよって言おうとしてたんだけど、無理そう?」
「いや、……いいの?」
「うん。というか、……僕もけっこう、限界だから……」
何が、と視線を上げた飴屋は、何よりも早くその言葉の意味を理解することになる。
今にも溢れ落ちそうに潤んだぶどう色が、もどかしそうにこちらを見上げていた。涙に濡れた睫毛がきゅっと細められ、それと同時に飴屋を包む肉の壁がひときわ大きくうねった。
──はやくして。噺家による無言の懇願がこの行為をさっさと終わらせたいのではなく、飴屋の熱が欲しくてたまらないのだということは、言葉なんかで聞かずとも分かることだった。
はぁ、と甘ったるい吐息が耳朶をくすぐり、飴屋の理性の箍が音を立てて弾けた。
「うぁっ!?♡ ぁ、ああ゛っ♡ ぃ゛、〜〜〜ッい、きなり、はげし……♡♡」
「は……ッ、今のはさすがに、お前が悪いだろうが……!」
「んはっ♡、いつまでもうじうじしてる、きみが悪いんだろ……っ♡ ……ッあ゛、やば♡ も、いく……っ♡♡♡」
噺家の細い腰を跡がつくほど強く掴み、飴屋はねっとりと熱く誘うそこへ一心不乱に杭を打ちつけた。
暴力的な質量が腹のなかを何度も行き来し、そのたびに気持ちいいところを思いきりこそいでいき、息をつく暇もなく、ただただ快感だけが蓄積されていく。あっという間もなく追い詰められた噺家は、手足を思いきり引き攣らせて絶頂した。
……そして、歪に力の入った身体がゆっくりと弛緩した、その瞬間。
「──あ゛、それ、ふか……ッ゛♡♡」
「お、ここか……お前の、いっちばんイイところ」
力任せにこじ開けようとしたって無駄だ。そう冷静に考えた飴屋が腰を上へ向かって少し逸らせた途端、内壁はそれを拒んでいるんだか歓迎しているんだか、ぎゅうっ♡ と思いきり締めつけてきた。
どうやら、最後の『弱点』を探り当てたらしい。
「あ゛ッ♡、ぉ゛ッっ……♡ っま、まって♡、い゛、今イった、ばっかなのに♡♡ すぐイっちゃう、からぁ゛ッ♡ そこ゛っ、ほんとに弱いんだって……ッ♡♡」
「ッごめん。お前んなか、良すぎて……ッ腰、とまんねえ……っ♡」
「ぅぐ……っ♡ そ、んなこと、言われたらっ♡ なんにも言えなくなっちゃうだろ……!♡♡」
飴屋はその端正な顔を歪めて快楽に頭を支配されてしまっており、恐ろしく血管の浮いた腹筋がビキビキと脈打っている。どこもかしこも玉のような汗が滴るその様はまさに『雄』の発情した姿でしかなく、噺家は下腹部に言いようのない熱が籠るのを感じた。
そうしてほころんだ結腸弁を何度も何度も押し上げるうち、飴屋はある方向を突くと直腸全体が異様に収縮するのを見つけた。病熱に侵された頭ではとうに限界を超えた噺家を労わってやることなど考えられず、執拗にその窄まりをこねて射精欲を高めていく。
「っは、すげえ締まる……俺ももう、限界だわ」
「〜〜〜ッぁ、あ゛っ♡♡、だめ、ひらいちゃう♡ おく、欲しくなっちゃう゛……っ♡♡」
「ッひらいて、よたろ。お前のいちばん奥入れて。……はいらせて、」
「……ッッ♡♡ ……あ、くる♡、ふかいのきちゃ、ァ゛♡ ──〜〜っッ゛!!♡♡♡」
ぐりゅう……っ♡ と重たい手応えとともに結腸を突破され、噺家は全身を激しく痙攣させて我を失うほど深く極まった。乱暴な抽送で逆立てられた快楽神経がまるごと押し潰され、細胞のひとつひとつに染みこんでいくような凶悪な絶頂。瞳はぐるんと上を向き、閉じきらない口元からはがちがちと歯の鳴る音がする。その衝撃は噺家自身でさえも忘れていた感覚を呼び起こし、飴屋の精を一滴残さず搾り取ろうと淫らに腰をくねらせた。
次に追い詰められたのは飴屋の方で、抱えこんだ亀頭へと必死にしゃぶりつく動きに耐えられず、つられてそのまま射精した。度を越した興奮と快感により人間としての理性を忘れた飴屋は欲望のまま、ようやく侵入が許された最奥へ己の存在を刻みこもうとぐりぐり腰を押しつけてしまう。
束の間二匹の獣と成り下がったふたりはしばらくそうして、荒い呼吸を混ぜながら途方もない快楽を貪り合った。
「ハァっ、ハァ……ッ♡ ……あ゛ーー……っ♡ や、っべえ、死ぬほど気持ちいい……♡」
「──かひゅッッ♡、はァ゛っ♡、はぁっ♡、は、は……っ♡♡ ……し、死ぬ゛……っ♡♡」
「ふは、お互い様じゃねえの……あー、くそ、抜きたくねー……」
飴屋は大きな身体で噺家の上にのしかかりながら、腰に鈍く響くひどい倦怠感に浸っていた。こうしている間にも歪に収縮する内壁に中途半端に刺激され、飴屋のそれは早くも硬度を取り戻しつつある。
──まずい、せめてゴムだけでも付け替えねえと。雄の本能に支配されつつあった飴屋の脳裏に最後の理性が働いて、咄嗟に腰を引こうとした。すると、今度は噺家が悲鳴を上げる。
「あ、ぁ゛……っ♡ まって♡ まだ、余韻♡ ぬけてない、から……♡♡」
「あ……? ……ケツでイくと、そんなすげえの……?」
「ん、うん……♡ 深ぁくイくと、こう、やって……♡ っん……♡ きもちいいの、が、ずーっと続いて……はっ♡、……おわんない、の……♡」
「……あー、えろ……」
噺家は夢見心地で語りつつ、うっとりと瞳を潤ませた。紅潮した頬に乱れた前髪、脱力したまま恍惚を浮かべている表情と、未だぴくぴくと淡い痙攣を続けている身体。その全てに庇護欲を掻き立てられ、飴屋は自分自身でも気付かぬうちに噺家へと手を伸ばしていた。
「……かわいい」
ほとんど無意識にそう呟き、汗でしっとりと湿った髪を撫でつける。人の頭を撫でたのも、人が頭を撫でられるところを見るのも、飴屋の人生では初めてのことだった。
優しい手つきで髪を梳かれ、熱気の籠った頭皮に冷たい空気が流れ込む。噺家は飴屋の突然の行為に一瞬目を見開くが、心地よさに抗えず再びゆっくりとまぶたを閉じた。
「、っふ──……もう、大丈夫。抜いていいよ」
「……ん、わかった」
念の為噺家の身体を気遣うようにして段階的に抜かれたそれは、もうすっかり上を向いてしまっていた。体内を埋めていた熱が引いていく感覚にふるりと肩を震わせ、噺家は甘ったるいため息を吐く。嫌というほど啼かされたばかりだというのに、もうすでにあの剛直が恋しくてたまらない。
腹の奥がじくじくと切なくなるのを感じながら噺家は、飴屋のものを覆っていた避妊具の先にくるみほどの大きさの白濁が溜まっているのを見て、『あれ、兄さんだったら何人分だろ』とぼんやり考えていた。──そして、飴屋の手はまた、開けたばかりの箱へと伸びる。
「……ふ、まだやるの?」
「あ、……与太郎が限界だって言うなら、」
「んん? 僕を誰だと思ってんのさ、いつもは一晩に三人も四人も相手してる男だよ? これしきでへばっていられるかよ」
「……気に食わねえけど、お前も苦労してんだな」
「おっと、地雷だったか。そういや。……いやでもさ、よく言うだろ? 『フットワークと尻は軽くしておけ』って」
「言わねえよ。コトバ知らねえ俺でも分かるわ」
一度欲望を吐き出して平素を取り戻したふたりは、そんなふうに穏やかな会話を交わしてくすくす笑い合った。口には出さずとも、きっとお互いにこうして軽口を叩き合ったりするのが好きなのだ。
飴屋の目は慈愛でいっぱいに溢れていて、このままでは先ほどのように馬鹿みたいな衝動に突き動かされたりはしてくれないだろう。それは少し困る。実際にはどうなのか知らないが、飴屋のような人間はきっと仲が深まるにつれてどんどん態度が柔らかく、優しくなっていくに違いない。
……だから、あの剥き出しの欲求をぶつけてくるのだとしたら、まだお互い探り探りやっている今のうちなのだ。噺家は飴屋の袖をちょいと引いて意識を自分へ向けさせた。
「ね、旦那。……笑わないで聞いてくれるかい?」
「……何だよ急に」
「あのさ、さっき……奥、に、欲しくなっちゃうって言ったでしょ。あれね、もうずっとなんだ。今までは我慢できてたけど、きみがああやって……思い出させてくれちゃったもんだからさ。多分、もう二度と忘れられない。……きみのせいだよ」
突然情欲を煽られて硬直する飴屋の手を引き、自身の下腹に触れさせる。まず始めは陰部の付け根の辺り、それからじわじわと上昇させ、へその下でぴたりと止める。そこは今しがた散々いじめ抜かれた結腸の、ちょうど真上だ。
汗ばんだ手がぎくりと動き、たったその振動だけで息が詰まるほど感じてしまう。
「っ……ねぇ、だんな。責任取ってよ。僕のここ気持ちよくしてくれるの、きみだけなんだから。……責任もって、抱いて」
「──お前、ほんと……っ」
思わず身を乗り出した飴屋の袖が噺家の胸元を擦り、「んっ♡」と可愛らしい声が漏れる。下腹部に置いたままの方の手には物欲しげにひくんと蠕動する感触が伝わってきて、噺家の『弱点』は文字通り、全て飴屋の手の内だ。試しに首筋を撫でてみれば、噺家は甘い息を吐いてふるりとその身をしならせる。
これが口移しで食わせに来ているも同然な据え膳であることは、経験のそう浅くない飴屋の目から見ても明白だった。
「……煽ったからには覚悟しろよ」
「んふ、こわぁい……♡」
濡れたまなじりを下げながら、噺家はわざとらしい猫撫で声を作ってみせた。語尾には甘えたような期待がたっぷり滲んでいて、怯えなど微塵もしていないことは隠す気もないらしい。
──そんな安い挑発にすら今は乗ってしまいたい。飴屋は顎先まで汗を滴らせ、冷えきった華奢な身体へ覆い被さった。
雨音もやんで久しい部屋の中は、やがて再び粘着質な水音に包まれることになる。
コメント
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感想書くのめっちゃ遅くなりました😭 今回もめっっっちゃ良かったです…! 表現も好きだし個人的に癖だったところが🌩️がどれだけのテクニックがあっても肝心の物を受け入れてくれる相手がいなかったっていうのを知った🤝が意気揚々と下を締め付けて経験豊富な所を見せつけるのが可愛くてめっちゃ刺さりました……癖です…。 ↓
いやあ、第34話、読み終えました……めちゃくちゃ熱量のあるお話でしたね。噺家と飴屋の駆け引きがもう、どちらが主導権を握るのか一瞬たりとも目が離せなかったです。「甘やかす」という飴屋のスタンスと、それに抗いながらも最後は素直に奥を欲しがってしまう噺家の心情の変化が丁寧に描かれていて、胸に刺さりました。接吻の特別ルールとか「フェアじゃない」って言い訳するところ、キャラの深みが出てて好きです。この二人、これからどうなるんだろう……続きが気になります!