テラーノベル
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ドンドンドン!! ドンドンドン!!
「なんだっ!?」
大きな物音で、俺は飛び上がって目覚めた。
「夢……だったか……?」
昨日はあまり眠れなかったからな……。
ドンドンドン!!
しかし、頭を抱えてすぐ、同じ物音が鳴り響く。
どうやら、ドアを強く叩いている音らしい。
なんだ……?
辺りを見回す。ここは芦屋組のお屋敷で、俺が借りている六畳ほどの畳部屋……。
物音の正体は……組の人……にしては、なんで何も言ってこないんだ……?
ゴォッ!!
警戒していると、突如扉は激しく開け放たれる。
外には誰も居らず、突風が中に吹き荒れる。
その時、俺の脳裏には悍ましい記憶が蘇る。
「あの時と同じ……!! そんな……!!」
直後、背後にあったノートが勝手に落とされる。
視認できない……と言うことは……。
「悪魔……!!」
霊であれば、滅多なことがない限り視認できる。
しかし、悪魔は何かを媒体にしたり、狡猾に姿を隠すことができる。
「俺のことを追って来たのか!! オイ!!」
しかし、警戒も虚しく、何の応答も見られない。
その後、ゆったりと北上さんが現れる。
「北上……さん……」
見てすぐに分かる。
「憑依されてるのか……」
俯いていた北上さんは、グリンと首を上げると、真っ黒染められた瞳を向けた。
「アハハハハハ!! アハハハハハ!!」
「クソが!! 北上さんから出て行け!!」
ブォン!!
その突如、全身を覆う突風に巻き込まれ、そのまま窓に背中を打ち付けられた。
「痛っ……」
目を開けると、ギラリとした目玉が目の前に映る。
「……!!」
「お前には何も救えない……何も……アハハハハ!!」
ドンドンドン!! ドンドンドン!!
その瞬間、大きな音が頭の中で響き渡る。
ドンドンドン!! ドンドンドン!!
「侑くーん! 遅刻しちゃうよー?」
あれ……? 北上さんの声……?
そして、ぼんやりした意識が鮮明になる。
「そうか……今のは……夢だったのか……」
「侑くん? 大丈夫かい?」
「あ、は、はい! 起きました!」
「あはは、昨日は中々眠れなかったのかな。朝食は居間に用意してあるから、急いで食べてね!」
そう言うと、北上さんの足音は去って行った。
俺は……あんな夢を……今更……。
悪魔……。
握り拳をギュッと作り、時計を見て冷や汗をかき、そのまま朝の支度を始めた。
「おはよう、侑。遅かったね」
相変わらず、忠道は朗らかに笑い、梶さんは「遅いぞ」と言わんばかりの顔で俺を睨んでいた。
そして、忠道の背後にはやはり、喋らずにじっと見つめるケイと呼ばれる霊の姿もあった。
学校も、話し掛けてくる奴は何人かに絞られ、相変わらず西村の奴はしつこく付き纏ってきていた。
「は? 旧校舎の幽霊?」
昼休み、西村は突如として幽霊の話を持ち出した。
「今年から使われなくなったその校舎には、恐ろしい幽霊が潜んでいると言われているんです!」
鼻をふんふんと鳴らし、興奮気味に話を続ける。
でも……旧校舎の資材処分は芦屋組が手伝ったって昨日言ってたしな……。もし本当にそんな幽霊がいたら、忠道なら気付いてると思うけど……。
しかし、話半分に聞いていた俺は、次の西村の言葉に絶句してしまう。
「実は僕、幽霊が視れるんです! だから、今夜調べに行こうかなって思ってるんですよ!」
「え……幽霊が視れる……?」
「はは、やっぱり鬼塚くんも信じられないですかね……。この話、誰にも信じてもらえたことないんで……」
コイツは……本気で言っているのか……?
しかし、今夜乗り込むとしたら……まずいぞ……。
『今夜、旧校舎にとある情報を掴みに行く。侑も学校が終わったら俺に付き合ってくれ』
忠道から今朝、伝えられていたことである。
幽霊の有無は視ないと分からないが、どちらにせよ、『忠道の紅い眼』は見られてしまう……。
しかし、俺はそんな西村を制する話術も、遠ざける仕組みも出来ず、その時間を迎えた。
「あれ? 鬼塚くんも旧校舎に用があるんですか?」
「ああ……忠道に呼ばれてるんだよ……」
「もしかして、お二人も幽霊目的ですか……!?」
ウキウキと目を輝かせる西村だが、忠道が到着した途端に、全員は背筋を凍らせ唖然とした。
「なんなんだ……この気配……!!」
「悪霊……だね」
忠道の眼は、やはりギラギラと紅くなっていた。
そして、西村もまた、この気配を感じているようで、あの時の話は嘘ではないらしい。
しかし……
「や、やっぱり幽霊はいるんですよ……!! 嘘じゃなかった! 僕は嘘なんかついていないんだ!」
何を言っているんだ……? コイツは……。
「忠道くんも何か感じるんですよね!? ねぇ!!」
それに、忠道の紅く輝く眼に関して何も突っ込まない。
西村には視えてない……?
「そうだね。西村くんの言う通り、悪霊がいるみたいだ」
え……? そんなあっさり話していいのか……?
「ふふ、侑、驚かせてすまないね。芦屋家は代々、悪霊祓いとしてこの街では有名なんだ。つまるところ、俺には霊を視る力がある。こんな話、急には信じられないかな」
いきなり何を言ってるんだ……?
俺の力を利用する……みたいな話をしたばかりだろ?
「そうなんですよ! 鬼塚くんは、さっぱり幽霊のことは信じられないみたいで! 何も感じられない人がここにいるのは危ないです!」
「そうだね……。なら、こう言うのはどうかな? 霊感を持つ俺と西村くんで二手に別れる。俺は梶と共に一階から地下を探索するから、西村くんは、侑を守りながら安全第一に、二階から四階を回って欲しい」
でも……悪霊の気配があるのは地下……。
「そうですね! それがいいです!」
ニパっと笑うと、西村は忠道の案に同意した。
そして、今までの忠道の不可解な言動をようやく察することができた。
なるほど……。
西村は、『霊感はあるけど弱い』んだ……。
だから、忠道はわざと、悪霊本体のいる場所が遠ざけることにしたのか……。
梶さんを連れて行くって言ってるけど……まあ、芦屋家に長く居るなら大丈夫なのだろう……。
そして、二手に別れて行動を開始する。
やはり、悪霊の気配があるのは地下の為、俺と西村の探索エリアでは、変な現象に遭遇しなかった。
「うーん……変な気配はあるんだけどなぁ……。忠道くんもああ言っていたし……」
「なあ、俺は霊感ないから分かんないんだけどさ……もしそんなヤバいやつがいんなら、退散した方がいいんじゃないのか……? 喧嘩できる相手じゃねぇし……」
「確かに……。実は、僕はちゃんと霊を目視できたことはないんです……。悪霊祓いの忠道くんと違って、僕にはそんな力、毛頭ないです……。きっと、もし遭遇してしまっても、忠道くんを守れない……」
「だったら、なんであんなテンション上げて、こんなところに一人で来ようとしたんだよ!」
立ち止まると、西村は震えながら握り拳を握った。
「証明……したかったんです……」
「証明……? 霊は存在するってことをか?」
「僕は小さい頃から、霊を感じることができました。影を見たり、声を聞こえたり……取り憑かれたり……」
「取り憑かれる……!? マジかよ……」
「はい……。忠道くんのように、力はないけど感じやすい人は、取り憑かれやすい、『霊媒体質』と言うんです。だから僕は、小さな頃は人一倍怖がりでした……。しかし、ある時に知ったんです。霊は、怖いだけじゃない」
「霊は……怖いだけじゃない……?」
少し泣いてしまったのか、腕で涙を拭うと、俺に振り向いて無理に笑顔を作ってみせた。
「でも、ここに居るのは怖い奴です! 僕が間違っていました……。ここは忠道くんに任せて、僕たちは表で待っていましょう!」
そうして、西村に言及することはなく、そのまま俺たちは階下へと下っていった。
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侵略者たち
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