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僕は山口誠。母が誠実な人になりますようにと願いを込めてつけた名前らしい。父は僕が生まれた時にはもう既に他界していたらしい。

僕は中学3年生で近頃受験を控えている。入っている委員会は美化委員で、といってもクラスに居る金魚の世話くらいしか仕事がない。地味だけども楽で、僕は満足している。クラスでも地味で目立たない僕は今日も静かに周りの会話に耳を傾ける。

飯原君がまた今日も口を開いた。

「最近ニュースでポテトのSサイズしか販売できなくなったってあったよね。」

ああ、これは僕も知っているニュースだ。何を言い出すのだろうか。

「じゃあSサイズ何個も買えばいいんじゃない?」

「そしたらMサイズにもLサイズにもなるじゃん。」

飯原くんは何を言ってるんだろう。提供してくれてる側はより多くの人に食べて貰えるようにSサイズにしてるのにそれをひとりが沢山買ってしまったら意味が無いじゃないか。

「じゃあ、あなたはお試し品ですってお菓子があったら、全部貰っていって、これでひと袋分だ!って思うのね。」

神田さんは飯原君に目も合わさず本を読みながら口を挟んだ。神田さんはAクラスの1番人気の萩原君と付き合っている。友達は多く、女の子に好かれている。面白キャラでみんなから人気があるが、嫌いな人がハッキリしていて周りの人にも誰が苦手かバレている。

「別にそうとは言ってないじゃん!」

飯原君は言い返したが、

「でもあなたが言っているのはそういうことだと思うけど。」

と冷たく返され、飯原君は足音を少し大きくして廊下に出ていってしまった。

僕はどちらのタイプの人間も尊敬しているが苦手だ。飯原君も神田さんも自分の意見は決して曲げない強気で怖い。しかし自分の意見を堂々と言えるのは尊敬している。

少し間が空いたあと高田さんが飯原さんのところに駆け寄って猫なで声で喋り始めた。

「あんなに強く言う必要もないのにね。私はどっちの意見もわかるよ。」

高田さんは誰にでもああだ。男に限るけど。だからあまり女の子からの人気はない。女子の中でも色々あるのだろう。嫉妬とか妬みとか。

すると佐藤さんは少し大きな声で話し始めた。

「男にだけいい顔してさ、うちらの扱い酷いのにね。ああいうのマジ無理。」

女子のこういうのっていつの時代もあるっていうけどやっぱりやだな。怖いもん。

高田さんは気にもとめず男に媚びを売り続けた。

こういうギスギスしてる毎日。同じ空間にいるのも少し苦だ。といっても僕とみんなとの間には見えない線が引いてあって、誰も僕を気にも止めて居ないんだから、巻き込まれるかもなんて心配しなくていいんだ。

そんな平和な考え方ができたのは今日までだった…。

ブドウのような僕らは今日も種を隠している

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