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薄暗い遠くへ続く道。
私は弟の手を取り鉛のような重い足をひたすら交互に前へ出した。ゆっくりと。どこまでも続くようなこの道も終わりはある。
永遠と感じるこの道をいつまで進めばいいのか、これからどうすればいいのか。
灰色な存在の「外」を目指し、ただひたすらに歩き続ける。
「おはよう」
「…おはよう」
鬱陶しいくらいの隣鳴き声に囲まれ、太陽を微かに感じる日差しから私たちの1日が始まる。
「今日も雪だね」
私たちの町は一年の半分が雪に覆われている。とても寒く肌を針で刺されるような痛みが今日も続く。
階下からよく通るおばさんの声が私たちに届く。
「仕事だよ」
おばさんはいつも忙しそうにしている。
実際忙しいのだが、もう少し休んでも神様は怒らないと思う。
私たちが4歳の頃、1人で私たち姉弟を養護施設から引き取ってくれた、育ての親だ。
私たちの1日は牧場の掃除と餌やりから始まる。鼻に刺さるような異臭がまとわりつき、何度繰り返してもこの臭いには慣れない。
「おばさん、いつも牛さんたちはなにを考えてるんだろうね」
「なにか考えていると思う?」
「うーん、外に出られたらなにをしたいか?」
私は間髪入れずに迷いなく答えた。知っている。
檻に入っているモノは外に希望を抱く。たとえ何もなくても、それが幸せでなくても。多くのモノは知らないモノに興味を示す。しかし何も知らないモノは外という存在を思考しない。いや、当事者にとってはもともとないモノなのだ。
「牛さんはそんな大層なこと考えちゃおらんよ、ご飯が来たらご飯を食べる。眠くなったら寝る。今を生きるのに精一杯なんだよ。」
「私は外に出たい」
呆れたようなため息と少しの笑みをこぼし、おばさんは少し空いた口を一旦閉じてから、少し掠れた声をこぼした。
「もう決めてるんでしょ?」
優しく薄い笑みを浮かべたおばさんの表情は、喜びと悲しみが交錯しているように思えた。
私は何も言わずに、ただ頷いた。
「行こう、リク」
「うん」
振り向くことなく、ただ前を見る私たちの背中に届く小さな声。
「いってらっしゃい。」