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第四十六話 初めての写真展
「一枚の写真が、誰かの人生を少しだけ変えることがある。」
十月下旬。
市内高校合同写真展、初日。
会場となった市民文化センターには、
朝から多くの人が訪れていた。
壁一面に並ぶ写真。
風景、動物、街並み、家族。
それぞれの高校生が見つけた「一瞬」が、
一つの空間に集まっていた。
*
「すごい……。」
湊はゆっくりと会場を見渡した。
自分の写真が、こんな場所に飾られている。
まだ信じられなかった。
写真の下には、小さなプレート。
『つながる心』 神崎 湊
何度見ても実感が湧かない。
「緊張してる?」
隣で蓮が笑う。
「……少し。」
「俺だったら落ち着かないな。」
美桜も苦笑した。
*
開場から一時間。
来場者が次々と写真の前で足を止める。
「この写真、好き。」
「なんか温かい。」
「派手じゃないのに、ずっと見ちゃう。」
そんな声が聞こえてくるたび、
湊は少し照れくさくなった。
写真は、自分の手を離れた瞬間から、
見る人それぞれのものになる。
そう先生が言っていた意味を、
少しだけ理解できた気がした。
*
昼過ぎ。
一人の小学生の男の子が、
『つながる心』の前で立ち止まった。
じっと写真を見つめたまま動かない。
「どうしたの?」
母親が声をかける。
男の子は写真から目を離さず、小さく答えた。
「このお姉ちゃん、優しいね。」
「おばあちゃん、嬉しそう。」
その言葉に、母親は優しく微笑んだ。
「そうだね。」
「優しい人って、かっこいいね。」
二人はもう一度写真を見てから、
ゆっくり歩き出した。
その会話を聞いた湊は、胸が熱くなる。
写真を見た人が、
写真の向こうにある気持ちを受け取ってくれた。
それが何より嬉しかった。
*
夕方。
会場を出ようとした時だった。
「君が神崎くん?」
後ろから穏やかな声が聞こえた。
振り返ると、一人の男性が立っていた。
首から一眼レフカメラを下げ、
優しい笑顔を浮かべている。
「はい。」
「君の写真、見せてもらったよ。」
男性は『つながる心』を振り返りながら言った。
「技術より先に、人を見ている写真だね。」
その一言に、湊は驚いた。
先生と似たことを言われたからだ。
「ありがとうございます。」
男性は名刺を一枚差し出した。
『白石 悠人 フリーランスフォトグラファー』
「写真を続けてほしい。」
「君には、人の心を写せる才能がある。」
そう言って、静かに会場をあとにした。
湊は名刺を見つめたまま、
その場に立ち尽くしていた。
*
夜。
家に帰ると、紬とビデオ通話をつないだ。
「写真展、どうだった?」
湊は今日あった出来事を話した。
最後に名刺を画面へ見せる。
紬は目を丸くした。
「すごい……!」
「神崎くん。」
「夢に、一歩近づいたね。」
その言葉に、湊は少しだけ考え込む。
夢。
今までは「好きだから撮る」だけだった。
でも今日、初めて思った。
誰かの心に残る写真を、これからも撮り続けたい。
📷 Photo.046『心を写す一枚』
撮影日:10月24日
写真は、
景色を残すものじゃない。
誰かの想いを、
未来へ届けるものなんだ。
紫倉 紫
457
48
#再会
イツカ
1,188
#異能力
コメント
4件
そうなんです! ならよかったー! そんな感じかもですねー、、、、 どんな想いだっただろう、、,難しいなぁ、、、
もうもうもう!!😭💕 第46話、めっちゃ良かった…!! 湊くんの写真がちゃんと誰かの心に届いてるシーン、特に小学生の男の子の「このお姉ちゃん、優しいね」って言葉に涙腺やられたよ…!!写真ってただの記録じゃなくて、その向こうにある気持ちを伝える手段なんだなって改めて実感した。 しかもプロの写真家から「人の心を写せる才能がある」って言われるなんて、湊くんの夢がぐっと現実に近づいた瞬間だよね…!✨ 紬ちゃんとの通話も尊すぎる。次も絶対読みます、待ってるよ〜!!🌸