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第四十七話 新しい夢
「夢は、誰かに認められた瞬間じゃない。自分で『進みたい』と思えた瞬間に始まる。」
写真展が終わって数日。
湊は、机の引き出しから一枚の名刺を取り出した。
白石 悠人
写真展で出会ったフォトグラファー。
「人の心を写せる才能がある。」
あの言葉が、何度も頭の中で繰り返されていた。
*
放課後。
写真部では写真展の振り返りが行われていた。
顧問の先生は部員たちを見渡しながら話し始める。
「写真展、お疲れさま。」
「結果よりも大切なのは、自分の写真が誰かの心に届いたかどうか。」
部員たちは静かにうなずく。
「そして今日は、もう一つ報告があります。」
先生は一枚のプリントを掲げた。
「来月、市内で高校生フォトコンテストが開催されます。」
部室がざわつく。
「優秀作品は、来年のカレンダーに採用される予定です。」
「すご……。」
蓮が思わず声を漏らした。
「応募は自由。」
「挑戦したい人は、ぜひ参加してください。」
*
部活の帰り道。
「湊は出るよな?」
蓮が歩きながら聞いた。
「まだ分からない。」
「え?」
「写真展で満足しちゃったわけじゃないけど……。」
湊は少しだけ空を見上げた。
「自分に撮れる写真があるのかなって。」
その横顔を見た美桜が優しく笑う。
「湊は考えすぎ。」
「一番いい写真って、狙って撮るものじゃなくて、自然と撮れた一枚だったりするじゃん。」
その言葉に、湊は文化祭の写真を思い出した。
確かに、あの一枚は偶然出会った優しさだった。
*
夜。
紬とビデオ通話をつなぐ。
「フォトコンテスト?」
「うん。」
「でも、まだ応募するか決めてなくて。」
紬は少しだけ笑った。
「神崎くん。」
「写真部に入った理由、覚えてる?」
「え?」
「最初は、『景色を残したい』って言ってたよね。」
湊は懐かしそうに笑う。
「そうだった。」
「でも今は違う。」
紬は優しく続ける。
「神崎くんは、人の笑顔とか、優しさとか、そういう一瞬を残したいって思ってる。」
「それって、すごく素敵な変化だと思う。」
湊は画面越しの紬を見つめる。
自分では気づいていなかった。
でも、紬はずっと見ていてくれた。
*
通話を終えたあと。
湊はカメラを持って家を出た。
夜風が少し冷たい。
住宅街を歩いていると、
公園のベンチで一組の親子が星空を見上げていた。
小さな女の子が指をさす。
「見て!お星さま!」
父親も空を見上げ、優しく笑った。
「本当だ。きれいだね。」
その何気ない時間が、とても温かく見えた。
湊は静かにカメラを構える。
カシャッ。
撮れた写真を見て、小さく微笑んだ。
「……応募してみよう。」
答えは、もう決まっていた。
誰かの心を動かす一枚を。
自分らしい写真を。
もう一度、信じて撮ってみよう。
📷 Photo.047『夢の始まり』
撮影日:10月29日
夢は、
誰かにもらうものじゃない。
一歩踏み出したその瞬間、
自分の中で静かに始まる。
紫倉 紫
501
48
#再会
イツカ
1,188
#異能力
コメント
4件
ならよかったです! はい!待っててください!
第47話、めっちゃ良かった……!湊が「自分に撮れる写真があるのかな」って迷うところから、夜景の親子の一瞬を切り取って「応募してみよう」って決意する流れが自然で、じんわり来たわ。紬が「人の笑顔を残したいって思ってるよね」って気づかせてくれるシーン、優しすぎる。夢はもらうもんじゃなくて、踏み出した瞬間に始まる——そのラストの写真のキャプション、胸に刺さった。M.Sさんの作品、こういう心の動きの描き方が本当に繊細で好きです🔥