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放課後の教室は、昼間の喧騒が嘘のように静かだった。 西日が差し込んで、黒板に橙色の影を落とす。その中で、タカシは机に頬を乗せてノートをめくっていた。
「まだ残ってたのか」
声をかけてきたのはカイだった。背の高いシルエットが逆光に浮かび上がり、思わず眩しさに目を細める。
「……部活、もう終わったの?」
「うん。今日は早く終わったから。タカシがいないと思って探したら、やっぱりここにいた」
カイは笑いながら近づき、タカシの隣の席に腰を下ろす。ふいに距離が縮まって、胸が跳ねた。
「テスト勉強?」
「まあね。数学、全然わからなくて」
「見せてみろよ」
タカシのノートを覗き込んだカイの顔が近すぎて、思わず息を止める。ほんのり汗の混じったシャンプーの香りがして、どうしてこんなことで心臓がうるさいんだと自分を責めた。
「ここはさ、こう置き換えると解きやすいんだ」
カイが鉛筆を取って、すらすらと式を書き直す。
指先がタカシの手の甲に触れた瞬間、電気が走ったみたいに身体が硬直した。
「……タカシ?」
「な、なに?」
「顔赤いけど、大丈夫?」
「だ、大丈夫!」
慌ててノートを閉じると、カイは少し目を丸くして、それから小さく笑った。
「もしかして、俺のこと意識してる?」
「……っ!」
不意打ちすぎて、言葉が出ない。
カイは真剣な目で続けた。
「俺はさ、前からずっとタカシが気になってた。勉強見てやる口実でもなきゃ、こうして二人きりになれないから」
静かな教室に、心臓の音がやけに大きく響く。
どう答えればいいかわからない。でも、逃げたくない気持