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ポッキーゲーム 会社員設定
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深夜になったオフィスには、PCのファンの音だけが残っていた。書類を提出し終えた政裕が肩を回していると、拓弥がデスクの引き出しを開けながら言った。
「政裕、これ。差し入れでもらったんだけどさ」
差し出されたのはポッキーの箱。
政裕の目がわずかに細くなる。
「……先輩、それは絶対嫌な予感しかしないんですが」
「おいおい、先輩に向かって“嫌な予感”はないだろ」
拓弥は笑いながら一本取り出し、唇にくわえる。
「ほら。やるぞ、政裕」
「……仕事終わりにこれって、パワハラでは?」
「違う違う、“先輩の特権”だ」
そう言って拓弥はさらに椅子を寄せ、政裕の目の前まで顔を近づけた。
軽い命令口調なのに、耳に甘く響くのがずるい。
政裕は観念して、反対側をくわえた。
カリ……
カリ……
噛むたび、拓弥の顔が近づく。
先輩のくせに、からかうような眼差し。
10cm。
7cm。
5cm——
拓弥が片肘をつき、わざと体を傾けてきた。
ほんの少しだけ、政裕の膝に触れる。
「なぁ政裕。後輩のくせに、顔赤いな?」
「……先輩が近いんですよ」
「距離縮めてるのは、お前のほうだろ」
挑発するように笑い、さらに前へ。
3cm。
2cm。
政裕の呼吸が止まる。
拓弥の香水の匂いが近すぎて、まともに顔を見られない。
1cm——
拓弥のまつ毛が震えた。
そのまま、小さく囁く。
「……触れていい?」
先輩らしくない、弱い声。
そのギャップが胸に刺さる。
政裕はポッキーをそっと噛み切った。
残りの距離をほんの少し詰めて——
軽く、触れるだけのキスをした。
拓弥が一瞬だけ息を呑む。
「……っ、ずるいぞ政裕。それ、先輩に勝つ気なかったろ」
「先輩こそ、誘ってるみたいでしたけど」
拓弥は顔をそむけ、耳まで赤く染めた。
「……もう一本、いいか?」
政裕は苦笑しながらも頷く。
「何本でもどうぞ。先輩」
次のポッキーをくわえた拓弥の笑顔は、先輩の余裕なんて欠片もなかった。