テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
第五章
神々の目覚め
― 四神降臨 ―
「さ、巫女さま方。こちらをお手にお取りください」
柔らかな笑みを浮かべながら四人を中央へ案内し、台座に置かれた武器を示したのは、羅刹と呼ばれていた青年だった。
黒髪に紫が混じる髪。紫暗色の瞳にはどこか妖しげな雰囲気が漂う。しかし、その柔らかな笑顔は不思議と人を安心させる温かさを持っていた。
「お取りください、と言われても……」
琥珀は台座の上に並ぶ武器へ視線を向ける。
太刀、双剣、扇、錫杖。
どれも見たことのない神秘的な輝きを放っていた。
(太刀に双剣……扇……錫杖? まぁ……選ぶなら太刀かな。剣道してるから扱い慣れてるし。)
無言の空気に耐えきれなくなった琥珀が、ぱっと明るく笑った。
「ねぇ、せーので指さして決めない? 被ったらじゃんけん!」
金色の瞳で三人を見渡す。
「そうね……。」
蒼紫は静かに頷きながらも、周囲を観察していた。
この場所は、自分の知るどんな建物とも違う。
どうやってここへ来たのか。
どうすれば帰れるのか。
冷静を装う蒼い瞳の奥では、不安が静かに揺れていた。
「……せーのっ!」
四人は同時に武器を指差す。
しかし、不思議なことに誰一人として選んだ武器は被らなかった。
「あれ……?」
琥珀は双剣を見つめる。
(なんで、あたし双剣を選んだの? 扱ったことなんてないのに……。)
煉華は黙ったまま太刀を見つめていた。
深紅の鞘。
風もないのに揺れる深紅の飾り紐。
最初から、その太刀しか目に入らなかった。
いや――。
太刀が、自分を呼んでいた気さえした。
「あの……では、皆さん。手に取ってみますか?」
錫杖を指さした手を少し引っ込めながら、詞葉がおずおずと声を掛ける。
四人は小さく頷き、それぞれ武器へ手を伸ばした。
「……っ!?」
武器へ触れた瞬間だった。
頭の奥へ直接響くような声が聞こえる。
『――顕現。』
「……顕現っ!?」
煉華が思わずその言葉を口にした瞬間。
足元から深紅の光が溢れ、一輪の牡丹が大きく咲き誇る。
それを合図に、藤の花、黄色い菊、睡蓮が次々と咲き、神殿全体が神々しい光に包まれた。
「きゃっ!」
眩しさに四人は思わず目を閉じる。
やがて光が静かに収まった。
恐る恐る目を開けると、制服は跡形もなく消え去り、それぞれの身には四神の加護を宿した巫女装束が纏われていた。
「こ、これ……。」
煉華は袖へ触れる。
黒を基調とした巫女服。
白い袴には、一輪の深紅の牡丹。
腰には先ほどまで台座に置かれていた太刀が静かに収まっていた。
「本当に……巫女になっちゃった……」
誰ともなく漏れたその言葉に、四人は互いの姿を見つめ合う。
「やはり……」
羅刹は安堵したように微笑んだ。
「四神様は、皆さまを正式に巫女として認められたようです。」
四人は息を呑む。
「認めたって……どういうこと?」
琥珀が問い掛ける。
羅刹は静かに四人を見渡した。
黙って見ていた神父が口を開いた。
「その武器は四神様より授かった神器。そして、その巫女装束は神器に宿る神力が具現化した姿です」
神殿に静寂が流れる。
「皆さまはこれより、四神様と共に世界を護る巫女として歩むことになります。」
その言葉に、誰一人すぐ返事をすることはできなかった。
コメント
1件
第13話、読み終えたよ!四人がそれぞれ違う武器を選んだところ、なんか運命みたいでグッときたな。特に「太刀が自分を呼んでいた」って煉華の感覚、すごく分かる気がする…装束に変わるところの牡丹や藤の花の演出も綺麗で、映像が浮かぶようだった。最後の沈黙、重くて良かった。続きがすごく気になる!