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今はただあなたのことしか考えられませんでした。
午前零時螺旋階段あなたは私の手を引きながら鼻歌を歌いゆっくりゆっくりと登っていった。私は都会の音が好きだった。そこにあなたの音が加わってから他の音は聞こえなくなった。あなたの呼吸音や鼓動、その一つ一つの音が私の耳をつんざくような気がした。あなたの狂気じみた中にひっそり潜む儚い雰囲気がたまらなく好きだと思う。いや好きなんだと自分の中で納得させた。
「ねぇ怖い?でもこれでずうっと2人になれるよ。」
私の頬に手を這わせながら虚ろな目で見て言ってくるものなので私はつい目を逸らして怖くないと強気で言ってしまった。そっかとあなたは半笑いでまた歩みを進めていった。あなたの鼻歌は私の心配を打ち消す”魔法”のような役割になっていた。私の考えだけど’魔法’と言われると聞こえがすごくいい。昔はよく魔法少女のアニメを見ていたものだ。今も私は’魔法’と言う言葉にとりつかれて子供みたいだ、けど今は昔とは違う”魔法”によって私は変えられてしまった。
そんなことを考えていたらあなたが歩みを止めていた。屋上についたのか見上げてみると見慣れた都会の夜景が広がっていた。けど好きだった都会の景色は背景でしかなくなっていた。あなたしか見えなかった。 やっぱり都会の音も聞こえなかった。あなたの音が五月蝿い。けど心地よかった。あなたの音がないとあなたがいないと生きていけないと思えるほど私はあなたの”魔法”にかかっている。けど 私はあなたを失っても生きていけるあなたから逃れられると思い続けている。この”魔法”は解けると。
「今から僕たちが2人永遠に繋がれるように’魔法’でもかけてみよっか」
やっぱり”魔法”は解けない。あなたの言葉は私の考えを簡単に変えてしまう。癖のようにすぐ私の体に手を這わせてくるところが憎らしくもあるが
どこか憎めない自分がいた。もうあなたの細胞一つ一つも愛おしく思ってしまった。あなたからふと香ったマルベリーの香りは私にはじめて”魔法”をかけたときとおんなじだった。
また新たな貴方の”魔法”によって貴方と永遠に繋がれるように私たちは飛び降りた。