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いつからだっただろうかあなたの”魔法”にかかってしまったのは。確か仕事終わりの帰り道だったと思う。好きな都会の夜景を眺めて帰るのは私にとって幸せなものだった。田舎暮らしだった私にとって都会はものすごく夢のようなものでここで暮らせたらな〜なんてずっと思っていた。上京してからいろんな大変なことはあったもののなんとかやれてきて幸せな生活を過ごせていた。だがその帰り道の夜に出会ってしまった。会うべきじゃなかったあなたに。道端でスーツを乱しながら眼鏡をかけた男性が涙を流し座り込んでいるものだから声をかけてしまった。見上げるあなたの目は綺麗でどこか暗く、吸い込まれるようだった。
「あの、大丈夫ですか?」
その言葉にあなたは更に声を上げて泣くものだから男なのに恥ずかしくないのか…?とつい、いけないことを思ってしまった。だけど、あなたが纏う’魔法’のような不思議な雰囲気にのめり込んでしまった。私はいつの間にか隣に座り背中を擦っておりそのときふと香ったマルベリーの匂いは私の鼻から離れることはなかった。
「告白したんですけど、振られちゃって…」
と、泣きながら言うあなたを見て私の良心が働き始めた。いつの間にか2人で居酒屋に行き私たちは他愛もない話をした。午前零時まで終わることはなかった。
「今日はこんな時間までありがとうございます…。
僕こんな親切にされたこと初めてで…嬉しくて…また会えますよね? 」
と、恥ずかしそうに私の手を握り言うあなたに私はつい頷いてしまっていた。お願いだからそんな目で見つめないでほしい。その儚く虚ろな目で私を見ないでほしい。その時からあなたの”魔法”にかかっていたのかもしれない。一瞬にして簡単に”魔法”にかかってしまう私は無知なんだろう。