得体の知れない恐怖で全身に悪寒が走り、思わず身を縮こませた。
「この事を誰かに相談しなかったのか?」
『誰にも言ってません。……実は恋人に相談しようと思っていたんです。けど色々あって別れちゃって…』
「……」
半分は嘘だ。私と条野さんは正式に別れた訳じゃない。
傷つきたくなかったから「別れよう」と言えなかった。
けど私の中では別れた事になっていて、メールも電話も拒否して条野さんの連絡先を消した。
どうせ向こうから連絡なんて来ない
このまま1ヶ月も経てば〝自然消滅〟になる
_卑怯な別れ方だと重々承知しているけど、この方法が一番の自己防衛……
「行くぞ」
『!!…えっ、と?』
私が物思いにふけていると末広さんは突然立ち上がり端的に告げた
「警察に行き、事情を説明する」
『それは私が…!』
「今気配を感じないが、発信器が埋め込まれていると云う事は跡をつけられている可能性がある。其れに家を特定されているならば尚危険だろう」
『……』
「……」
確かに彼の言う通り発信機が発見され、家も特定されているのはかなり危ない。と言うか怖い。何時何処でストーカーが私を見ているか分からないし…。
ここはお言葉に甘えようかな
『判りました。じゃあ末広さん、宜しくお願いします』
「嗚呼、任せろ」
座ったまま小さくお辞儀をして、其れに対し末広さんは力強く請け負って呉れた。
「それから、名前を聞いてもいいか?」
あ、そう言えば名乗ってなかった!
失礼にも程があるでしょ私!
『〇〇です!末広さん、改めて宜しくお願いします!』
「鐵腸でいい」
『鐵腸さん…?』
「周りからはそう呼ばれている」
『成程…分かりました!では鐵腸さん、ご同行お願いします!』
こうして私たちは自己紹介を済ませた後ファミレスを後にし、警察署へ向かった__。
あれから4時間後─────。
ファミレスから出た私達は警察署へ向かい、その最中に色んな話しをした。
ストーカーの話しや仕事の話し、ちょっとした個人的な事も話したりして、ほんの少し鐵腸さんの事を知れた。
そして驚く事に条野さんと同じ〝軍警〟
もしかしたら条野さんの事を知っていたりするのかな。
_なんて思いながら警察署に到着し、其処でもまた鐵腸さんに話した事と同じ内容を説明して、聞かれた事に対して答えたり証拠品を渡したり色々と対応して貰って3時間後やっと解放された。
その後、警察署の前で御礼を伝えて帰ろうとしたら
「家まで送る」と、あまり1人にならない方が云いと鐵腸さんは云うものだから申し訳ないと思ったものの有り難く送って貰う事にした。
『鐵腸さん、今日は有難う御座いました!1人だと少し不安だったので一緒に来てくれて心強かったです!しかも家まで送って下さって何と御礼を言ったらいいか…』
「何かあってからでは遅いからな…、用心に越したことはない。其れからあまり1人で出歩かない方がいい。」
『そうですよね…。仕事に行く以外は外出を控えてはいたんですけど、送られて来た盗撮写真を見る限り仕事帰りの時が多いみたいです』
ストーカーは主に仕事からの帰宅時を狙ってる。しかも日も暮れた時間帯だから尚更怖い
何処から見られているか判らない、何時か待ち伏せでもされたらどうしようと、私を不安と恐怖に駆り立てた。
「仕事は何時頃終わる___?」
『基本的には18時頃に終わります』
「職場はどの辺にある」
『えっと、、此処から2km離れた△△△会社って所ですけど…』
何故そんな事を聞いてくるのだろうと思っていると、鐵腸さんが予想外の言葉を口にした﹏﹏
「ならば明日から帰宅時迎えに行く」
『……ぇ?』
「ストーカー被害が解決するまでは仕事帰り護衛する。その方が安全だ」
『いやいや、流石にそこ迄してもらう訳にはっ…!』
「では18時頃職場近くで待つ。見掛けたら声を掛けてくれ」
『あっ、ちょっと待っ____、』
えぇ…、嘘でしょ?私の答えも聞かず鐵腸さん
帰っちゃった……。
ナチュラルに強引っ!
でも真逆本当に送ってくれる心算だろうか?
いや、きっと私を安心させる為に言ってくれただけだよね!
うん!絶対そうに違いない!
_____と、この時の私は思っていた。
コメント
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ストーカーが鉄腸さんだったりして笑。そしたらとんでもないな!