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如月💜🎼宿題終わるまで低浮
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キャプションをお読みの上、ご覧ください。
rdkr
バタフライバース
蜂rd×蜘蛛krの話です。
またバイオレンス気味
年齢操作あり。教師×学生でスタートします
Carpe diem
「おいしい?ノア」
「…ん、うん」
ぴちゃ、と音を立てて、一口大にカットされた生肉を口へ運ぶノア。
塊の生肉を、黙々と、ただ作業のように口元に運んでは咀嚼し、飲み下していく。俺はその様子を眺める。
血をきちんと抜いたとはいえ切り出して間もない生肉はノアの唇を染めて、ああ、赤いリップが似合うな…なんて感想が頭をよぎる。時折それをぺろりと舐め取る仕草も艶やかで、ふつふつと煽られる欲を感じた。
「ごちそうさまでした、」
「皿はそのままでいいから、…おいで」
食べ終え行儀良く手を合わせたノアの手を取って、すぐ側にあるベッドへ座るよう促す。促されるまますとん、とベッドに座ったノアは俺を見上げて、一度、ゆっくりと瞬きをした。
世界には、普通の人間とそうでない生き物がいる。
世界人口の大多数を占める一般の人間に紛れるようにして、蝶・蛾・蜘蛛・蜂はひそかに存在する。
それは大掛かりな検査をしても特徴は見られず、遺伝もしない。一般人にはその存在すら知られていない。当人すら、自身がそれであることすら知らないまま一生を終えることも少なくない。
例えるなら、遠い昔からある呪いのようなもの。蝶は性別を問わず人を魅了する恵まれた容姿を持つことが多く、蜘蛛にとって栄養価の高い恰好の餌である。
蛾は蝶とよく似た優れた容姿で区別がつかないが、猛毒を持っている。毒の性質や程度は個体によってさまざまである。
蜘蛛は蝶を見ると捕食衝動に駆られる。一切の自覚症状はなく、一般人として一生を終えることが多い。
蜂は蜘蛛に卵を産み付け濫觴にしなければ繁殖できない。卵を産み付けた蜘蛛を言いなりにする特性を持ち、その体液は蝶や蜘蛛にとって麻酔効果を持つ。四種の中でも極めて数が少なく、唯一自身の性質を自覚する種である。
問一
自分が蜂であると気が付いたのは、高校に入学した頃だった。
両親にそういった性質はなく、ただある日俺は蜂だと悟った。それから、まさか両親や医者に相談できるわけもなく、それまで都市伝説だと思っていたバタフライバースというものをネットや書物で調べ上げて、蜂以外の生き物についての知識を得た。
そうして俺の生活は一変する…訳ではなく。それまでと何ら変わらない生活が続いた。これが蝶や蛾ならいざ知らず、他の種に襲われることがほぼ無いと言っていい蜂は、日常生活に一切何の影響もなかった。
高校をそのまま卒業し、大学へ進学。教員免許を取得して、高校教師になった。
スーツに袖を通し毎朝学生たちと挨拶を交わして、教室で授業をする。そうやって青春を過ごす彼らと生活し、社会人になっていく背中を見送ること二回。新たに入学してくる一年生の担任を受け持つことになった。
「黒井ノアです。よろしくお願いします」
彼を一目見て、蜘蛛だと確信した。
黒井は、俺の持つクラスの生徒だった。
ホームルームでの挨拶は簡素で、あまり目立たない生徒。成長期真っ只中の男子高校生の中では身長も平均程度。躯体は華奢。声変わり後の落ち着いた声音。伏せ目がちな瞼、睫毛に縁取られた、肌と同じように色の薄い瞳。
どうして蜘蛛だと分かったのかは俺自身にもわからなかった。外見や音のほかはまだ何も知らない相手。匂いがわかるような距離でも、まだ親しい人物でもない、十も歳下の彼。
ただ全身が粟立って、これが運命だと叫んでいた。
ようやく見つけたのだから、手に入れなければならない。そうしなければ気が済まない。
けれど彼はまだ高校生になったばかりで、まだこれから世界を知っていく歳だ。だから三年間だけ待つことにした。在学中であれば居所は掴めるし、その間に関係を作ることもできる。彼が卒業したら、その時は彼を奪ってしまおう。彼が彼として自由に過ごせる人生はそこで終わり。それからはもう最期まで蜂に囚われて囲われて、残りの時間を過ごしてもらう。そのための準備を待ちながら進めよう。抜かりなく、確実に捉えるために。
「これは?」
「ああ、ここはこれを応用したほうがー…」
一年生の夏休み。
グラウンド側の窓から蝉の声と運動部の大きな声が聞こえてくる中、誰もいない教室で一対一での勉強会。彼は特別成績が悪いわけでもないし補習になっているわけでもない。勉強熱心な生徒でもない。なのにわざわざ夏休みに登校しているのは、彼の気まぐれ。
このことについては、担任とはいえただの生徒と教師である関係上、どうしても不自然なアプローチになりかねないことを思えば願ったり叶ったりだった。
「先生って恋人とかいるんですか」
「なんだよ急に。居ないよ」
「…えー?じゃあ理想とかあるんですか?」
「なんだよさっきから、勉強しなさい」
「先生これ分かんない」
「途中式まで解けてたでしょうが」
えーちゃんと教えてくださいよーなんて机に項垂れる彼は、このノートに並ぶ問題程度、十分もあれば解き終えることができる。
けれどじっとりと汗ばむ温度の教室で、だらだら、うだうだ。適当にいくつか解いて、お喋りをして、またペンを動かして。
蝉の声を遮って『せんせい』と呼ばれるたびに、背中を汗が伝った。
黒井は、概ね、優等生。
大きな問題を起こすこともなく、成績も悪くない。同じクラスや他クラスに友人もそこそこ出来ているようで、休み時間は主にゲームの話。
容姿も性格も良い。特に面倒見が良いのもあって、女子生徒からの人気もある。
運動神経も悪くないが、部活動には参加していない。
放課後や長期休み中の自主学習は相変わらずで、家にいたくないのか?と一度心配したほどだったけれど、それ自体は杞憂だった。
「誕生日おめでとう」
「…ありがとうございます」
三年の夏。放課後自主学習をし始めた彼に、ボールペンを一本渡した。
「誕生日プレゼントがペン一本って…」
「実用的で良いだろ」
「もったいなくて使えないんですけど」
でもありがとうございます。とペンのデザインやパッケージを眺めた彼は、ペンケースにそのまましまって、普段使っているシャーペンに持ち替えた。
自主学習の習慣は、クラス替えで彼の担任を離れた二年の時も変わらないまま、再び請け負った三年になった今でも続いている。
「…、」
ペンを走らせながら、横髪を耳にかける仕草を眺める。
「髪、長くないか」
「似合わない?」
「んー…今時なんじゃない?」
「そうですか?」
「あれ!居残りしてるの?」
放課後珍しい訪問者を振り返ると、女子生徒がドアを開け驚いた顔をしていた。どうしたのかと問えば、彼女は忘れ物しちゃってぇと笑い、ロッカーからノートを一冊持ち出して鞄にしまった。
「黒井くん、また明日ね」
「うん、またね」
用事を済ませ、彼にそう手を振ってはにかんだ女子生徒は、先生もさよーなら!とドアを閉めた。
はいさようなら。気をつけて帰れよと声をかけながら、女子生徒のはにかんだ表情を繰り返し思い出す。
…あれは、好意的な表情。
クラスメイトとしてではなく、憧れに近い、自身をよく見せたいと思う表情。
「…先生?」
トン、トン。と机を指先で叩く俺に、彼は訝しげな顔をする。
卒業まで待つつもりだった。
約二年もの間、計画は順調そのものだった。
焦りではなく、ああ、もういいか。と蜘蛛の糸が切れるような感覚だった。欲しいものは今ここにあるのだから、耐える必要がどこにあると言うのか。
机ひとつだけの距離。
「せ……っ」
黒井の頬を掴んで、口づけた。
「…っっ!」
ガタン、と机に足をぶつけながら、彼は腕を掴み離れようとする。ああ、足にあざができるかもしれないな。なんて懸念しながら、ぬる…と舌を一度絡めて離してやった。
「っは、…っ…なに、急に」
「初めてだった?」
「…っ俺が先に!…聞い、て…、」
かっと顔を赤くして、咄嗟に椅子から立ち上がって戸惑いをあらわに見下ろす彼は、しかし数秒のうちにぐらぐらと視線が迷い、目が回ったのか膝から崩れ落ちた。咄嗟に机に手をついて身体を支えたのは流石の反射神経というべきか、ああ床に頭を打たなくてよかった…と俯瞰した俺が思った。
「は…っ…はぁ…っ、」
頭を撫でて、大丈夫か?なんて担任教師らしく心配する。
おそらく初めて蜂の体液にあてられた彼は、さっきまでかいていなかった汗で首筋を濡らしながら、未だ続く眩暈を自覚するので精一杯な様子だった。
「具合悪そうだな…車で送っていくよ」
「…、」
「黒井、おいで」
腕を引いて呼べば、言われるまま立ち上がって俺についてくる。酩酊状態のまま、ふらふらとおぼつかない足取りで階段を降り靴も履き替えて、俺の車に自身の足で乗り込んだ。
「良い子。よく出来ました。あとは帰るだけだから、眠っていていいよ」
頭を撫でてそう囁けば、彼ははぁ…、と身体の力を抜いて、瞼を下ろした。
コメント
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(しばらく画面を見つめて、そっと息を吸う)……わあ……。 まず、バタフライバースの設定がすごく丁寧で、読みながら自然と世界観に沈んでいきました。特に蜂が唯一自分の性質を自覚する種、っていうのが、この先生の執着の根っこにある感じがして、背筋がゾクっとしました。 ノアくんとの距離の取り方も、教師としての立場を利用しながら、三年間ずっと待ってたっていう感情の重みが伝わってきて……最後のキスのシーン、一気に空気が変わったのが分かって、ちょっと心臓が痛かったです。あの「おいで」の一言で、すべてが決まってしまう感じが、すごく好きです。 夜見さんの作品、いつも「闇」がちゃんと物語の芯になってて、読んでるこっちの感情まで整理されていく気がします。続き、すごく気になります……。