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「─■■■■■■■」
対面するように私の上にぽんと座って、いつの間にか私の首に腕を回していた彼女はそう呟いた。綺麗な瞳がこちらをハッキリと捉えている。
「なんだい、唐突に愛の告白なんてしちゃって。柄でもないだろうに」
「いいでしょ、たまには」
そう言って彼女は、首に回していた右腕を下ろして、そっと私の顎を軽く掴んだ後、触れるようなキスをしていった。柔らかくて、けれど、殆ど感触は残らない。そんなことをしたという事をすぐに忘れてしまいそうな程の軽すぎるキスをして、彼女は手を下ろして、また私の首に腕を回した。
「─君、まさか他の人にもフラフラ言い回ってるんじゃないだろうね」
「嫉妬かい?可愛いこともするもんだねぇ、女誑し君」
くすくすと笑う彼女の顔がどうにも気に食わず、その笑みを剥がしてやりたい気持ちになって、私は彼女が少し前から付け始めたチョーカーをくいっと引っ張った。不意に彼女の漏らした息が聞こえる。指を引いて、彼女の濁った瞳が近くなって。そのまま唇を合わせて、するりと舌を入れてみれば、思いのほか彼女は動揺していて、不意にトントンと胸元を叩かれた。別にやめてやる義理は無かったのだけれど、彼女の顔がついつい気になってしまって、口を離してしまった。チョーカーから手を退けて、彼女の顔を見てみれば、頬は赤らんでいて、目線が合わず、恥ずかしげに顔を逸らしていた。これだから止められないのだと言ってやりたかったけれど、言う義理はない。
「ちょっと太宰、キミ、何してくれちゃってんの」
「何するも何も、ただ君がしてくることをし返しただけだけど?」
彼女は一瞬閉口して、その後すぐ口を開いて、火照った顔で私を見つめた。そして、やっぱり恥ずかしげな顔をしながらこちらを睨むように見つめて、少し震えた声色で言葉を発した。
「─この、泥棒猫」
「何を取られたって言うつもりだい、飼い猫さん?」
するりと彼女の熱い頬に手を当てて尋ねてみると、彼女はまた伏しながら目を逸らして、髪を耳にかけた。きらりといつものヘアピンが反射して、それが嫌に目に付いて離れない。頬に当てていた手を少し上にズラして、ぱっとヘアピンを取る。はらりと髪が彼女の顔に流れて、その愉快な顔を隠してしまった。
「取るならもっとせめて、かっこつけたものを取って欲しいんだけど」
「へぇ?例えば?」
「言わせないでよ、変態」
彼女はもう一度髪を耳にかける仕草をして、その赤らんだ顔をはっきりと晒した。視線は未だ合わない。そのせいで、無駄な好奇心がくすぐられてしまう。
「キミのそういうとこ、僕嫌いだ」
「顔を赤くしてしまっているくせに、嫌いだなんて。君こそ随分可愛らしいじゃないか。ねぇ?」
彼女の手をそっと取って、手の甲にキスを落とす。柔らかくて少し冷たいそれが唇に触れる。顔を上げてみれば、彼女の顔は赤らんだままで、戸惑ったような、焦っているような、とにかく面白い顔をしていた。キス一つでよくこんなにもいい反応ができるものだ、と思う。
「駄目だよ、キミ。本当に駄目だ」
「君が私に駄目なんて言葉が使えるとでも?」
「僕に序列を持ち出さないでくれる?」