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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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教会本部の人間は、真面目なブロン司教が気にくわないのかも知れない。だが、なぜオルブライト子爵までも捕らえられたのかはわからなかった。それに教会が貴族を捕らえるなど、前例のないことだった。


「ルフス、一つ確認したいことがありますの、教会本部の台帳の開示請求をすることはできますか?」


ルーファスは少し考え首を振る。


「残念ながらそれは不可能です。教会の出入金台帳は、不正のないように教会本部の厳重な管理下にあって、おいそれと開示してもらえるものではありませんから」


「そうですの」


アルメリアはがっかりした。正規のルートから台帳の情報を手にい入れられれば、それにこしたことはなかったからだ。

そのとき部屋にリカオンが訪れた。アルメリアはリカオンの姿が視界に入ると、慌てて立ち上がり駆け寄った。


「リカオン、大変なことになりましたわね。今ルフスと一緒に作戦会議をしようとしていたところですの」


だが、リカオンからは予想もしなかった返事が返ってきた。


「なんの作戦会議です? 僕はお嬢様がなかなかエントランスにお見えにならないから、迎えにきただけですが」


アルメリアはリカオンがまだ、オルブライト子爵が捕らえられたことを知らないのだと思い、慌てて伝える。


「リカオン、落ち着いて聞いてちょうだい。オルブライト子爵が……」


そこまで言うと、リカオンは不機嫌そうに答える。


「お嬢様、知ってます。オルブライト子爵が捕らえられたのでしょう? でもそれは自業自得ですから」


「でしたら、そんなに落ち着いている場合ではありませんでしょう?! 子爵の冤罪を晴らすための作戦を考えなくては!」


リカオンはこの令嬢何を言っているんだ? とでも言いたげな不思議そうな、それでいて呆れたような顔をした。アルメリアはそんなリカオンを見て、苛立ちを覚えていた。


リカオンは苦笑しながら、そんなアルメリアに忠告する。


「無駄だと思いますよ? 証拠は揃っているのでしょう? オルブライト子爵は横領をしたのですから、捕らえられて当然ですよ。それに、関わるとお嬢様まで巻き込まれかねませんから、関わらない方が得策です。それよりも早くしないと、今日の予定が……」


そう言いかけたとき、アルメリアはリカオンの面前に立つと、両腕を掴み瞳を見据えて言った。


「いい加減になさいませ! 貴男はいつまで子どものままでいるつもりですの! このさい貴男がオルブライト子爵のことをどう思っているかなんて、関係ありません! 貴男はオルブライト家の人間でしょう? それならば不貞腐れていないで、これからどうすべきか、オルブライトの人間としてちゃんと現実を見て考えなさいませ!」


そこまで言うと、つかんでいたリカオンの腕を離した。ここまで忠告してもなにも響かないなら、リカオンは放っておいて、ルーファスと何とかするしかないと思っていた。

すると渋々と言った感じでリカオンが言った。


「わかりました。それがお嬢様のご命令なのでしょうから、僕はそれにしたがいます」


そう答えた。アルメリアは微笑み大きく頷いてみせた。


「よろしい。じゃあ、今日はここで作戦会議ですわ」


心底嫌そうな顔をしたリカオンを無視して、アルメリアはソファに腰掛けた。そして、開口一番にルーファスに質問する。


「ルフス、教会本部の出入金台帳がどこに管理されているかご存知?」


ルーファスは腕を組み、しばらく考えると答える。


「場所だけなら、ですが。厳重な管理下にありますから、私のような者が近寄れる場所ではありません」


「窓はありますの?」


「ありますが、空調用のとても小さな窓です」


それを聞いていたリカオンは、アルメリアの顔を呆れたように見つめる。


「お嬢様、まさか窓から入るおつもりですか?」


アルメリアは苦笑し首を振った。


「その方法もありましたわね。侵入する方法を考えはしましたけれど、窓から侵入だなんて思い付きもしませんでしたわ。私はもしも侵入したときのために、退路がないか確認したんですの」


先ほどからリカオンの態度に少し腹を立てていたアルメリアは、思わず角の立つ言い方をした。言われたリカオンもむっとした様子になったが、それを無視してリカオンに訊いた。


「リカオン、オルブライト子爵からなにか聞いていませんこと?」


「いえ、特になにも。お互いにあまり話はしませんから」


そう言ったあと、なにかを思いだしたように言った。


「そう言えば、オルブライト子爵は問診官たちに連行される前に『なにかあれば孤児院を訪ねなさい』と言っていました。ブロン司教も捕らえられたのでしょう? 助祭は司教からなにか聞いていないのですか?」


「いいえ、私も特には。それにこんなことになるとは思ってもみなかったでしょうし」


ルーファスは悲しそうに微笑んだ。アルメリアはペルシックに目配せすると、口を開く。


「とにかく、オルブライト子爵が、その状況でなんの考えもなしに孤児院へ行くよう言ったとは思えませんわ。今日は登城せず、孤児院へ向かいます。きっとなにかありますわ」


「ありがとうございます。何でも協力いたします」


ルーファスはもう一度深々頭を下げたが、その横でリカオンは、眉根にシワを寄せ窓の外を見つめていた。

そんな様子を見てアルメリアは、リカオンとオルブライト子爵の間にはなにかあるのだろうと思いながら、急いで孤児院へ向かう準備を整えた。


こうしてルーファスと共に孤児院へ向かったものの、なにを調べれば良いか考えていなかった。相乗りした馬車の中でルーファスに尋ねる。


「ルフス、ブロン司教がここ最近、特に出入りしている部屋はありまして?」


「出入りしている部屋ですか? パーテルは孤児院に来ると、すぐに子どもたちの顔を見てお話をされるので、一番出入りしている部屋は子どもたちの部屋ですかね。それ意外はほとんど立ち寄らず、事務仕事も子どもたちを見守りながら行っていましたから、それ以外だと食堂ぐらいでしょうか」


そこでアルメリアは、庭の片隅に物置小屋があったのを思い出す。


「庭の物置小屋には出入りされていないかしら?」


「あそこは保管しなければいけない物がしまってあるだけで、誰も近づいてはいないと思います」


アルメリアは微笑む。


「だからといって、誰も近づいていないとは言いきれませんわよね」


「確かに、そうですね」


孤児院に着いたら、アルメリアたちは物置小屋を。ルーファスは、子どもたちの部屋を調べてみることにした。

ここのところ忙しくしていて、孤児院に来るのは久しぶりだったので着くとすぐに子どもたちに囲まれた。すぐにルーファスがそんな子どもたちに注意する。


「こら、今日もアンジーたちはお仕事できてるんですよ。邪魔したら、仕事が終わらなくていつまで経ってもみんなと遊べないでしょう? 後で遊んでもらいましょうね」      

悪役令嬢は救国したいだけなのに、いつの間にか攻略対象と皇帝に溺愛されてました

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