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〇〇「……さて、水曜か」
部室に入ると、すでに雪華が机に頬杖をついて待っていた。
明るい笑顔と、ひらひらした仕草。だけど、その裏に何を考えているのかはよく分からない。
雪華「〇〇くん、今日ボクと組むんだよ〜!なんかドキドキするねっ♪」
〇〇「……ああ、よろしく」
どうも、苦手だ。
彼女のぶりっこ調子は悪気がないのは分かるが、俺の調子を狂わせてくる。
雪華「ねぇねぇ、聞いて聞いてっ。今日ね、朝ごはんにパンケーキ食べたんだぁ!しかもハート型っ♡かわいくない?」
〇〇「……いや、朝から甘いの食えるのか……?」
雪華「えー、そこツッコむとこ?普通“いいな”とか“おいしそう”って言ってくれるんじゃないの〜?」
(なんで俺がそんなこと言わなきゃいけないんだ……)
雪華はくすくす笑って、わざと俺の近くに椅子を寄せてくる。
ほんの少し距離が近くて、やりづらい。
雪華「でもね、〇〇くんと一緒にペア組むの、実は楽しみにしてたんだよ」
〇〇「……そうなのか」
雪華「うん。だって〇〇くんって、あんまり自分のこと話してくれないでしょ?だから気になるの」
……やっぱりこういう子だ。ぐいぐい入ってくる。
〇〇「別に、話すほどのこともない」
雪華「そーゆーのが一番気になるんだってばぁ!……ね、〇〇くん。ボクのこと、かわいいって思ったことある?」
唐突な質問。
俺は返答に詰まった。
〇〇「……なんで急に」
雪華「だってぇ、心理実験でしょ?人の心を探るってやつ!」
〇〇「……なるほどな」
雪華はぱちんと指を鳴らして笑った。
ふざけているようで、その目は少しだけ真剣だった。
雪華「ボクね、みんなに“かわいい”って言われるけど……〇〇くんの言葉なら、ちょっと違う気がするんだ」
〇〇「……」
そんなふうに言われると、困る。
心の奥を無理やり覗かれている気分だ。
雪華「ま、いっか♪ じゃあボクのこともっと知ってくれるように、またお話ししよっ?」
〇〇「……ああ」
雪華は満足げに笑った。
その笑顔はぶりっ子の仮面のように見えるのに、妙に胸に残る。