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〇〇「……木曜か」
部室に入ると、窓際に一人、もねが座っていた。
ボブぐらいの黄金を輝かせ、外の景色を眺める横顔。相変わらず感情の読めない、静かな雰囲気だ。
〇〇「今日は……俺ともね、か」
もね「……うん」
返ってきたのは、それだけ。
短くて、淡白。でも確かに聞こえた。
俺はもねの向かいに座った。沈黙が、部屋を包む。
〇〇「……何をすればいいんだろうな」
もね「……」
〇〇「心理実験って言っても、会話しなきゃならないだろ?」
もね「……会話」
彼女はぽつりと繰り返すだけ。
その声音には拒絶も好意もなく、ただ静かにそこにある感じがした。
しばらく沈黙。
耐えられなくなった俺が口を開く。
〇〇「……お前、普段は何してるんだ?」
もね「……本」
〇〇「読書か」
もね「……」
また沈黙。
でも、会話を打ち切ったわけではなく、返す言葉がないだけのように見えた。
〇〇「……じゃあ、好きな本は?」
もね「……推理」
〇〇「推理小説?」
もね「……うん」
それだけ。けれど少し、声が柔らかくなった気がする。
俺はそれを逃さず、続けた。
〇〇「……じゃあ今度、オススメ教えてくれよ」
もね「……考える」
短い。だが確かに約束めいた響きがあった。
沈黙の多い時間。
けれど不思議と嫌ではなかった。
会話は少ないけれど、もねの視線や小さな反応が、彼女の内面を少しずつ見せてくるようで。
〇〇(……こういう静かな時間も悪くないな)