TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

タイトル、作家名、タグで検索

テラーノベル(Teller Novel)
シェアするシェアする
報告する

あの日から毎日と言ってもいいくらい、あの手紙は届いた。始まりは決まって『拝啓、神様へ』で、内容も何も変わらない。最後には美しい睡蓮の花が咲いている。一通から増え続け、まるで山のようになる。始まりの一通と何一つ変わらないファンレターは、少しづつ不気味なものへと変化していった。


「今日も来てるね、睡蓮さん」


正体不明の手紙を、俺達は花の名前からとって『睡蓮さん』と読んでいた。『睡蓮さん』からの手紙は、これで何通目だろうか。両手を使っても数え切れない数となったファンレターは、もう感触もしっかりと覚えてしまった。届く度に触り、読み、最後には睡蓮を見て。それを何度も繰り返していれば、嫌でも覚えるだろう。


「ここまで来ると、不気味なんだけど…」


「まあまあ、僕たちのショーを楽しみにはしているみたいだし、悪く言わないであげよう」


「…嗚呼、そうだな!この『睡蓮さん』も1人のファンなんだ!有難くこの手紙を受け取ろう!」


「うん!そうだね!ガクガクッ~ブルブルッ~ってしてたら、『睡蓮さん』もしょんぼりしちゃうもんね!」


「…………そうだね」









こうは言っったものの、1度不気味なものだと認識してしまったからだろうか。有難く受け取ろうとはしているのに、やはり心は正直で、どこかでは恐ろしく思っていた。皆で平等にわけあって『睡蓮さん』からの手紙がギュウギュウに詰め込まれた箱を、クローゼットの奥へ閉まってしまう。ちょっとでも遠ざけようとしてるなんて、最低だなと思っても、やめれることはなかった。





『睡蓮さん』

面白い名前をつけたな、と思う。

ゲームのマッチング待機中、大きなクッションに背を預けながら、天井にかざした手紙を見て思った。真っ白な封筒に汚れはひとつなく、美しい信仰心を表しているように見えた。実際は、汚い汚い信仰心から成り立っているのに。


泥で汚れた睡蓮に、『純粋』なんて似合わない。


この『睡蓮さん』に合う言葉なんて、『不純』だとかそういったものだろう。


マッチングした音がする。手紙を机の上に置き、体を起こす。リモコンを握り直し、画面に向きあった。

この作品はいかがでしたか?

11

コメント

0

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store