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篠原愛紀
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ドンッ!
「——!?」
突然
身体に強い衝撃が走る
「大丈夫だから」
「何があっても俺が守るから」
「過去がどうあろうと俺たちが進む先は未来だから」
私をきつく抱きしめるリュカ
それまで何も語ろうとせず
無言で私の話を聞いていた
私の思考が
いつもの陰鬱な殻に籠りかけた刹那
寸でのところで止めてくれた
私の運命の針が戻りかけたのを
未来へと踏み留まらせてくれた
伝わるリュカの体温
落ち着くリュカの匂い
それが
私の心を刺激し
私の涙を誘引する
とめどなく流れ落ちる涙
まるで
老廃物を排出するかのように
憑き物を流れ落とすかのように
今まで泣いた事などなかった
リュカと出会うまでは
リュカと出会って
泣く機会が増えた気がする
悪い気分じゃない
心が浄化されていくのを感じる
今まで心に蓋をして
堪え続けた感情
堪え続けた涙
凝り固まった陰鬱な私の運命を
涙が洗い流してくれる
リュカの腕に抱かれ私は
何も語らず
ただひたすらに涙を流した
それを
私をきつく抱きしめリュカは
無言で受け入れてくれた
私の全てを——
***
その日
リュカは私を受け入れ
私はリュカを受け入れる
私は
またリュカの事を知った
今まで知らなかった事
薄く見えた唇が
意外にもとても柔らかい事
実際は見た目以上に筋肉質で
着痩せする事
柔らかな唇の肉感が神経を支配し
唾液の絡まる濁音が鼓膜を支配する
密着する温かな人肌が私に安心を与え
擦れ合う人肌が感覚を鋭敏にする
室内は一面漆黒の闇
そこに窓から差し込む月光
満月は朱く染まり大きく
大きな窓一面に映る
満月を背に
映るリュカのシルエットは
とても猛々しく
まるで獰猛な獣の様に見える
引き締まった筋肉質の体から
湯気が立ち昇るほどの灼熱の体温
私は
それに包まれ
それに安心する
そして
彼を受け入れる——
“ オスの狼はメスの反応を注意深く観察し、その受容度を確認する—— ”
きっと彼は
今まで待ってくれていたんだ
私の気持ちの整理がつくまで
“ 狼は嗅覚と視覚を駆使して相手の感情や状態を敏感に察知する—— ”
きっと彼は
私の心情を解っていたんだ
だから心配して
そっと寄り添いつつも
何も言わず
私の気持ちの整理がつくまで
待ってくれていたんだ
リュカの分厚い胸に抱かれ
圧し掛かるリュカの重さが心地良い
リュカの灼熱の体温が
私の心を溶かし
私の理性をも溶かす
私は
またリュカの事を知った
今まで知らなかったリュカの事
冷徹でシビアな会社での彼
どこか天然で愛くるしい彼
そのギャップが堪らなく愛おしかった
だけど
今の彼は
そのどちらとも違う
ギャップはおろか
まるで別人のように
激しく
まるで狼のように
猛々しい
獣の様な自然的なリュカの匂い
オスの様にワイルドなリュカの匂い
汗ばむ体から湧き立つ匂いが鼻を突き
脳と子宮を刺激して止まない
溢れて止まない粘液に
激しく止まない摩擦
私の体を滑るリュカの手と
私の狭間で滑るリュカの腰
五感を刺激され
五感と五体を支配され
未開の快楽に怯えつつ
リュカを信じて首元に腕を回す
“ 狼の交尾は数回にわたって続き、数日間繰り返される。受精率を高めるための生存戦略—— ”
止まらないリュカ
止まない刺激
心を支配され
体をも支配され続け
朦朧とする意識
鋭敏になる感覚と反比例する様に
薄れゆく曖昧な意識
時間感覚が曖昧になり
リュカに抱かれ
私はもう
リュカに抱き着き
リュカにすがる事しか出来ない
こんなにされてしまったら
こんなにも愛されてしまったら
私は
もう戻れないかもしれない
頭ではわかっていても
体は離れられないかもしれない
私の心は
彼のものにされてしまう——
その夜
私は
熱く
激しく
何度も
繰り返し
リュカに愛され
永遠に愛情を注がれ続け
幸福の脳内麻薬で満たされ
尽きる事のない
未知の快楽に溺れ続け
五感と
五体を
溺愛され続けた
心と
体が
溶けるまで
永遠に
溺愛され続け
朦朧とした私の意識は
限界を迎える
徐々に
次第に
意識が遠のき
やがて
完全なる無へと堕ちてゆく——