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SPRUNKI

2 - 酒の肴に

♥

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2025年01月01日

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どうも皆様、サカナです

溜まっていく下書きに恐れをなしています

超スランプ…超読みにくいです、すみません

一応書き初めです

ジェヴィンループ説がとっても好きなので…それで書いてます

元旦になんつーもん書いとるんやとは思いますが…

ガーノルド、生存おめでとう(地獄 )

ガノほぼ出てこないです

























世界が狂った。

またあれが起こってしまう。

止めなくては。


暗黒を彷彿とさせる不気味な空を睨みつけながら、フードを被ったジェヴィンは斧を片手に外へ駆け出す。

今度こそ、救わなくては。

世界を狂わせた犯人を、この手で罰しなくては。

なによりも、大切な人々を奪い蹴散らし貶める悪魔を許しておけるわけがない。




しかし、世界は結局狂ったストーリーを歩み続けた。

おかしくなったMr.サン、Mr.ツリー、ダープルに心を痛めながらウェンダを探して駆け回っていたが、発見した時にはもう遅い。

自慢していた毛艶の良い体毛を血に染まらせ、一本のナイフだけで惨状を引き起こしていた。

「…ウェンダ、貴女は本当は優しいひとであるはずなのに」

そう独り言を呟いて、ジェヴィンは自身の教会に集めた生存者たちを一瞥する。

包帯を巻いたピンキーやブラッドたちはもう寝入っていて、自分が使っていた薄い毛布の中で体を丸めていた。

数少ない無傷であるグレイは窓際から月を眺めており、ガーノルドは別室でファンボットとファンコンピューターの整備をしている。

結局また失敗なのだ。

自分は、いつこのループから抜け出せるのやら。

「…おや、これは…グレイさん、少しこちらへ来ていただけますか」

「へ?あ、はい…どうかしましたか? 」

控えめな声で返事をして、窓際からジェヴィンの方へと近づいてくる。

「お酒を見つけました。気分転換にいかがでしょうか」

「え゛」

「?どうかいたしましたか」

「い、いや…ジェヴィンさんってお酒飲むんですね、と思って…」

お酒の瓶を持っているジェヴィンの姿に違和感を感じるのか、グレイは驚いたように目を見開いた。

聖職者にお酒なんて、不釣り合いな気もする。

「正確にはタナーです。彼、時々勝手にお酒を貯蔵しにくるので」

懐かしそうに目を細め、グレイには微笑んだようにも見えた。

「そうだったんですか…ジェヴィンさんは聖職者みたいですけど、飲んでも良いんですか?」

「神はこの程度で怒りなどしません。グレイさんはずっと気を張っているようですから、少しくらい飲んで、休みましょう」

「あはは…ありがとうございます」






2人は眠っているピンキーたちを起こさないように部屋を移動し、小さな椅子に腰掛けた。

少し待っていると、ジェヴィンはグラスを2つ持って戻ってくる。

「ジェヴィンさんって、本当に冷静ですよね」

グラスに注がれていくワインを見ながら、グレイは言う。

「そうでもありませんよ。私からすれば、貴方の方が冷静沈着に見えます」

「でも、こんな事態でもジェヴィンさんは落ち着いて僕らを集めて、どう解決しようかって、先を考えられてるじゃないですか。…僕には、できないことですよ」

「…私、初めは焦って混乱して、怪我もたくさんしましたよ。確か、片目くらいは持っていかれましたね」

「…え?」

ワインを一口飲んで、ジェヴィンは息を吐く。

しかしグレイには、ジェヴィンの発言の意味がわからなかった。

ジェヴィンは焦るどころか顔色ひとつも変えないで、自分と同じく無傷の生存者だ。

片目を失くしたなんてこともない、冷静そのものの態度。

困惑するグレイと目を合わせ、ジェヴィンは言う。

「貴方には、お教えしましょうか」

「…何を、ですか?」

「私の、大罪について」

ごくりと生唾を飲み込んで、グレイは静かに話を聞いた。

ジェヴィンの罪という名の、地獄のループの話を。











私は、普通に生きていました。

今のように宗教に入ってはいましたが、皆さんとの交流も怠らず、それなりの日々。

ただ平穏な日常がいつまで続くかだなんて、考えたこともありませんでした。

──ジェヴィンの顔が曇る。ワインの入ったグラスを握り、恨めしそうに続きを話した──

そんなある時です、 今日のように世界がおかしくなり、日常の全てが壊れたのは。

そこは地獄でした。

皆が頼る私の幼馴染は撃ち殺され、優しかった少年少女が暴れ、幼き未来ある命も、懸命に希望を望んだ命も、みんながみんな死に絶え、生き残ったのは今この教会にいるメンバーのみ。

ガーノルドさんは、亡くなっていましたが。

私はウェンダに襲われて、片目と数多くの怪我を代償に生きました。

無傷だったのは貴方と、あのロボットだけです。

私は嘆きました。

どうしてこんなことになったのか、神はいらっしゃらないのか、いつ地獄は終わるのか。

願うならば、この全てが夢であれ…と。

皆が大切なものを失い、悲しみ、原因不明と頭を抱えたその最初の地獄は、異常者たちに見つかって、すぐさま終わりを迎えました。

──終わりを迎えたということはとどのつまり、全員まとめて死んでしまったのだろう。

今自分たちを守り、導いたジェヴィンでさえも──

気がつけば、私はこの教会のベッドで目を覚ましました。

私は喜びました。

あの地獄は幻だった、誰も死んでなどいない、また平穏な日常に戻れる。

そんな甘い考えで、私は勇敢にも死地へ向かい、その命を落とした幼馴染を尋ねました。

彼は息をして、私を見つめて、体を動かして、元気にしています。

あの時の安堵感は忘れられません、それほどまでに不安定だった自分にも驚かされました。

見知った出来事が多く起こり、違和感は感じていましたが、そんな違和感をものともしない嬉しさがあり、日常を過ごし直したのです。

それが間違いでした。

しばらく経つと、また地獄へ突き落とされて、また地獄を目の当たりにさせられました。

またも、私は片目の欠損と傷を抱えました。

生き残ったメンバーも、凡そ最後に襲ってきた相手も同じ。

また死にました。

また目覚めました。

焦燥感と緊迫感でどうにかなりそうでしたが、青い空を見ると安心できました。

伊達に長生きはしていませんから、混乱して何もわからないまま死ぬのはそこで終わりにしたいと考え、自己防衛のために動き始めたのも、ここからです。

手始めにナイフを持ち、自衛術を学び、タナーから色々教えていただきました。

結局、片目を失わずに済んだだけでしたがね。

──普段無口なジェヴィンから語られるそれは、何よりも悲壮感を秘めていた。

傾けられたワインを見つめる瞳は、自分が見た地獄を何度見届けてきたのだろう…グレイはそう思いながら、乾いた喉を潤すようにワインを一口飲んだ──

そして、私は気がついたのです。

このループを知っているのは、覚えているのは私だけ。

となれば、皆さんを救えるのは私以外にいません。

私は神の使いで、このループを終わらせることこそが私の使命なのだと。

人手欲しさにタナーにこの話をしたことも何度かありましたけれど、彼はその度に信じて、私に様々なことを教え、そして散っていきました。

彼の保安官魂は本物ですよ、私がどれだけ最善を尽くして努力しても、タナーは仲間を見捨てられないと言って、ウェンダに殺されに行くのですから。

それが悲しくて、私自身の手でタナーやウェンダたちを殺したこともありました。

皆を救えないという業に神はお怒りだったというのに、 神の使いたる私がそんなことをしてしまうものですから。

その後はよく覚えていません。

神罰ですかね、気が狂ったんでしょう。

けれど、殺した時の感触だけは残っているんです。

オワックスさんを避けるラディさんのお気持ちが、よくわかりました。

──咄嗟に震えたジェヴィンの手を握り、大丈夫だと声をかける。

彼がよく言う“神の使い”という言葉にも、そんな裏があったとは知らなかった。

護身用だと言っていた斧は、この時のためのもの。

完全に押し潰される前にガーノルドを助けることができたのも、彼の精一杯の努力だ。

確実に何かは進んでいる。

しかし、また別の何かが足りないのだろう。





それからもグレイは、夜通し 様々な話を聞いた。

タナーが生き残った世界の話。

ジェヴィン以外が死んだ世界の話。

この現象の黒幕である“ブラック”に気づいた話。

グレイは知らない様々なループの中の、ジェヴィンの思い出話。

ひとつひとつを丁寧に話すジェヴィンから感じ取れたのは、心底自分たちを大切にしてくれているということ。

精神を壊してもおかしくない状況で、自分たちを助けるためだけにループを繰り返している。

ピンキーやガーノルドは怪しいと言っていたけれど、グレイは彼を信じたいと思った。

「…ジェヴィンさん」

「なんでしょうか。少し、話しすぎましたかね」

「い、いや、それであなたが楽になるなら大丈夫です。そうじゃなくて…その…」

言い淀むグレイを見つめ、残り少ないワインを飲み干す。

「きっと、あなたはまたループするんでしょ?」

「ええ。皆さんを救うために、私は何度でもいたしますよ」

「なら…次のループでは、僕を巻き込んでください。この話を、何も知らなかった僕にしてください」

「…きっと信じていただけません」

「ループしていても、僕は僕です。今の僕が信じたんですから、きっと大丈夫ですよ」

またジェヴィンの手を取り、しっかりと目を合わせた。

「いつまでも無理をしないでください」

「…変な方ですね」

そう言いながら、ジェヴィンはくつくつと笑う。

「わ、笑わないでくださいよ…地味な僕の手なんていりませんか?」

「いいえ、そんなことは決してありません。わかりました。そんなに言うなら、次回からよろしくお願いしますね」

「…はい!」

──






さあ、信じる気にはなりましたか。

×××回目のグレイさん。

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