テラーノベル
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あおさんへ。
素敵なアイデアありがとうございます。
そしていつもコメントありがとうございます。
あっさりめにふわっとした雰囲気の本編になりました。
ヒー□ーショーに基づいた過去捏造含みます。
OK?
ガチャン、と勢いよくドアを閉めた。場所は本部の使われていない会議室。やっと1人になれた。深く息をつくが、胸に溜まった重く怠い空気は出て行ってくれない。
「忌み子なんでしょ?あのヒーロー」
さっき救助した学生の何気ない一言。隣にいた友人と思われる同じ制服を着たもう一人の学生が慌てて肘で彼をこずいていた。
「馬鹿、そんなん言うな」
何の気なしに出た一言だったんだろう。差別や軽蔑から縁遠いところで育ったから簡単に出た言葉だったんだろう。分かっている。あの学生に悪気はない。
それなのに、その何気ない一言が心に淀んだ空気をもたらす。
ぼくだってお前みたいに何も知らないでいたかった。産まれた時にたまたまそうだっただけで疎まれて、周囲からの目に怯えなくていいような、罵詈雑言から耳を塞ぐことのないような、平和なところで過ごしていたかった。
「はぁ…」
もう一度ため息をつくが、モヤモヤは消えない。ただの一言で他人を妬んでしまう自分に嫌気がさしてしまう。
疲れたな。
イスに座って背もたれに体を預けて天井を見上げる。そのまま目を閉じた。このまま眠る訳にはいかないが、目を閉じていたい。このモヤモヤした感情を見えないようにしていたい。
コンコン
ドアをノックする音。ぱっと目を開けて視線をやる。
「あー、いたいた」
呑気な間延びした声。ふわり揺れる柔らかい長い髪。入ってきたのは星導だった。後ろ手でドアを閉めると隣のイスに腰をかけてぼくの顔をのぞき込んできた。
「おつかれ」
「んわ、なんや」
ぽんぽん、と唐突に頭を撫でられ身を引く。その勢いでキャスター付きのイスはガラガラと後ろへと後退した。
星導はイスごと近くに寄ってきて、またぼくの頭の方に手を伸ばした。
「なに?」
「よしよししようと思って」
「なんで?」
「なんかあったんでしょう?」
不服に思って聞けば彼は首を傾げて言ってくる。優しく見守るような目線がなんだか痒くて目をそらす。
「…なんにもない」
顔ごと背ければ髪に優しく触れられた。そっと割れ物に触れるような手つきにチラ、と星導の方を見る。
「なにもないから」
「うん」
穏やかな表情でぼくを見つめていた。まるでぐずった子供を慰めている親のようだ。なんか癪だ。
手首を掴めば反対の手で触れてくる。髪を梳くように撫でられて首をくすめる。
「なんにもないって言ってるやろ」
星導の撫でる手を止めようともう一方の手首も掴む。半ば鬱陶しくなって鋭く射るように彼を見つめる。彼は瞬きを繰り返してから口を開いた。
「そんな顔してるのに?」
そんなってどんな。今度はこっちが瞬きを繰り返す番だった。手首を掴む力が緩む。
「何があったかは説明したくなかったら言わなくてもいいけど、疲れたくらいは言ってよ」
力が緩んだことをいいことに、わしゃ、と両手で頭を包むようにして撫でてくる。たった一言でふわ、と心が軽くなった感覚がした。
でも、なんだかそれが擽ったくて目をそらす。
「……ちょっとだけ疲れた」
口元を緩ませる星導。
「甘え下手だね。カゲツは」
突然視界が狭まる。柔らかい柔軟剤の香りに包まれて自分が彼に抱き締められているのを遅れて気が付いた。ぱさ、と長い髪が頬を掠める。突然の至近距離にびっくりして目を見開くが、何故か抵抗する気は起きなかった。
「今度から何かあった後に勝手に1人になろうとするのなしね」
するりと後頭部に彼の薄くて大きな手を感じた。心地良くぬくい。
「うん」
素直に返事をすれば、ぽんぽん、とまた彼の手を感じた。いつの間にかあのモヤモヤのことは気にならなくなっていた。
コメント
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ピリオド様、こちらこそいつも素敵なお話をありがとうございます🙇️rbの時折見せる面倒見の良さやお兄ちゃんぽさがとっても好きなので、それが全面に伝わってきて最高of最高でした…😭✨特にkgtの前ではその色がより濃く出てるな〜と感じていたので ドンピシャのシチュで嬉しかったです☺宝物をいただいたような気持ちで読ませていただきました、ありがとうございました!