注意
*こちら解説となります。
*彼岸のあなたへ 。を読んで頂いた方推奨です。
*解説:
今回のメインは"日記"。
+遊び心を入れたくなり、特殊な仕掛けをご用意しました。
それが世間一般的に言われる、叙述トリック。
*叙述トリックとは:文章の記述によって読者を誤解させ、わざと情報を隠蔽し真実を隠したり、誤った解釈を促したりする小説技法です。
参考:Wikipedia
本作品に登場する日記ページを紹介。(文は大まかな内容)
□月△日:晴れ
ここでは終始敬語の瑞様の日記が綴られています。日常の何気ない買い物の話を添えて。
□月×日:晴れ
夢の話と”あなた”が死んでから3ヶ月という情報。
△月△日:くもり
ついにリストカットに手を出した瑞様。
△月○日:あめ
少なくなってきたOD用の薬を買いに行く様子。
×月△日:はれ
メンバーに病院に連れて行かれる瑞様。様子見という処置になる。
○月○日:晴れ
居なくなった。今日から日記を付ける。
…はて、これ、読み方は本当に正解だったんですかね?
…今回のこだわり兼遊び心は"時系列"にあります。
これ実は、上から読むのは不正解です。
本来は下から読む想定で書き上げました。
上は現在、下は過去。
つまり最初、1周目は現在から過去までを見ています。
なので違和感を覚えた方も多いんじゃないでしょうか。
今回は"逆から読む"と言う点に置いて叙述トリックを活用させて頂きました。
下から読むと、
○月○日:晴れ
"あなた"が居なくなる。日記を付け始める。
×月△日:はれ
メンバーに病院に連れて行かれる。が、本人の意思とOD、リスカは行っていないので様子見。
△月○日:あめ
少なくなってきたOD用の薬を買いに行く。
△月△日:くもり
ついにリストカットに手を出す。
□月×日:晴れ
夢と”あなた”が死んでから3ヶ月
□月△日:晴れ
終始敬語の瑞様の日記。日常の何気ない買い物の話を添えて。
の流れになります。
綺麗ですね。先程より違和感が減りました。
*こだわり
日程の□、△、×、○には順番があり、左に行くほど後と言う細かい設定があります。
日記の月を見るとわかりやすいかと思われます。
*細かい伏線&違和感:
【□月△日:晴れ】
拝啓、彼岸のあなたへ。
天気の良き日々が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
こんな堅苦しい文章になってしまったこと、こんな結末になってしまったこと、申し訳ないです。
【□月×日:晴れ】
久しぶりに雨じゃなく、曇りでもなく、青い空を見上げることができた。
今日はあいつがいなくなって丁度3ヶ月。
あの日から毎日毎日、同じ夢を見る。
あの瞬間の夢。
れるの手は届かなくって、金属音が響いた交差点の夢。いつも起きたら汗がすごくて、震えが止まらない。
朝、カーテンから差し込む光がれるの目を潰してしまいそう。
"その筆跡はまるで、怯えたかのように強く歪んでいた。"
【△月△日:くもり】
今日、ついにリストカットに手を出した。
片手が全然上手く動かない。
今日、ゆうくんがうちに来た。
散らかった部屋、転がった割れ物を、悲しそうに見ていた。
れるちのペースで大丈夫だから、って優しく言ってくれた。
今日もお日様は見えない。
【△月○日:あめ】
しばらくカーテンを開けていない。
だけど、雨の音が聞こえるから今日は雨。
…そろそろ薬が尽きてきた。
でも外に出る気は起きない。
手足が鉛のように重たい。
"日記には、濡れた跡が出来ていた。"
【×月△日:はれ】
今日は、ゆうくんたちに病院に連れて行かれた。
お医者さんに紙を貰って、れるさんは入院したいですか?と聞かれた。
れるは大丈夫です、と答えた。
医者も大した実害が出ていないから、様子見と言う話に落ち着いた。
終始不安そうなメンバーを見ているとこちらが申し訳なくなる。
れるのためにここまでする理由がわからんくて、
本当はれるのことを疎ましく思っているのかと思うと涙が止まらんくて、苦しい。
全部嘘のように聞こえてくる自分の耳が嫌い
"日記のページは握りつぶしたかのように破けていた。"
【○月○日:晴れ】
君が居なくなった。
あれから何日たったかもわからない。
カーテンを閉めた。外を聞くとれるは壊れてしまいそだから。
薬の大量摂取に手を出した。一時的に幸福感を得られて、浮遊感が心地いい。
でもリスカには手を出す気になれなくて、天井を見上げてばかり。
最近は記憶もおぼろげになって、覚えていない。
少しでも覚えておくために
今日から、数日置きに日記を書くことにした。
違和感を表すものとしては天気、カーテン、自傷行為の順番、間に挟んだ日記の状態など。
上記で線を引いた場所が違和感や伏線になります。
*苦労したこと:
間に挟んだ日記の状態が1番苦労しました。
上下どちらから読んでも違和感を少なくしないとすぐバレてしまいそうだと感じたので。
でも、下から読んだ場合が1番納得しやすい理由にしたく、頭を捻りました。
筆跡が強く歪んでいるのはリストカットの傷の影響、
濡れた跡は涙の跡、握りつぶしたは自暴自棄な瑞様の精神状態、など。
最後は完全に言葉足らずにして、上読みの違和感を一旦消して、
その後の言葉に圧倒的な違和感を作るように。
あと単純に上から書いたので下から読み返す時を考えるのが大変でした。
作者としては理想を形にできて満足です。
*最後に
一番最初、時系列的には最後の日記、
3つ、違和感が残っています。
こんな堅苦しい文章になってしまったこと、こんな結末になってしまったこと、申し訳ないです。
一瞬どきっとして、震えてしまいましたが、大丈夫と答えることができました。
もしもう一度会えるなら、今回の話のお礼が言いたいです。
こんな結末とは、?
終わり?、終わりは描写されていませんが。
一瞬どきっとして震えた、?
なにか後ろめたいことがあったのでしょうか。
もしもう一度会えるなら、?
彼岸の先に居るあなたには、もう会えません。
こちら、本作ラストの疑問となります。
つまり、読者様にここの解釈を委ねることにします。
+方向に考えてくださっても、−方向に考えてくださっても構いません。
"彼は、最後どうなったのでしょうか"
…こちらの解答は用意しておりません。
お好きに解釈ください。
以上。
コメント
1件
解説ありがとうございます! 分かりやすかったです!