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翌日、銃の射撃訓練が行われていた。銃など持ったことがないメイは
周囲の喧騒と重厚な銃声に戸惑いを隠せなかった。
彼女の様子を見て、不思議そうに首をかしげる翔太が近づいてきた。
「メイ、学校で習っただろう?」と翔太が問いかける。
「あ、う、うん、そうなんだけど…」メイは言葉を濁しながら答える。
翔太はメイの後ろに立ち、彼女の手元を見つめながら銃の構え方を指導し始めた。
「しっかり握って…」と、彼の声が耳元に響く。
翔太の息遣いを感じるほど近くにいることに、心臓の鼓動が高まる
男子がこんなにも近くにいることに、メイは戸惑いと同時にドキドキしていた。
「おい、聞いてるのか?」翔太が注意を促す。
「ご、ごめん、聞いてなかった…」メイは焦りながら答える。
「なんで顔が赤いんだよ?苦しいのか?」と翔太が心配そうに尋ねる。
「いや、これはその…あはは…」メイは笑って誤魔化すが、その顔は真っ赤だった。
「変な奴!」翔太は笑いながら、自分の練習に戻っていった。
「ふぅ~」メイは深いため息をつき、少し安心した。
その時、部隊長の蓮が現れ、全員に向かって声をかけた。
「今日から都の見回りを行う。昨日、都に現れた魔獣の調査だ。
見つけても安易に近づくな。直ちに報告し、指示を待て。」
蓮が去ろうとしたとき、タケルが急に声を上げた。「蓮隊長!」
蓮は振り返り、「どうした?」と問いかける。
「銃を整備した時にケガをしました。医務室に行ってもいいですか?」
とタケルは手を見せながら言った。
「何、ケガだと?」蓮が驚いて確認すると、他の隊員たちも一斉に手を挙げた。
「隊長、俺も!」
「俺もケガしました!」
どうやら彼らの目的は看護師のアイのようだった。タケルは顔を赤らめながら叫んだ。
「お前ら、俺に便乗してるんじゃねーぞ!アイちゃんに手当てしてもらうのは俺だ!」
隊員の一人が返す「ふざけんな、俺もケガしたんだ!」
その光景に蓮はため息をつき、「おい、メイ、アイを呼んでこい」と
メイに指示を出した。男しかいないこの部隊では、看護師のアイは
隊員たちにとっての癒しでもあった。
これから起こるであろう魔獣討伐の前に、少しだけ隊員たちの
申し出を受け入れることにしたのだ。
「わかりました」とメイは答え、医務室に向かった。道すがら、
メイは微笑みながら思った。「みんな、アイさんのことが好きなのね」
この前会った先生もいるかもしれないと思うと、少し胸が高鳴った。
医務室のドアを軽くノックすると、中からアイの明るい声が聞こえた。
「はーい、どうぞ」
「失礼します」とメイがドアを開けると、そこにはアイと和真がいた。
メイは心の中で「先生、やっぱりイケメンだな」と和真の顔を見つめた。
和真が優しく問いかけた。「メイちゃん、どうしたの?」
「あ、えーっと…」メイは事情を話すと、
アイは嬉しそうに隊員たちのいる部屋に向かった。
メイも医務室を出ようとしたその時、和真が後ろから声をかける
「メイちゃん、体調はもういいの?」と和真が近づいて来る
思わぬ出来事にメイは一瞬息を飲み、緊張した声で答えた。
「え、は、はい、大丈夫です。」
和真は優しくメイを自分の方に向かせ、その深い瞳で彼女を見つめた。
「診察してあげようか?」と囁くように言いながら、彼の手はメイのアゴにそっと触れた。
メイの心臓は激しく鼓動を打ち始めた。
(これって、アゴをクイッとするやつ…!漫画でしか見たことない…)
彼女の心の中で叫びがこだまする。
和真の顔が徐々に近づいてくるにつれ、メイの視界は彼の顔で埋め尽くされていった。
彼の温かい息が彼女の肌に触れるのを感じ、心臓の鼓動が一層速まる。
「和真先生..」
「動かないで」
緊張のあまり、メイは目をぎゅっと閉じた。
(キ、キスされる…!)
しかし、和真の声がその期待を裏切った。
「顔色は悪くないね」彼の言葉に続き、メイの目を指で優しく開いた。
「貧血もないみたいだ」
メイは一瞬、何が起こっているのか理解できなかった。そして、
自分が勘違いしていたことに気づき、顔が真っ赤になるのを感じていた。
「アハハ、もう体調は大丈夫です」
「そう、良かった」
その瞬間、突然警報音が響き渡り、構内のアナウンスが流れた。
「緊急事態発生!」
「都の東に魔獣が出た模様、負傷者も出ています。
至急応戦に向かってください。」というアナウンスが響いた瞬間、
メイはとっさに和真から離れた。
「私、行かなきゃ。失礼します!」と急いで医務室を飛び出した。
和真はその場に取り残され、「行ってらっしゃい...」と小さく呟いた。
その目には、メイについて何かを感じ取ったかのような表情が浮かんでいた。