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翌朝。私は鏡の前で、入念に「桜川栞」を作り上げる。
クマをコンシーラーで消し、紅を差し、背筋を伸ばして15センチのハイヒールを履く。
ドアを開けると、昨夜の惨劇が嘘のように静まり返った廊下があった。
隣の部屋を見ないようにして、足早に階段を降りる。
(昨日のことは、全部忘れよう。私は完璧なキャリアウーマン。……そう、何事もなかった)
だが、駅へ向かう道すがら、カバンの中で小さな箱が揺れた。
昨夜、光からもらったたこ焼きの空きパック。
捨てそびれたそれが、私の「本当の生活」を証明しているようで胸が騒いだ。