テラーノベル
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初めて、リョーカと身体を重ねることができた次の日、俺の腕の中から涼ちゃんが起き上がる。俺は、気まずくて寝たふりを続けていると、涼ちゃんはそっと部屋を出ていった。
俺とリョーカがエッチした事、気付かれてないよな…と俺の心臓は早鐘を打っていたが、お互いに干渉しないルールなので、涼ちゃんごめん、と心の中でだけ、謝ることにした。
それからも、夜のデートは続いた。ただ、夜間の外出は、やっているお店が限られてくるため、ご飯を食べに出たり、ゲーセンに行ったり、散歩したり、できることは少なかった。そのうちに、リョーカもお家で過ごすことを希望し始めて、一緒にゲームをしたり、お酒を飲んだり、人目や時間を気にせずゆっくりと過ごせる時間はとても楽しかった。
俺たちはハグをしたり、どちらかの腕の中にいたりと、常にくっついていた。2人とも、この恋を1秒たりとも無駄にはできないと考えていたからだろう。
また、リョーカはほぼ毎日俺の身体を求めてきた。俺は初めの頃、リョーカの性被害のトラウマを心配して不安になったが、だんだんと純粋に俺への愛情で、純粋に繋がりを求めてくれていると感じたので、俺は安心して応えた。流石に毎日挿入まですると、涼ちゃんの身体がもたないとわかっているのか、お互いへのペッティングまでで終わる日もあったが、最終、俺もリョーカも我慢できずにヤッてしまう、という方が多かった。
俺もリョーカも、毎日幸せを感じていた。
ただ、昼間の涼ちゃんが、だんだんと弱ってきているようだった。レッスン中もすぐに息が上がり、俯き加減でしんどそうに休む時間が多くなった。 それはリョーカも同じで、目に見えて疲労が溜まっているのがわかった。
無理もない、1人の身体で、2人分の生活を送っているのだから。俺とリョーカの時間は、夜の7時過ぎから、朝の4時頃まで。そこから寝ても、8時には起きないとレッスンに間に合わないため、毎日4時間ほどしか眠れていないことになる。
元貴は、涼ちゃんの身体を心配して、ダンスレッスンの時間短縮をお願いしていた。涼ちゃんに持病がある、と説明したようだった。それによって、朝は10時から、夕方は5時まで、というレッスン時間になった。
それでも、元貴も涼ちゃんも、俺たちにもっと睡眠を取るよう言ってくることはしなかった。2人の思いやりに、俺はとても感謝した。俺らに、一緒に過ごす時間を減らすという選択はできない。涼ちゃんやリョーカの様子を見ていて、もう本当に時間がないのだ、と実感していたからだ。
ある日、涼ちゃんがレッスン中に倒れ、病院へと急いだ。
もう限界だ、という先生の話を、俺は震えながら聞いていた。やっぱり、やっぱり…。
リョーカが、いなくなる。
家に戻り、グッタリしている涼ちゃんを元貴に任せ、俺は1人部屋に行き、すぐに準備を始めた。
まず、おしゃれなモーニング探しから。これ、リョーカが食べてみたいって言ってたガレット。それが食べられるお店を探して電話をかけ、無理を言って予約を取らせてもらう。
次に、夢の国のチケットを取った。ベタだがこれも、テレビで流れたCMを、リョーカが目をキラキラさせて観ていたので、きっと憧れているんだろう、と思った。
そして、夜はこれまたおしゃれなホテルディナー。夜景の見えるレストランで、何かプレゼントを渡そう。窓際の一等席を予約した。
あらかたの予定を立て、それぞれの予約が終わると、俺は次に、2人へのお願いに向かった。リビングへ行くと、涼ちゃんがグッタリと元貴の肩にもたれかかっていた。
「若井…。 」
「涼ちゃん、大丈夫?」
「うん…ごめんね…ホントに…ごめん…。」
涙を流して謝る涼ちゃんに、俺は謝らないで、と伝えた。これは、わかってたことなんだから。いつか、終わりが来る恋だって。
俺は、元貴と涼ちゃんに、最後の1日を、俺とリョーカにください、と頭を下げた。
涼ちゃんは号泣してしまい、元貴は了承してくれた。
俺は、てっきり明日には人格統合するものと思っていたので、明後日だと聞いた時はホッとした。良かった、丸一日全てを、リョーカと過ごせる。初めての、1日だ。
俺はその後すぐ、涼ちゃんに少し協力してもらって、リョーカへのプレゼントを買いに走った。涼ちゃんの体調的に、外へ着いてきてもらうことは難しかったので、涼ちゃんのサイズを確認して、方々を探して回った。どの店でも、後日のお渡しになります、と言われてしまい、そりゃそーだよな…と肩を落としていると、元貴から連絡が入った。
個人の工房で、現品をそのまま渡してくれそうなところがあるから、サイズを今すぐ合わせてもらえるか行ってこい、と言われた。
もう諦めて別のものにしようかと考えていた俺は、希望を見出してそのお店へと急いだ。
俺の希望を伝えると、少しお時間いただきますが、最優先で対応させていただきます、と言ってもらえた。俺は安心して、ちょっと泣いてしまった。
夜になり、無事にプレゼントを受け取れた俺は、帰宅した。
涼ちゃんがお風呂に入っている間、俺の予約したお店で、どんなデートプランが立てられるか、それを元貴と相談していた。
「でもお前、涼ちゃんの記憶をリョーカが共有出来るなら、プレゼントも大体バレちゃうんじゃない?」
「あ、それは大丈夫だと思う。治療が進んだからか、前みたいに涼ちゃんの時の記憶はあまりないんだって。」
「そっか、よかったな。」
「リョーカもだいぶしんどそうにしてたし、そろそろだなって覚悟はしてたんだ。」
「そっか…。」
俺は、気にしていることを元貴に聞いた。
「でもさ、これ、俺が色々させてもらっちゃっていいの?」
結構、一世一代のデートプランを立てたつもりで、俺が元貴や涼ちゃんより先にやっちゃっていいのかなって、気になっていた。
「相手はリョーカだし、ノーカンだよノーカン。」
元貴は、涼ちゃんの時はもっと盛大にやるから、心配すんな、と軽くマウントを取られてしまった。俺は、元貴のこの優しさに、ずっと甘えてきてしまった。自分の恋人と友達が恋をする…そんな異常な状況を、よくぞここまで我慢してきてくれたものだ。
俺は、自分の心を犠牲にしてくれた元貴や涼ちゃんの為にも、明日のリョーカを世界一幸せにするんだ、と誓った。
夜になり、リョーカが部屋から出てきた。
俺は、その手を取り、すぐに自分の部屋へと引き入れた。
俺たちは、何も言わずに、ベッドで横になって、ずっとハグをしていた。リョーカに、身体が心配だから、今日はちゃんと睡眠を取ろう、と説得した。よほど疲れているのか、うん…とだけ言って、すぐに 眠りについた。
次の日の朝、涼ちゃんが目覚めた後、すぐに人格交代をしてくれて、再びリョーカが、元貴と一緒に部屋から出てきた。
「滉斗。」
「リョーカ、おはよ。」
俺たちは元貴の前でハグをする。
「んじゃ、早速だけど、お出かけの準備して!」
「え?うん…。」
一瞬の戸惑いを見せたが、嬉しそうに部屋へと入って行った。
すぐに、黒を基調とした大人めなファッションで出てきたリョーカに俺は思わず腰に手を回す。
「滉斗、こういうの好きでしょ。」
「すげぇ、かっこいい!すきすき!」
元貴の視線が気にはなったが、今日は誰にも文句は言わせない。俺とリョーカの、最高の1日にするんだから。
俺と手を繋ぎ、玄関へ向かっていたリョーカが、不意に手をほどき、元貴へと駆け寄った。そのままハグをして、なにか話しているようだった。
俺には、これまでリョーカと元貴の間に起きたことは、わからない。お互いに、どんな気持ちだったのか、そして今、どんな気持ちなのか…。ただ、元貴の頬にキスをして、俺の元へとかけてきたリョーカの顔は、とても清々しかった。2人が少しでも和解できていたのなら、それに越したことはない、と俺は元貴へのキスは不問にすることにした。なにせ男としての器が大きいので。
そして、また俺たちは手を取り合い、玄関を抜けて外へ出た。
今までにない光が2人を照らす。初めてリョーカと、お日様の下を歩く。俺たちは、たったそれだけのことで、この上ない幸せを噛み締めながら、今日の1日へと歩みを進めた。
コメント
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器おっきい若様好き……。みんな可愛いです……癒し……ありがとうございます🥹