tburの場合
「つぼ浦?大丈夫?」
アオセンの声でハッと目が覚める
目の前には いつも通りの厳つい青鬼ヘルメットが広がっていて、思わず大きな声が出てしまった
『どわぁぁぁぁぁあ!?』
「うるさっ!な、なに急に…」
『あ、いや、すんません。アオセンのヘルメットに驚きました』
「別にいつも見てるだろうに」
『目の前にあったら誰でも驚くぜ』
いつもと変わらない会話を続けているが、一つ変わっている部分があった
『どこっすか、ここ』
上下右左全て白いタイル状の通路
ロスサントスにこんな場所は見たことがない
声を発する度に狭い通路に反響してうっすら山彦のように聞こえてくる
「なんか歪みらしいよ。TwiXで市長が言ってた」
『面倒くさい歪みっすね』
「ここから出るには8番出口を見つけ出せってよ」
『8番出口?何処にあるんですか』
「この通路で異変を探して歩み続けた先にだってさ」
壁を見るとデカデカと書かれた0の文字
その下には異変を見つけたら引き返すこと、とご案内が書かれている
曲がり角から少し顔を覗かせると駅にありそうな通路
だが、ロスサントスの駅内の通路ではない事は分かる
『とりあえず異変探し?とやらをすればいいのか?』
「らしい」
『間違い探しの要領でやっていけばいいか』
「多分ね。一旦進むか」
アオセンが俺の手を取って前へ進み出す
強い力に転けそうになりながらも早歩きでついて行くが、気になる事が一つ
『…なんで手繋いでるんすか』
「んー、迷子にならないように?」
『こんな一本道で迷子にならないっすよ』
「いいじゃんいいじゃん」
どれだけ言おうが離す気は無さそうなので大人しく一緒に歩いていくとする
右を見ればダクトや扉
左を見ればポスターが数枚ズラリと並んでいる
『向こうから来てるの心無きか?』
「そうだろうね。心ありの住民だったら話しかけに来てるでしょ」
『それはそうか』
これと言っておかしな所は見当たらなかったので前へと進む
曲がり角を2回曲がったところでさっきの0と書かれた文字が目に入る
「多分この数字が増えていくんだろうけど…」
『増えてないっすね』
「どっか異変あったってことなのか」
次もそのまた次も
ずっと歩き続けたが、異変らしきものが見つからず、0から数字が増えることはなかった
『…いい加減歩き疲れた』
「一回だけ戻ってみる?」
『そうしますか』
くるりと方向転換をし、勢いで繋いでいた手が離れてしまった
さっきまで手を離すことに対して渋っていた張本人が離れた事を気にせず前へと歩みを進めている
『ちょ、アオセン!置いて行くなよ!』
「つぼ浦も早く来なー。先行って待ってるから」
アオセンはズカズカと進み、曲がり角を曲がって姿が見えなくなってしまった
俺も急いで通路を戻るが、通路の先にアオセンの後ろ姿がチラリと見えた
足早えよ、と思い2回目の曲がり角を曲がると黄色の看板が見えてきた
看板の数字は1
数字が増えている
『異変あったのか。一旦戻ってみてよかったっすね』
自分の声が白い通路に反響する
自分の声に反応する声がない
隣を見てみると待つと言っていたはずのアオセンがいない
『…アオセン?』
ずっと一緒にいた相手が異変だった時、彼はどんな反応をするのでしょうか
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