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夏休み最後の週末、町内の神社では例年の盆踊り大会が開催されていた。提灯の明かりが境内を淡く照らし、祭り太鼓と笛の音が夜空に響く。
「遅いな……」
神社の鳥居の前で、シャオロンは落ち着かない様子で時計を見ていた。浴衣を着た人々が次々と境内に入っていく中、約束の時間を15分過ぎている。
(何かあったんやろか)
そのとき、遠くから走ってくる人影が見えた。浴衣姿のショッピだ。
「すみません!迷ってしまって……」
息を切らせながら現れたショッピを見て、シャオロンはホッとした表情になる。
「大丈夫か?あんな大きな地図送ったのに……」
「いえ、ちょっと道に迷っただけです」
二人が互いの姿を見て、思わず目を見合わせた。
「おお!やっぱりショッピ、似合うなぁ」
改めて見ると、ショッピの着こなしは完璧だった。藍染めの浴衣に白い帯、足元の下駄までしっかりと決まっている。
「シャオさんこそ、今日も素敵です」
シャオロンの浴衣は少し袖を折り返していて、いつもの元気な彼らしい着こなしになっている。
「さ、中行こか!」
シャオロンがショッピの腕を軽く引っ張る。
「はい!」
神社の参道には露店が立ち並び、焼きそばや焼きとうもろこしの香りが漂っている。二人はまず、目に付いたりんご飴の屋台に足を向けた。
「これ買いますか?」
ショッピが財布を取り出す。
「俺が払う!付き合い始めた記念やし」
シャオロンの言葉に、ショッピの頬が緩んだ。
「じゃあ、いただきます」
りんご飴を受け取った瞬間、シャオロンが突然ショッピの腕に自分の腕を絡めた。
「えっ?」
「誰も見てへんやろ?こうして歩きたいねん」
夜の闇と、にぎわう人混みの中で、二人は自然と距離を縮めていった。時々、周りの人々に見えないように気をつけながらも、ショッピは幸せそうにシャオロンの髪に触れた。
「なあ、輪の中に入る?」
広場ではすでに踊りが始まっていて、老若男女が大きな輪を作って踊っている。
「入りましょうか」
二人は列の一番外側に加わり、見よう見まねで踊り出した。シャオロンが上手く踊る一方で、ショッピは時々ステップを踏み違えて笑いを誘う。
「へたくそ!」
シャオロンが笑いながらショッピの腰を軽く叩いた。
「ごめん……」
恥ずかしがるショッピを見て、シャオロンはさらに笑みを深める。
踊りが一段落すると、二人は休憩スペースに移動した。
「疲れたわ〜」
ベンチに腰掛けたりんご飴をかじるシャオロンに、ショッピが飲み物を差し出した。
「ありがとう」
冷えたジュースを受け取り、一気に半分ほど飲む。
「あのな……」
急に真剣な表情になったシャオロンに、ショッピは身を乗り出した。
「何ですか?」
「告白したこと、後悔してへん?」
突然の質問に、ショッピは首を傾げる。
「まさか!どうしてそんなこと聞くんですか?」
「だって……俺たち、本当は隠れて付き合ってるみたいな状態やし」
シャオロンの声には、かすかな不安が混じっていた。ショッピはそっと彼の手を握る。
「隠れているからこそ、こうして二人で過ごす時間が大事に思えるんですよ」
「そうやけど……」
シャオロンの瞳が揺れる。
「俺、もっとお前のこと知りたいねん。もっと一緒にいたいし、いろんなことしたい……でも周りにバレたらって考えたら怖いねん」
ショッピは深く頷いた。
「わかります。僕も同じ気持ちです」
そして、決意を込めて続ける。
「だからこそ、これからもこうやって二人だけで会える場所を探していきましょう。誰にも邪魔されない、僕たちだけの秘密基地みたいな場所を」
その言葉に、シャオロンの表情が明るくなった。
「せやな!そういうの、なんかワクワクするわ」
「そうでしょ?」
「うん!」
二人の間に流れる空気が、また一段と柔らかくなった。
夜も更けてきて、花火が打ち上がる時間になった。人々が見上げる中、ショッピはそっとシャオロンの耳元に唇を寄せた。
「次の約束、決めましょうか?」
「次の?」
「はい。文化祭が終わったら、一緒に海に行きませんか?冬の海で」
「冬の海……?」
「雪が降る時期だったら、きっと人も少ないでしょうし」
ショッピの言葉に、シャオロンは目を輝かせた。
「ええやん!最高やん!」
花火の光が二人の顔を照らす中、シャオロンは笑顔でショッピの肩にもたれかかった。
「今年のクリスマスはデートやで!忘れるなよ?」
ショッピは嬉しさで胸がいっぱいになり、そっとシャオロンの手を握った。
「はい、絶対に忘れません」
そして、夏の夜空に咲く大きな花火を見上げながら、二人は新たな約束を交わした。
これから始まる冬の季節も、また新たな思い出を作る季節になると信じて。
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