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「ただいま。」
「おか……悠夜……泰揮…。」
「アナタのことを無視してごめんなさい。琉生クン、李仁クン、輝石クンも悪く言ってごめんなさいね。」
「貴方方に謝るのは不本意ですね。」
「悠夜。」
「ま、まあ、悪かったことは認めます。」
「別に気にしてないですよ。あの場は、ああなるのが普通ですから。」
「アタシたち、アナタたちの滞在を許可するわ。だから、黒鬼院さんの目的を教えてちょうだい。」
「残りの2人はどうしましたか?」
「それは…。」
「今は無理だけどそのうち認めるように説得するわ。」
「説得…ですか。わかりました、目的を教えて差し上げます。」
「黒鬼院様の目的。それは独裁国家だ。」
「独裁国家…?」
「今の吸血鬼界は、純血種、混血種、そして下層吸血鬼で成り立っている。純血種の中にはあんたらみたいな貴族だっている。そういうやつらの上にたち、強靭な力を持つ長になること……それが目的です。」
「では、彼女を攫ったのは…。」
「強靭な力を得るための生贄の花嫁…。」
「前にも聞きましたけど、その”生贄の花嫁”って何なんですか…?」
「アタシたち吸血鬼には、何かしら足りない部分が存在するの。精神力、体力、知能…それを賄うためのいわば供物。誰でもいいわけじゃなくて、その人その人で相性も違うし作用の効果も変わる。でも……稀にマルチと呼ばれる人がいるの。」
「マルチ…?」
「どんな吸血鬼をも最強にすると言われている伝説の…いえ、呪われた血液を持つ人間がいるの。それが”生贄の花嫁”。さまざまな吸血鬼に血はおろか、肉でさえ1つ残らず捕食される。」
「その供物を黒鬼院様は探しているんだよ。」
「じゃあ、私を攫ったのは…私がマルチの生贄の花嫁だから…?」
「ええ。ですから、私たちは貴女を守るために、あの日のパーティに参加していたのです。」
「そんなの…信じられないです。私が”生贄の花嫁”なんて…どこにそんな…。」
「証拠ならあるわ。花月チャンと出会った屋敷のパーティーのこと覚えている?」
「はい。あの日は初めての舞踏会でしたから……。」
「あの日、パーティーに来ていた人のほとんどは吸血鬼だったの。たぶん、花月チャンのことをどこかで知ったのね。アナタを利用しようとした奴らがアナタの家族を殺した。アタシたちも最初は信じられなかった。マルチが本当に存在することも、その存在を手に入れようとして人を殺す奴らがいることも……でも、アナタと出会って”生贄の花嫁”だということに気づいたわ。」
「マルチの血液は通常の血液の幾倍もの香りを漂わせる。まあ、マルチが誰なのかを見つけることは簡単なことなので、すぐに探して劉磨に部屋へ連れていくよう指示しました。もっと早く動いていれば……貴女の家族を……助けられたのかもしれませんが……。」
「じゃあ…あのとき皆さんがしてくださったことは…。」
「貴女を守るためです。ここに住んでいただいたことで、かえって怖い思いをさせてしまいましたが……。」
私のせいで……皆死んだんだ。私がいたから大切なものが消えてしまった。
でも、私のために……この人たちは、助けてくれた。供物としての私ではなく、守るための人間として。
「今までありがとうございました。そして…ごめんなさい……あんなこと言って。」
「私たちはもう気にしていませんよ。貴女は自分の考えに従っただけです。」
「感動の状態のところ悪いけど、話続けていいか?」
「あ、そうだった。ごめん……。」
「先ほど、黒鬼院様が独裁国家を造ろうとしていると申しましたよね。ですが…独裁国家の創造だけが黒鬼院様の目的ではないんです。もう1つは人間界と吸血鬼界の結合。」
「結合って…そんなことしたら…。」
「間違いなく人間は滅びます。それだけでは収まらず、世界中が吸血鬼だらけになり戦争も起こるでしょう。」
「戦争って…。」
「俺ら吸血鬼にはいくつもの派閥がある……。偉くなりたいやつがどんどん血に染まっていき、弱い奴はそれに従い奴隷となる。」
「だから、あんたらに頼みがあるんだ。」
「頼み…ですか…?」
「黒鬼院様を滅ぼしてくれ。ただの吸血鬼じゃない……あんたらならできるだろ。この屋敷に住んでるんだから。」
「え…どういうこと…?」
「お前、気づいてなかったのか?この屋敷が人間界と吸血鬼界の間にあること。」
人間界と吸血鬼界の間……。そんな場所だったなんて信じられない……。
「でもそれでただの吸血鬼じゃないって言えるの?」
「あんたら説明してなかったのか。国王継承者のこと。」
「国王…継承者?」