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永玖side
学校の廊下は、今日もざわざわしてるのに、俺の周りだけ空気が冷たい。
まただよ
背後で、ひそひそ声。
聞こえないふりをするのは、もう慣れた。
放課後、教室。
颯斗と並んで机をくっつけて、
問題集を広げてた。
颯「ここさ、この式変形すると早いよ」
永「……あ、ほんとだ。颯斗すげぇ」
その瞬間、ガンッて音。
机が蹴られて、消しゴムが床に転がった。
永「あ」
心臓がきゅって縮む。
何も言えずに固まってたら、
颯斗がすっと立ち上がって
消しゴムを拾った。
颯「はい」
机の上に置きながら、柔らかく笑う。
颯「大丈夫、大丈夫」
永「……ありがと」
去っていく3人の背中。
颯斗は、俺に見せないようにしてたけど――
その目、はっきり怒ってた。
それでも。
玲、哲汰、直弥、颯斗。
同じ“天使”として、
正体を隠して生きる仲間といる時間は、
ほんとに楽しかった。
放課後。
5人で並んで帰る道。
直「今日の数学の小テスト何点だった?」
颯「俺85!」
玲「92」
永「俺25」
哲「勝った30!直弥は?」
直「俺68」
哲「はい永玖アイス奢り〜!」
永「まじかよ」
颯「ありがと永玖〜」
永「颯斗85は嘘だろ!」
颯「ほんとです〜。俺地頭いいんで」
永「うざ」
⸻
ある日、帰り道で雨が降った。
哲「うわ、降ってきた」
玲「傘ないんだけど」
永「俺も」
直「じゃあ、こうする?」
直弥が羽を広げる“ふり”をして、
みんなで笑った。
玲「やめろ、バレる」
直「冗談だって」
颯斗が自分の傘を俺の方に傾ける。
颯「濡れるだろ」
永「……颯斗が」
颯「いいから」
肩が触れて、少しだけ心臓がうるさくなる。
でもそれも、嫌じゃなかった。
夜、5人で星を見たこともある。
哲「人間界の星って、意外と綺麗だよな」
玲「天界より、近く感じる」
直「永玖は?」
永「……ここ、好き」
そう答えたら、
颯斗が静かにうなずいた。
颯「俺も」
その時、俺は思った。
――この時間が、ずっと続けばいいのに。
天使たちには、絶対の規則がある。
『本当の姿を知られた者は、その世界にとどまることを許されない』
夜、ひとりで帰る道。
俺は無意識に背中を確かめた。
(……まだ、ある)
まだここにいたい。
みんなと、笑ってたい。
ある夜。
暗い道の先で、聞こえたブレーキ音。
永「あ……」
車が、あの3人に向かって――
颯「永玖!」
颯斗の声。
考えるより先に、体が動いてた。
永「行くぞ!」
玲「規則は!?」
永「関係ねぇ!」
光。
羽音。
もう、隠しきれない。
俺たちは、彼らを助けた。
それが、俺をいじめてた人間でも。
「……天、使……?」
震える声。
ああ。
知られてしまった。
朝焼けの中、5人で歩く。
もう、この世界にはいられない。
哲「楽しかったな」
哲汰が笑う。
哲「人間界」
颯「永玖」
颯斗が俺を見る。
颯「お前、よく頑張った」
永「……いじめられてたけどさ」
俺は、空を見上げる。
永「みんなといる時は、幸せだった」
玲「それでいい」
玲が静かに言った。
玲「その気持ちが、本物だから」
直弥が手を握る。
直「忘れんなよ。俺たち、友だちだ」
――忘れない。
忘れるわけない。
幸せな思い出だけを胸に残して
5人で、光の中へと消えた。
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