「白雪姫と黒鴉」
新雪の様に白い肌
宝石の様に輝く赤い瞳
燃える様に熱い炎より赤色唇
艶やかかつ夜空の様に黒い髪
誰もが見惚れる均整の取れた美しい容姿
小鳥の囀りの様に透き通る歌声
誰にでも好かれる愛嬌のある優しい性格
彼女は完璧だ。
私なんかとは違う
そばかすまみれの薄汚い肌
濁った白目がちの目
ひび割れた不健康な色の唇
ボサボサの老婆の様な縮れた白い髪
誰もが化け物等と言い叫び石を投げる醜い存在
幾度となく殴られ叫び掠れた声
根暗で辛気臭い性格
それが私、俗に言う魔女。
周りからは黒鴉と呼ばれている。白髪なのに何とも皮肉な
本来闇と光は交わる筈のない存在
しかし白雪は体が弱く一人では生活もままならない
そこで私が白雪の身の回りの世話かつ看病をしている。
今日もまた森に生っている木の実を穫って
「これくらいとれれば上等だろう」そう思いながら箒に跨り家に戻る
「ただいま」と言いながらドアを開ける
するとベッドに寝転んでいる白雪が此方を向いた
「おかえりなさい、鴉さん。お疲れ様です 」
にこりと笑顔を浮かべて言う姿に思わず胸が高まるのを感じるが根性で止める。
「薬は飲んだ?」
「えぇ、さっきお昼を食べてその後しっかり飲んだわ」
「なら良かった」と言い私はキッチンに向かい林檎の皮を剥く
白雪が「なにか手伝える事は無いかしら?」と言うので豆のさやを取ってもらいながら夕食の準備等の諸々を済ませる
この穏やかな時間は好きだ。
私が戸棚から調味料を取ろうとした瞬間白雪が咳き込む
白雪の方を振り返ると手を口元に添えているものの赤い血液が漏れ出て居た
「白雪!吐血したの…!?」
「えぇ…さっきまで元気だったのに…ケホッ」
「(良かった…)」
白雪の口元にハンカチを当てながら私は安堵した
白雪の体調が悪いのは私が原因
白雪が軽い風邪を引いた時薬と称し毒を盛った。
それから毎日毒を与えている
だって仕方が無い
鴉なんかが白雪が傍に居れる方法はこんな歪んだ関係以外無い
罪悪感で押しつぶされそうになるが白雪との幸せな生活によって私はどうにか保っている
白雪は私無しでは生きられ無い
この事実が幸せであり、また、罪悪感の根源でもある
本来あるはずだった白雪の幸せ
普通の生活を送らせる事が出来ない事による罪悪感
こんな事でしか引き止められない自分への嫌悪感
そんなのが積もりに積もって
朝食のスープとパンを吐いてしまいそうになる位気持ちが悪くなってしまう
「今すぐ薬を持ってくるわね」そう言い私は自室に普通の薬を取りに行った
自身の黒色の髪を指先でくるくる弄り愛しの鴉を待つ
誰もが見惚れる美しい容姿と声を持つ病弱な女
それが白雪
きっと鴉さんは私の事を騙し切れているつもりなのだろう
けど実際は違う。私が鴉さんを騙している
最初毒を盛られた時から徐々に抗体ができ始め、
今は弱虫の鴉さんの盛る少量の毒くらいなら一時間程眠れば体調はすぐ戻る
先程吐いたように見せた血も実際は
ベッドの下の方に獣の血を溜めた小瓶を置いており
それを一度口に含んで吐血した様に見せただけ。
何故こんな事をするかって?
だって仕方ないでしょう?
彼女と一緒に居るにはこれが最善の方法なんだから
それに私は比較的自由が効く方がいいけれど、
鴉さんは私がそんなだと安心出来ないからきっともっと毒の量を増やされるかもしれないの。
そうなって死んでしまったら元も子も無いわ
まぁ、けど
私を縛ろうとするけど自己嫌悪に苛まれそれが出来ず悶々とする彼女が
私にとってはこの世の何よりも可哀想で可愛いのだから
「世界一美しい白雪姫、醜い私が貴方を離してあげられなくてごめんなさい」
「世界一可愛い私の黒鴉さん、意地悪な貴方を一生離してあげないからね」
コメント
9件
グォォォォォォォ((((好き!好きだ!!! 普通の薬を取りに行った後に白雪の病気が治ってしまったのも見てみたい(((
ヤッタァァァァァシラユキノツヅキダァァァ!!! 歪みまくってる……でもそこが好き♡