藤澤 side …
靴を脱ぎ、元貴に連れていかれるようにリビングへと入る。そこには暖かい家庭のような、2人だけの空間が広がっていた。
棚の上に飾られた動物の置物。テレビ台の横には元貴と若井がよく使うギターが置かれていた。まるで僕の知らない世界。あれはこの前元貴が買っていた花瓶だ。この家に飾るために買ってたんだ。
見覚えのある2人の私物がこの空間で出来上がったものなのかと思うと、なんだか気分が悪くなってくる。吸ったこともない暖かくて甘い空気、2人にとっては当たり前の光景。
「…滉斗?大丈夫?顔色悪いよ…?」
「……ごめんッ、ちょっと、…気分悪くてッ、」
僕はリビングを飛び出し、走ってトイレへと向かった。
「ぁ、!…滉斗、!!」
後ろからは驚いたような心配そうな元貴の声がした。入ったこともない家だから勿論トイレの場所だなんて分からなかった。ただがむしゃらにそれらしき扉を開けては閉めて、やっとの思いでトイレへと駆け込んだ。
「はあ゛ッ、はあ゛ッ、!……ぅ゛、…」
胃の中がぐるぐると掻き回されるような感覚がする。吐きたくても吐けない、苦しい。
「…滉斗?気持ち悪い、?」
駆けつけてきてくれたのであろう元貴が、しゃがんで僕の背中をさすってくれる。普通だったら僕は元貴に助けを求められるのだろう。でも、今は元貴に助けを求めることが出来なかった。元貴のこの優しさ、助けは本来若井に対してのみのものだと考えると、更に気分が悪くなった。
「はあ゛ッ、…ぉ゛えッ…、げほッ、」
「辛かったね、全部吐いちゃいな」
元貴の暖かい手が背中を優しくさすってくれる。その感覚でさえも気持ち悪くて、苦しかった。
「…ぅ゛、……げほっ、…ぅ゛えッ、」
びちゃびちゃと汚らしい水音と僕の荒い息が響く。
伝えればよかった。あの日、君と一緒にデパートに寄った日。「君が好き」ってことを伝えていれば、何か変わっていたのかな。
「はあ゛ッ、…も゛と、げほッ、…きッ、」
「大丈夫だよ、大丈夫」
伝えなきゃ、君が好きなんだって。それで終わりにしよう。やっぱり僕には若井にはなれない。君が好きだってことと僕は若井じゃないってことを伝えて、もう死のう。色々とやりすぎちゃったや。
「はあ゛ッ……おれっ、もときッ、が、……すきだよッ、」
必死になると、つい一人称が変わってしまうのは僕の癖だ。元貴はひたすら言葉を繋げようとする僕に優しく耳を傾けた。
「ずっと、…もとき、がッ、…好きで、……でもッ、気づいちゃって、……」
目の前が涙で霞んでゆく。いっそのこと、このまま死んでしまえたら楽なのに。
「おれ゛ッ、…もときがッ、もとめるひとにはっ、なれない、けどッ、…でも、すき、だからッ…」
ごめんなさい、そう伝えようとしたその時。今まで黙って聞いていた元貴が僕のことを強く抱きしめてきた。
「俺も滉斗が好きだよ、大好き」
違うよ、僕は若井じゃないんだ。
「滉斗は滉斗だよ、俺が大好きで大好きで仕方がない滉斗だよ」
違う、違う。
「ちがッ、…ごめんなさ゛ッ、おれはッ、」
「謝んないで、滉斗は悪くないよ」
お願い、もうこれ以上苦しませないで。
「俺は滉斗以外の人なんて、好きになれないんだから」
約1ヶ月ぐらいですかね?
そのぐらい間が空いてしまいました……😭
待っててくれた皆様、本当にすみません!!
作者は最近体育祭があったり、
なんか色々あったり…
あと少しで「crazy clock」も完結です!
早すぎませんか!?!?
作者はただいま新しいお話を考えてて!
書いてみては消して…また書いて消して…
ずっとこれを繰り返してます😿💦
いつか更新できることを願って
お話書くの頑張ります(?)
ではまた次のお話で^^
NEXT ▶︎ ♡1,000
コメント
5件
大森さんは若井さんだった思ってるからね、確かに、そうなるのか………涼ちゃん、、
わぁー!!涼ちゃんが報われますようにっ(´;ω;`) 続き楽しみにしてます!!(´▽`*)