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翌日。
『風夜の記憶が戻った!?』
スクールに来た生徒全員が声を揃えてそう言い、風夜は耳を塞いだ。
「あーうるさいうるさい……何をそんなに驚くのさ?人間って本当に分かんない」
「“人間って本当に分かんない”?やっぱ人間じゃないのか?」
「だーかーらー!それを今から説明するんだって!それを遮ったのは君達だろ?分かったらさっさと黙りやがれください!」
「口調がぐちゃぐちゃだぞwww」
そう会話していたが風夜が机をバンッと叩くと全員が黙った。
「まず僕は人間じゃない。『地下−64層』に存在する秘宝【世界の過去を写す魔導書】だ」
その言葉にすまない先生とブラック以外の全員が驚いた。そもそも魔導書であるし、それが人間の姿を取ったとしてこんな少年の姿を取るなんて、予想だにしなかったのだから。風夜はみんなの驚愕を他所に話を続ける。
「それと記憶を取り戻したとは言ったけど完全じゃない。精々一回目だけ」
『一回目?』
全員が首を傾げる。
「あーもうこの説明二回目なんだけど……」
風夜は呆れつつもちゃんと説明した。
「すまないくんは途轍も無く長い時間を生きる中で、何度も君達生徒との出会いと別れを繰り返しているんだ。その中の一回目。初めてすまないスクールが設立され、ヤマタノオロチを倒したその一回目だけの記憶なら取り戻したんだ」
風夜は溜息を吐き、
「一回目に何があったかは……ブラック達に聞いて。もう疲れた」
そう言ってブラックに丸投げした。
「無責任すぎますよ……一回聞いただけで覚えてるわけないでしょう?」
「あら?そのIQ200の頭を持ってしてもだめなの?」
「ダメとは誰も言ってませんが?」
ゴゴゴ……
風夜の煽りがブラックには効いたようでブラックは風夜に聞いた話を、ほとんどそのままそっくり説明し切った。
「出来るんじゃん、ブラック」
風夜は後ろでふわふわ浮きながらパチパチと拍手をしていた。
「こ、このくらいできて当然です……」
ブラックは恨めしそうに風夜をジトーっと見る。記憶が無い時の風夜ならそれに言い返しただろうが今は【世界の過去を写す魔導書】、神に作られたものだ。そんな低レベルな言い合いをする気も無いようだ。
「ふふふっ……随分と疲れているようだけどね」
風夜は軽く煽りを入れただけでブラックの疲れた様子には興味を無くしたようだった。
「僕が取り戻した記憶はブラックが説明した通りのものだ。それ以上でも以下でもない」
そういうと全員が黙りこくった。他のメンバーも驚いたのだろう。すまない先生が不老不死になった理由が、ヤマタノオロチを倒したことによる代償の呪いである事に。そしてそれを風夜が知っておきながら放置した事に対しては怒っているのかもしれない。
「先に言っておくけど、僕は人間の味方じゃないから。でもすまない君の呪いを解かなかったのは“解けなかったから”だからな。そこ、勘違いするなよ」
風夜はそう念を押した。
「……それを今更責める気はないが……何か方法は無いのか?」
そのMr.バナナの問いに風夜は微かに微笑み
「……神に望むもんじゃないよ」
とだけ言った。